第10話

「痛い、痛い、痛い…」

「大丈夫?ママ?」

こうくんは、階段をどすん、どすんと降りながら1番下で足を押さえながら、倒れたママに叫んだ。

「ママ、僕の後ろにいたのに先に降りるから、そうなっちゃったんだよ。

「こうくん、ママの携帯電話取って…救急車呼ぶから。」

「えー、僕のうちに救急車が来るの?

大変だよ、凄いよ!初めてだね。」

「こうくん、ママ痛いんだから、そんなに騒がないの!」

5分くらい経ったのか、外には赤いライトが見えて、ピーポーピーポーっと音がして、ピタッと家の前で止まった。

「こうくん、玄関の鍵開けて…」

「はーい。」

こうくんは、張り切って鍵を開けて救急隊員の人に

「こっちだよ。ママは、階段から落ちたんだよ。痛い、痛いって言ってるんだよ。」

「ありがとう、ママは病院に連れて行くから、君は留守番できるかな?」

「うん、大丈夫。」

こうくんは、玄関でママと救急車を見送ると、台所からポテトチップやチョコレートを沢山テーブルに置いて、食べながらテレビゲームをやり始めた。

全く、悪い意識はなかった。

こうくんの、前に来たママのスカートを踏んづけたのを知っているのは、こうくんだけだった。

ママが人を抜かすからバチが当たったのさ。

それより、塾を移動するって言ったりしたからだ。

あのお姉ちゃんが、カードで占ってくれたんだ。タロットカードっていうんだって。

この間は、階段では気をつけなきゃいけないって言ってたんだ。

子供の僕は守ってるのに、ママは階段でいつも僕の前に来るんだ。

僕は階段を降りるのが遅いんだ、一段一段ゆっくり降りるから、せっかちなママは、いつも僕の前にくる。

だから、踏んじゃったんだよ、ママの服は長いのが多くて、オシャレだと思ってるんだ。

運悪く、今日は僕の足の下にママのスカートの裾があったんだ。

僕は、素早くなんて動けないから、ママはそのまま、僕が足を上げた時、ちょうどバネを離したみたいになって、階段からゴロゴロゴロって、転がってたんだ。

あっという間だったから、僕もびっくりしたんだ。

でも、良かった。これでママはしばらく動けないから。

塾は辞めなくてすむとおもう。

だって、僕はあの塾じゃないと、あの先生じゃないと、嫌なんだ。

だから、また、何か言ってきたらお姉ちゃんに相談してみようと思う。



 

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