その後のおまけ
あのバカ。やりすぎだ。
もっと静かに帰ればいいものを、派手にやりやがって。
無線から聞こえてくる報告に耳を傾けながらも、心はクソバカ太宰への罵倒で埋まりきっている。
「武装探偵社が、…太宰救出のために襲撃をしてきた。ということかの?
ついでに建物を爆破して、ポートマフィアの拠点をつぶしにかかり、戦力を削いだ」
隣では姐さんが車の外を眺めながら状況を整理している。
「状況としてはそう考えるのが妥当ですが…」
「無碍な戦いを挑んで足蹴にされた挙句、逃亡を見逃して女とデエトにしけこもうとした幹部など、おらぬよのぉ?」
…ぇ。
うっかりその顔を見てしまう。
姐さんの眼光は鋭く俺の喉笛をとらえている。
「そんなうつけに育てた覚えもないが、…どうじゃ?」
「…俺がそんなことするように見えるんですか?姐さん」
「見える」
「やめてくださいよ」
「見える」
「ワインに目がくらんで、仕事ほっぽり出して早引けしようとした幹部のねぇさんに言われたくねぇってのっ!」
「誘ったのは坊主じゃろ?」
「今更わっぱ扱いはやめ…」
不毛な言い争いに発展するのを阻んだのが、次の報告だった。
「芥川が、独断で人虎を輸送船に乗せただと?誰が出航許可出したんだっ!
…ぁ?…あのばかっ」
くっそ。勝手なことスンのは太宰だけにしてくれ。
なんで丁稚まで師匠の真似すんだよ。厄介だな。
「芥川が。どうしたのじゃ?」
「姐さん」
次の言葉を告げるのに、すこし、戸惑った。
「芥川は、捕獲した人虎と共に、鏡花を。…船に乗せたそうです」
「なんのために?」
「わかりません」
姐さんはそれから黙って、考え込んでしまった。
めんどくせぇ。
本部に向かう車の中で、これからやるべきことを考える。
状況確認と、太宰のバカの置き土産がやらかしたごたごたの後始末と、
姐さんが、…妙なことをしでかさないように。見守ること。
ちくしょう。
ワインぐらい、飲ませろよ。クソ太宰が。
太宰再訪 パスカル @pai-sen35
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