第11話

「ねぇ、ゆずきこの間連れてきたお客さん、呼んだら?」

今日は、まだ1人もお客さんが来てない。

みんな、営業ラインをよく来てくれるお客さんにしたり、コスプレして外でチラシ配りをしてる。

同期のまゆこが、ふと思い出したように言ってきた。

私は、タロットカードをきりながら、ぼーっとしていたから、ちょっとびっくりした。

「あぁ、あの人?どうかな、来るかな…」

なんて言ったけど、まだ、先生のLINEも知らないし、電話番号も知らなかった。

前と変わってなければ、番号は前の携帯に登録しているけど…

なんて考えてたら、「いらっしゃいませー。」お客さんが入ってきた。

良かった…先生が、来たら他の女の子と話したりするから、僕は嫉妬を抑えられないから。

今日は、なんか気分が乗らないままお店に居るのも嫌だったので。

「ごめん、ちょっと生理でお腹痛いから、今日もう帰ってもいい?」ってまゆこに言った。

「だよねー、なんか元気ないと思ってたよ。体調悪いなら言ってよね。心配するじゃん。」バックにいた、店長にも言ったら

店長「いいよ、今日は暇だし、ゆっくり休んで。お疲れ様でした。」

「すいません、来たばっかりで早退なんて…」

店長「ありがとう、体調悪い時は電話でもLINEでも言ってね。」

「ありがとうございます。では、失礼します。

僕は、カードをまとめて、ゆっくり着替えて、裏の階段から外に出た。

ガチャポンの店に入って、いつもやる変な妖怪みたいなキーホルダーを、探し歩いた。

秋葉原には、ガチャポン屋が意外と沢山ある。

ガチャポンをしなくても、ある程度お金を出せば、全種類揃ったりもする。

僕の鞄には、お気に入りのキーホルダーを付けてるけど。

そうだ、先生にキーホルダーあげようかな。

どれがいいかな…、そうだ、コーヒーカップとか、コーヒー豆とか、そんなガチャポンってあるかな?

香りも付いてたら、最高なんだけど、なんて考えてたら、嬉しくなって何件もお店を回っていた。

でも、今日はみつけられなかった…。

電車を降りてトボトボ、歩いていたら雨が降ってきた。傘は持ってなかったから、パーカーの帽子を慌てて被った。

その時、バイト先の喫茶店の入口で傘を開こうとしてるい先生がいた。

先生は、私と気づいて傘を差し出した。

僕は、恥ずかしくて

「大丈夫です…」っていって走ってしまった。

先生は「おい、濡れちゃうよ。」っていったけど、聞こえないフリをした。

雨が強くなってきて、家に着いた時には、顔がびしょ濡れだった。

それで、良かった。

涙が、溢れて止まらなかったから…。

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