第3話 健康的な生活

7:00 僕たちは目を醒ます


この時間になるとカーテンが開き、ベッドが起き上がり、照明がピカリとついて、扉が開く。

そして、僕たちは一様に服を着替え始める。みな同じデザインの服だ。前でボタンを留めるだけのとても着やすくて風も通しやすい肌触りのいい黒いシャツとピチっとしたズボンを身に着けた。


7:15 食事


部屋から出て、少し歩くと大食堂へ向かう。そこには大きな机が三つとその上にはそれぞれのネームプレートと出来上がった料理が並べられていた。給仕ロボットがちょうど厨房に戻っていくのが見える。

アンディー、ベル、クリス、デイジー、ここだ。僕は自分の席を見つけて座る。


「エディーおはよう。」


隣に座るデイジーが挨拶をしてくれた。


「お、おはよ、デイジー」


「なんだエディーお前今日も照れてんのか?一回もちゃんとおはようって言えたことねぇよな」


茶化してきたのはフレッド。デイジーとは反対側の隣に座る。

僕たちは基本的に三人一組で行動する。消灯時、男と女で分けられるためデイジーとは違う部屋になる。


「おはよう、フレッド。毎日よくそんな小言をおもいつくよ。」


三人でくすくす笑う。

そのあともたわいもない話をしながら、食事を終えた。

食器を返却するのと同時に、お昼のお弁当を受け取って僕たちは次の作業に向かう。



8:00 農作業


小さな車に乗って僕たち三人の担当農場に向かう。

勝手に動く車だけど、フレッドはよく運転したがる。あまりにもコースを外れると自動運転モードに切り替わるけど、そうじゃないときは割と自由にさせてくれる。


今日はトマトが収穫時期だろう。たくさんあるハウスの中からトマトのハウスに入る。少し青みがかっているが、このくらいで収穫するのがちょうどよいらしい。

十二列あるため一人四列ずつ収穫していくことにした。


だいぶ収穫が終わったころ、トマトの葉と葉の隙間からデイジーの姿が見える。

一生懸命に収穫をして、その額には汗が伝っている。

僕がデイジーを見つめているのに気づかれてしまったのか、デイジーは僕の方を見てクスリと笑った。なんだか妙に恥ずかしくて自分の顔があつくてたまらなくなった。その笑顔から必死に目を背けて、僕は再び作業へと戻った。



16:00 洗浄


同様にあと二つのハウスでの収穫を終えて、僕たちは帰る。

帰ったら収穫物をコンテナの中に入れて、すぐ浴場に直行する。


デイジーとは別れて、自分のネームプレートが貼ってある棚に空のかごと着替えが入ったかごがある。その空の方に自分が脱いだ服を入れて、浴場では先に体を洗いシャワーで十分に汚れを落としてから、浴槽に入る。

他のグループのメンバーもちらほら見えて、みんな農作業やそのほかの業務の疲れをいやしているようだ。



17:00 栄養供給


夕飯の時間である。

朝よりか少し豪華なメニューだが、あまり変わったものはない。

それよりも僕は隣に座るお風呂上がりのデイジーのほうが気になってしょうがなかった。

出会った頃はこんなことはなかったが、最近は急に気になり始めてしまったのだ。何故かは…わからない。


「なに?エディー私の顔に何かついてる?」


デイジーから声をかけられてようやく僕は手が止まってることに気づいた。

フレッドが笑いをこらえる音が聞こえる。


「べ、別に!なんでもないよ。」


僕は急いで食事を終えて、逃げるように自分の部屋に戻った。



21:00 消灯


部屋での読書時間と称された自由時間のあとに消灯だ。

パジャマに着替えて、ベッドに入る。あとは朝が来るのを待つだけだ。



22:00 出荷


――――――――――。



7:00 僕は目を醒ます


この時間になるとカーテンが開き、ベッドが起き上がり、照明がピカリとついて、扉が開く。

そして、僕たちは一様に服を着替え始める。みな同じデザインの服だ。前でボタンを留めるだけのとても着やすくて風も通しやすい肌触りのいい黒いシャツとピチっとしたズボンを身に着けた。



7:15 食事


部屋から出て、少し歩くと大食堂へ向かう。そこには大きな机が三つとその上にはそれぞれのネームプレートと出来上がった料理が並べられていた。給仕ロボットがちょうど厨房に戻っていくのが見える。

アンディー、ベル、クリス、、何故だ。僕は彼女の席がないのに気づく。


フレッドが遅れてやってきて、それに気づいたらしい。


「そうか、卒業したんだな。」




そういわれてようやく思い出す。ここに平穏な日々はないことを。

いつか来るかもしれない終わりのときに目をそらしながらただ健康的に生きる場所。


ここは高度1500m、街型生産特化プレイン3号機 サードエッグ。

一部の人間が生き残るために作られた僕たちと、僕たち以外の人間が食べる食材を育てる場所。




いつものようにシンと静まった大食堂で僕は朝食を終えた。

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