第20話 サブミッションスペシャリスト!

 次の試合は中島優華さんと澤樹恵美さん。


 中島さんはぽっちゃり系……ということにしておきます。


 それに対する澤樹さんは……自分のことを棚に上げて言っちゃうけど、なんでこの人が一次選考に受かったのかわからないほど華奢で体力がなさそう。

 

 失礼を承知で例えると、上背は結構あるからマッチ棒みたいに見える。


 どう見ても中島さんが圧勝する予感しかしなかった。


 両者リングに上がって源田さんからの注意を聞いている。


 どうか澤樹さんがケガをしませんように。


 ゴングが鳴ると、私は目を疑った。


 澤樹さん、前かがみになって挑発をするように手招きをして大声をあげた!


「来いよ! このウスラデブ!! なんだ? ビビってんじゃねーぞ?」

 ドスが効いていて迫力満点。


 私が相手だったらきっとビビってしまうだろうな。


 中島さん、「デブ」と言われてさすがに頭に来たみたい。


 そりゃそうよね。


 一度背中にロープを背負って、勢いをつけてリング中央にいる澤樹さんめがけてヒップアタックを見舞った!


 これは中島さんの自分の身体の特徴を生かしたいい攻撃だわ!


 まともにヒップアタックを喰らった澤樹さんは吹っ飛ばされた。


「うぅぅぅ……」

 マットに沈んだ澤樹さんを中島さん、きれいな黒髪を掴んで立たせようとしている。


「誰がデブだ? あ?」

 澤樹さん、髪の毛を引っ張られた苦痛で顔がゆがんでいる。


 こんな時、私ならどうする?


 今日は打撃系はダメだし、澤樹さんの華奢な体で重そうな中島さんに投げ技をうつなんて、できっこないよ。


 ところが澤樹さん、頭を押さえられながら、中島さんの右親指の付け根あたりの経穴を思い切り押した。


「イってええ!!」

 中島さん、絶叫して思わず澤樹さんの髪の毛を手放した!

 

 そして追撃。

 中島さんの左手首を取って引き寄せ、中島さんの左腕を一直線にするようにして自分の右腋で左上腕を挟んだ!


 私の隣で見ていた戸谷明日花さんがボソッと呟いた。


「アイツ、あたしと同じサブミッションスペシャリスト関節技職人かも」


「なんて技なんですか?」


「フジワラ・アーム・バーよ。」


「フジワラアームバー? ですか?」


「あんたビースティーの娘なんでしょ? 知らないの?」


「娘ですが知りません」

 戸谷さんに呆れた顔をされてしまった。

 

 戸谷さん、よく見るとものすごく整った顔立ちをしている。


 きりっとした切れ長の目、眉は30度くらいの角度で上がっていてキレイだし、何しろ小顔だった。


「私の尊敬するサブミッションスペシャリストのプロレスラー、藤原喜明が得意とした立ち関節技よ。ほら、見ていなさい。相手の子、逃げようとするけど、技をかけている子にとっては好都合だから」

 戸谷さんがそう言うと、予言通りのことが起こったの。

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