第18話 馬場さん……強い!

 相手は栗毛縦巻きロールの女子力高そうな馬場樹里亜さん。


 正直プロレス舐めてるの? っていうようなパリピっぽい感じが隠せない22歳。


 圧倒的に、完膚なきまでに制圧したくなる。


 まあ私も他の人からみたらチャラいネエちゃんに見えるんだろうけど、この際自分のことは思い切り棚に上げさせてもらうわ。


 でも、よく見ると二の腕から大胸筋に至るまでのシェイプ、均整の取れた大腿二頭筋。


 これは甘く見たらこっちが痛い目にあうタイプかも。


 物凄く可愛らしい顔は私にも引けを取らないけど、この引き締まったボディはとても敵わないな。


「カンッ!」


 そうこうしているうちにゴングが鳴った。


 私はリングの中央で挨拶がわりで馬場さんとグータッチして、すぐに打撃禁止の難しさを知った。


 馬場さん、懐が深くて掴み所がない!


 迂闊に掴みに行ったらカウンターで捕まる予感しかしない。


 どうしよう。

 

 考えているうちに時間はあっという間に20秒経ってしまった。


 残りは160秒しかない。


 私は自分から動くことにした。


 リングの四方のロープに走って身体を預けて、中央で待ち構える馬場さんの隙を見て下半身にタックルをお見舞いする、という捨て身の攻撃。


 三回ほどロープでバウンドした私は、上半身に掴みかかるフェイクを入れて腰のあたりにタックルを見舞った!


 馬場さんは私のタックルを易々と受け入れたので私は「イケる!」と心の中で叫んだ。



 ところが、次の瞬間私の体は宙に浮いていた。


(何が起こったの?)


私は心の中ではパニックになっていた。

上半身を反らせてブリッジした馬場さん。

 私は背中から落ちて、馬場さんはそのままフォールの態勢に!


(こ、これは中島安里紗選手の「キューティークラッシュ」だわ!)


 憧れの選手の一人、中島安里紗選手のあの技を馬場さんは完全に習得していて、プラクティカルに私に見舞って来た。

 

 マットに叩きつけられた衝撃で私は一瞬でも息ができなくなった。


 源田さんのカウントがすかさず入る。


 まずい。


 まずいまずいまずい!


 私は声にならない声をあげてブリッジしている馬場さんの圧力に抗ってみた。


(ば、馬場さんなんて強いの?)

動かない。

 カウントは進む。


 このまま負けてたまるか!


 私はなんとかカウント2.7くらいでフォールを返せたの。


 追撃を受けないように直ぐに立ち上がった。これはエドさんから何度も注意されたから身体が自然に反応できた。


 スパーの残り時間はわずかに50秒ほど。


 印象的な何か技を決めない限り私は馬場さんに負ける。


負けたら即退場ではないけれど、選考レースの中では一気に遅れをとることになっちゃう。


 どうする、私!


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