十徳ナイフは便利過ぎて彼女さえ作れる

焼き芋とワカメ

十徳ナイフに「それただのナイフで良くね?」と言ってはならない。

「あー、彼女いない歴=年齢のまま、もう高校二年生かあ。そろそろ彼女が欲しいなあ。でもどうやったらできるんだろうなあ」

「話は聞かせてもらったぜ後輩」

「あ、あなたは先輩!」

「そんなお前にこれを授けよう。十徳ナイフだ。これさえあれば彼女ができる」

「いやー、いくら便利で有名な十徳ナイフでも彼女作りはできないでしょう。それに男はこういうの好きかもしれませんけど、女子からの評判は悪いって聞きますよ?」

「えー! ナイフは勿論、缶切り、ドライバー、栓抜きその他と色々機能があるのに!?」

「それでも、そうらしいですよ」

「しかし、いろんな場面で役立つ十徳ナイフ。これで格好よくて頼りになるところを見せれば一発だと思うがなあ。見たことない奴がイメージで言ってるんだろう」

「でも、そんな都合よく十徳ナイフが役立つ場面って、そうそうないですからね」

「そうか? よし、あそこを見ろ。お前と同じクラスの女子が歩いている。いっちょ今から、この十徳ナイフを使ってあの子を俺の彼女にしてみせよう」

「え!? そんなこと本当にできるんですか!?」

「まあ見てろって。お前も十徳ナイフの素晴らしさが分かるはずだ」

「じゃあ、ここから見物させてもらいます――お、先輩、早速ナイフを取り出して女子に見せつけ……いや突き付けてるぞ?」


「お前、殺されたくなかったら俺の彼女になれ」




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