第22話 鳥海さんの本性
小さな身体で、自信もなさそうな鳥海さん。ゴングが鳴った瞬間、いきなり顔つきが変わった。
闘う顔つきとでもいうのかしら? ものすごく引き締まった顔になった。
ゴングが鳴ってすぐに戸谷さんは鳥海さんを捕まえに行ったんだけど、その表情の変化を見て少し慎重になった。
華奢に見えた鳥海さん、よく見ると広背筋がよく発達している。
そう鳥海さんの体つきを見ていたら、なんと仕掛けたのは鳥海さんの方だった。
いきなり低姿勢からの電光石火の両足タックルが決まった!
戸谷さんも虚を突かれたみたいで、なす術なくいきなりテイク・ダウン。
すぐに戸谷さんは腹ばいになってカメのようにうずくまった。
でも、鳥海さん、まったく手を緩めない。
戸谷さんの腰の辺りを両手で掴んでそのまま一回転した!
「なんだ、あの小さい娘、アマレス出身じゃない」
私の隣にいつの間にか居た馬場樹里亜さんが呟いた。
「名前は聞いたことないけど、相当の手練れだわ。あの娘」
「もしかして、馬場さんもアマレス出身なんですか?」
「あなた、本当にビースティー冬城の娘なの? 一応私、アマレス界では結構有名なんだけど傷つくわ」
「ごめんなさい! 本当に私不勉強で」
すると、馬場さんにっこり笑って、
「でもやっぱりあなたは強いわ。ビースティー冬城と試合しているみたいだった」
と言ってくれた。
「ああっ!」
中島さんが叫んだのでリングの方をみると、戸谷さんは鳥海さんにがっちりと袈裟固めをかかけられてフォールのカウントが入るところだった。
「こんなところで、負けられるかよぉおおおお!」
戸谷さん、地獄の底から声を出しているような声を上げてカウント2.5で返した。
「くるくる回ってたってアマレスみたいにポイントが入るわけじゃないからね」
と、馬場さん。
「でもびっくりです。あんなに華奢そうに見えておどおどしている鳥海さんの本性を見たような気がします」
「まあ、あの動き見てたら本格派だとわかるよ。相当の実力者だね。私の次くらいに」
何気なくそう言った馬場さん、凄い自信。
本当に私、この人に勝ったのかしら。
結局、3分一本勝負は引き分けで終わった。
私の個人的な採点では少しだけ鳥海さんの方がインパクトが大きかったから少しだけ上。
「くっそー、お前には二度騙されたな。あんなに顔つきが変わるほど好戦的とは思わなかったし、なんだ、お前すごいアマレスの実力者じゃん」
「いやー、二重人格みたいですみません」
戸谷さんが鳥海さんをあんなに評価するなんて思ってもいなかったな。
ところで今日のプログラムは順調に消化できているらしく、二本目の3分マッチが今始まろうとしていたの。
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