第5話

ある日先生は塾生の母親だろう人に、酷く責められていた、僕は隣のテーブルを、下げながら、聞いていた。

「うちの子は、全く成績が上がらなくて、先生にはお任せしてるけど、もう、他の塾に行かせようと思ってるのよ。とにかく、お受験に落ちたら、先生にある程度責任がある訳だから。お願いしますよ。」

「わかりました、こうくんは、頑張っておりますし、私もできる限り、お手伝いさせていただきます。」

「そうね、今度の中間試験で成績が落ちたらその時は、辞めさせますから。」

「すいません、すいません。ここは、私が…」伝票を持って支払いを済ませる、その親に先生は、何度も頭を下げて謝っていた。

その母親が、帰ったあと先生はカウンターに座り、僕に「ブレンドをください。」と言って、頭を抱えていた。


そのまま先生が、少し眠ってしまったのか閉店になったので、僕は先生に声をかけた、胸のドキドキを悟られないように。

「すいません…」

「あっ…、ごめん…もう、閉めるんだね…」

先生は、慌てて会計して外に出た。

たぶん、かっこ悪い所を見られて恥ずかしかったのかもしれなかった。

僕は、ラストの片付けをして鍵を閉め外に出た。

先生は少し離れたベンチでボーッと座っていた。

まるで、私を待っていたかのように。

僕は、先生に声をかけた。

「お疲れさまです。私と飲みに行きませんか?」どうしてそんな事が言えたのか、もう覚えてないけど、それが2度目の先生と僕の出会いの始まりだった。

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