第3話 英雄立つ


「うん、わかった」


 その言葉を聞いて、


「それじゃあ、風呂沸かしてくるよ。疲れただろう午前中は仕事だったよな? 日本人にはやっぱり風呂だよなあ、すぐだから待っててくれ。その間に何か呑むか? ワインがあったけど呑める?」


「大丈夫、呑めるよ」


「つまみはチョコ位しかないがいいかな?」


「うん! 甘いもの好きよ」


 二人で呑みながらカフェのマスターの話になった。自分より年下だと聞いて驚いた。大学を中退して20才でカフェのオーナーになったらしい現在22才だそうな。



「昨日太陽から聞いてビックリしたよ。その時飲んでたコーヒー吹いた」

 メガネ姿のマスターを思い出し笑った。お風呂が沸いた。


「風呂先に入れよ。俺は後にするゆっくる入れよ」


 お風呂に浸かりながら幸せを感じている。お風呂から出るとアキラはソファーで横になっていた。寝てるのかしら? 覗き込むとアキラは目を開ける。私の姿を見て、

「悪いな着るものなくて。俺のトレーナーおまえには大きいな」


 そう言うと立ち上がり


「風呂入ってくるよ」


 と、お風呂場に行った。その間ソファーに座っていると、そこには先ほどまでいたアキラの温もりを感じる。私はそのまま横になった。ウトウトしていると突然身体がふわっと上がる。アキラに抱きかかえられているだとわかった。そして、そのままベッドの中へアキラの優しいキスの後、二人は愛し合った。


 アキラは優しく抱きしめる。私はこれまで男性経験が無かったので心配してくれている。


「予想外だったよ」


「だってこんなに気持ちを揺さぶらせる人は、いなかったんだもん」


「いや、こんなうれしい予想外ないよ」


「それに、ファーストキスもアキラよ」


  今度は強く抱きしめられる。

「初めてを俺にくれてありがとう。愛してる」

 額にキスを落とされた。


「絶対君を守ってみせる。ティアだった時の君を失ってから、俺は抜け殻になってしまった。自分の弱さを思い知らされたよ。沢山の言葉が俺にかけられた。だが、どれも、心に入っては来なかった。その後は毎日だよ、君の姿を探し続けた。笑えないよな英雄と言われた人物が、たった一人失っただけでボロボロに壊れてしまったんだよ。奴らの計画通り俺は簡単に倒された。その瞬間は覚えている俺はそれを望んでいたんだ」


 ああ、なるほど、あの時の皆のため息はこれね、


「ねえ、聞いてもいい?」


 私の髪を撫でながら

「なんだ? まだ痛むのか」

「そうね。正直まだ痛いわよ。それじゃなくて、私の最後に言ってくれてた言葉は、何?」


 私の手を取りキスをして、

「必ず来世で君を探し出すから、探してみせるから……そう言ったんだよ」


「何か思い出した、ずっと私の名前呼んでいたわよね、泣きそうな顔してた。いえ、泣いていたかしら?」


「隣でサーシャがずっと号泣していたからなあ、嫌だーって」


「そこは覚えているの、凄い顔してたもの」


 アキラから深いキスをされる。そして、見つめ合う。


「ちゃんと見つけた」


 私はアキラの頬を両手で包み、


「ありがとう。見つけてくれて」


「こっちこそありがとう。俺の所に来てくれて。なあ、あゆみ。これから一緒に、ここで住まないか?」


 それから私はアキラのマンションで同棲生活を始めた。駅が近いので通勤は楽になった。 会社で、智子にその事を話すと、


「ちょっと嫉妬しちゃうわ」


 そう言うと私に抱き着き、

「私の大切なお姉様なのに、泣かせたら殺すわ」


「智子。怖い怖い、明日またマスターに呼ばれているから行くでしょう?」


「勿論よ! リーに一言わないと気が済まないわ」


 いつものカフェに来た、隣にはアキラがいる、後から来た智子が私達二人を見るとツカツカと寄って来た。そして、アキラに向かって


「リー! 今度はちゃんとお姉様を守ってよ!」


 智子ったら顔が怖い。

「あゆみを泣かせたらあんたを殺すからね」


 可愛い顔から物騒な言葉を、そう思っていたら智子が泣き始めた。


「良かったわね。ちゃんと逢えて、……本当に良かった」


 智子は私に抱き着く、私は智子の背中を撫でながら


「大丈夫よ。私は幸せよ」


 それを見ていたマスターと太陽がもらい泣きをした。私の最後を知っている、リーが私に言った言葉を覚えているから、この巡り合わせは運命だ。


「再開の感動はこの位でいいだろう。さあ、涙を拭こう」


 マスターはティシュで鼻をかむ。アキラが話し始めた、


「連絡があったんですか?」


「ああ、それに新しい情報をもらった。海外にいるスターチルドレン達と連絡がとれた。向こうも仲間を探していたらしい」


「来週の月曜日、総理に会う。これは国単位での問題では無いからだ。各国の代表が集まり非公開で会議が開かれる。そこには、各国のスターチルドレンも参加する。そこに参加しない国も当然あるそこは仕方ない。それでだ、スターチルドレンは代表を立て話し合う。アキラ、代表として行ってくれ。リーキャスの名前は有名だ。その方が話しが早く進むだろう」


「わかりました」


「智子ちゃんは彼らの会話を中継して、テレパスで繋げてくれ」


「任せて!」


 当日カフェで待ち合わせる。


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