ADロゴ 〜広告をファッションとして活用されるまでの経緯〜
シナミカナ
ADロゴ
始まりはフィンランドからだった。
とあるフィンランドにあるブランド会社の正規販売店が
「私のところでバッグを買えば数十%引きで買えます。ただしバッグには広告が刺繍され刺繍された広告の大きさに寄って値段は決まります。」
と記載したページを作ったところから語らねばなるまい。
実際にそのサイトにあった広告のイメージには男性向けのバッグには髭剃りを取り扱うメーカーの、女性向けのモノには化粧品を取り扱うメーカーの広告が入り広告自体のデザインはかなりナンセンスの物だった。
知っての通り、その試みは失敗に終わり1年後には該当のページは削除された。
それから数年後には大手の検索サイトがロゴ入りのキャップを送料は無料で1ドルで販売することを告知したところSNSで話題になった。
キャップの素材は段ボールで出来ている、なんてことはなく、キャップとしてはありふれた素材でそこそこのデザイン性があることに注目されてネット上での販売開始から30分後には完売となった。
販売した経緯についてネット上のインタビューの記事を引用すると
「私たちが運用する検索エンジンは1億人以上が利用している。残りの他の検索エンジンを利用している人が買えば宣伝にもなるし鞍替えする事も考慮すると1ドルで販売しても赤字どころか利益は計りかねない。」
という、大手らしい先行投資としての販売だったようだ。
この事を重くみた海外のあらゆる会社はこれに続けと自社のロゴが入ったキャップや衣服を数ドルで販売するが効果が見込めたのは全体の1%だったと言われている。
ロゴ入り衣服の流行が収束しつつあった頃に日本発であるバッグのブランド会社がなんの因果か先述のフィリピンが試みた広告入りのバッグに目をつけた。
コンセプトは悪くなく、悪いのは時代とデザイン性だと断定しそれから半年の年月をかけて会社のデザイナー総がかりで広告のデザインとバッグとの親和性を検証した。
そして発売したのが皆さんがご存知で現在はプレミア価格がついている初代のADバッグと呼ばれる「メッセンジャーバッグ AD」だ。
メッセンジャーバッグとは元々が配達員などが使用していた鞄でそこに縫い付けてある広告はフィリピンの元からあった広告の画像を元に刺繍した物ではなく、ADバッグのために作った文字やロゴが象られた物で親和性とデザインは一級品で価格も多くの人が関わっていたことにも関わらず、たったの千円だった。
好きな広告を選ぶ事もでき、飽きてしまえば何年経っても、どんな状態でも返金が可能という当時にとっては驚きの戦略だった。
これはADバッグを提げているだけで多大な宣伝効果が期待でき、宣伝した会社の前年度売り上げが平均して10%も上がることを見込んでだった。
後にこの日本のブランド会社は「想定していたよりも宣伝効果があり、ユーザーに謝礼を渡そうかとも考えた。」と、冗談混じりで語るまでに至った。
このシステムは評価されて、バッグに好きな会社のイカした広告のロゴを刺繍することから親しみやすように「ADロゴ」と呼ばれるようになった。
今は衣類であれば何でもADロゴが使用できるため、かなり安い値段で自分の好きなデザインに変えられるこのシステムが評価されていることは外に出れば一目瞭然である。
最近はネットサイトや音楽にも広告が付き始めたため、私はビートルズのCDを聴くために1時間ほどかけてこの記事を書いたのでようやくミュージックプレイヤーから流れる広告音声の半分ほどが終わったところだ。
デメリットを挙げるとすればADロゴから撤退した会社の模倣品を製造、刺繍する”偽ADロゴ問題”とADロゴの起源をフィンランドとするか日本とするかの”ADロゴ起源問題”くらいであろう。
ライター:シナミカナ
この記事は無料で小説が読める「カクヨム」によってお送りしました。
ADロゴ 〜広告をファッションとして活用されるまでの経緯〜 シナミカナ @Shinami
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