第16話 ファースト・バウト
第二次テストのフォーマットはこうだ。
1ラウンド制で、合計5人スパーリング形式で闘う。
1ラウンドで勝ち負けが決まる確率は非常に低いけど、勝てば強い印象が与えられるけど、勝負よりも内容が重要だと源田さんは説明していた。
「君たちがこの数週間で『プロレスとは何ぞや』ということをどれだけ考えて練習をしてきたか、それが重要だ」
そんなことを言っていた。
私は現役の男のプロレスラーとスパーを繰り返してきたんだ。
それに、お父さんのプロレス哲学は子供のころから子守歌のように聞いてきた。
負けたくない。
やるからには、絶対に合格しないと。
すでにリングではほかの候補者同士の闘いが始まってる。
小柄でヤンキーっぽい飯田さんと、ブロンドヘアーで美形の村上レノンさん。
アメリカ人のお母さんがいるハーフらしい。
闘志むき出しの飯田さんは積極的に村上さんを掴みに行くけど、村上さんは縦横無尽にリング内を走り回って逃げている……わけではなさそう。
飯田さんのスキを狙っているんだと私には見えた。
案の定、村上さんを掴み損ねた飯田さんを、村上さんがうまく体の横に回り込んで抱え、サイドスープレックスを打った!
「頭をマットに打ち付けるような技は禁止」
と、源田さんが言っていたけど、これはグレーな技だ。
身体を横から抱え、自らの身体を後方に反らして相手の腰の辺りをマットに打ち付ける。
投げられた方が受け身が取れなければ頭を打つことも考えられる技なんだ。
飯田さんは小柄で軽いから投げやすかったようで、こんな言い方するのもなんだけど、技は見事に決まった。
飯田さん、さっきの勢いはどうしたのかしら。受け身はさすがに取れていたけど、なかなかいいところを見せつけるところまでは行っていない。
辛くもフォールから逃れた飯田さんだけどもう、残り57秒。
反撃しないと評価の対象にならないかも。
一方の村上さん、なんだか自信満々に見える。
このスーパーで、この二人のうちどちらかが脱落しなければならないとすれば、今の段階では間違いなく飯田さんだろう。
「こ・の・や・ろ・う‼」
飯田さん、大きく叫んで村上さんの腕を掴みに行った。
今度は飯田さんが村上さんを捕らえた!
「アタシをなめるなよ!」
そう叫んだ飯田さん、村上さんの腕を引き寄せて弾みをつけ、ロープに振った!
そしてロープに弾かれてリング中央に戻ってきた村上さんの腹の辺りにタックルをするような感じで入り込み、目にも止まらない速さでやはりこちらも高速サイドスープレックスを打ったの。
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