2点間の距離

@Hoshitaro

第1話 気づき

昼休みのチャイムが鳴り、ぞろぞろと廊下に人が流れ出る。携帯を触る者、昼食を取る者、友達と話す者、各自がいろとりどろの行動をとる中、俺は隣のクラスへ移動する。新学年が始まり、クラス替えをしたばかりの隣の教室へ。


「ウィスー、そっちのクラスどう?」


俺は軽く挨拶がわりに話題を飛ばす。


「あー、ぼちぼちかな、そっちは?可愛い子とかいる?」


下心丸出しの目で「友人」山下がこちらを見る。


「お前そればっかだな、生まれてから一度も彼女できたことないくせして」


俺は軽く軽蔑の念を込めて言の刃を向ける。


「うっせ、うっざ、俺と変わらないレベルの顔して

るくせに」


眉間にシワを寄せて山下が抗議してくる。


「まあいいや、横座れよ」


渋々のような顔をして山下が隣の机を指さす

「ああ、、あ?」


隣の机の光景を見て少し驚いた。 


「あ?どったの?」


おちゃらけて山下が聞く

「いや、この筆箱、俺と似てる、ってか色違い!」


その机の上には俺が気に入っている文房具ブランドの筆箱があり、まさに俺のと色違いのものがあった。


「いやー、これ持ってる人がいるなんて、テンション上がるー!」


このブランドは知る人ぞ知る的なブランドなので、同じものを使う人は滅多に見ない。俺が興奮していると、


「あー、あのダッセーやつな」


興味なさげな声が横から飛んできた。


「黙れ、最近人気出てきたんだぞ、こないだもドラマで主人公が使ってた。」


威嚇する猫のような態度で山下を睨め付けるが


「ハイハイ、悪うござんした。」


やはり興味がないようで、気だるそうに受け流される。


「なあ、ここに座ってんのってどんな子」


気になって俺は尋ねた


「えーっと確か永野って子、俺はタイプじゃねえ」


「聞いてねえよ」


反射的に俺はツッコむ。


「何、気になんの、紹介してあげよっか?意外とワンチャンあるかもよ?お前が好きそうな顔してたし、『山下くんって言うんだ。筆箱同じだね、今度一緒にシャーペン買いに行かない?』って」


手を胸の前に両手で組み、女子のような声色にして話す山下を横目に

「永野さん、どんな子だろう」

小さくつぶやいた。別に会いたいわけではないが、趣味が合うと言う点では興味が湧く。


「まあ、ワンチャン目指して頑張りたまえ、『奥島くん』」

山下が変にあしらってきた。


続く。





 

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