第13話 私どうしちゃったんだろう
ゴングが鳴るとすぐに、私はロープに走って自分の体を預け、リバンウンドする力を利用して思い切りショルダータックルをエドさんにぶちかました。
エドさんは微塵にも動かず、私を受け止めて右腕を取り、ロープに向かって送り出した。
エドさんに言われた通り、ケガをしないようにロープに逆らうことなく私は体を預け、その反動の通りリング中央に戻ってくるとエドさんにいきなりヒップアタックの洗礼をくらわされた。
エドさんは男性レスラーの中では小柄な方だけど、肉体は鋼のようでヒップアタックを受けたとき、軽自動車にでもぶつかられたんじゃないかと思うくらい衝撃を受けた。
もちろん軽自動車にぶつかったことはないんだけど。
私はリングに突っ伏しそうになったが、追撃が来るのがわかっていたので、体を回転させてすぐに起き上がった。
顔にまともにエドさんのお尻をぶつけられたので、鼻の奥がツーンとするような感覚が残っている。
でも酷いわ。
乙女にお尻で攻撃するなんて!
たったこれだけの攻撃で、心の中では「もう無理。やめたい」と思ったのだけれど、何故か体は勝手に動くようだ。
私はエドさんにリング中央で組み手争いを挑んだ。
両手の指を絡ませるように組み、頭の上で力試しを挑んだけど、たかだか2週間練習をしたくらいで現役のレスラーに勝てるほど甘くはなかった。
エドさんに簡単に力負けして私は膝をついてそれでも力を込めて私を潰しに来ている。
その時だった。
力比べする自体が間違っているのかもしれないけど、何故か自分が次に何をすべきなのか体がわかっているかのように、身体が自動的に反応する。
まるでプログラムされた機械のように……いや、自分のDNAに刷り込まれた動物の本能のように。
私は、そんな感覚に身を委ねていた。
組んだ指に力を入れて、組み伏された腕を強く引きながら、エドさんの開いた股間に向かって体を滑り込ませ、エドさんを前のめりに体制を崩した。
エドさんはそのまま前宙して今日脚で受け身を取り、直ぐに組んだ指を離した。
私もエドさんも直ぐに立ち上がり対峙。
また私は左手を、エドさんは右手を差し出して組んだ。
私の身体は今度はエドさんの右腕に両脚で挟むように飛びついて、右脚を思い切り枝さんの喉元に絡ませると、エドさんはそのまま後ろに転倒。そのまま腕ひしぎ十字固めに入った。
エドさんは暫く耐えていたけど、ついに私の脚に左手でタップした。
「イテテテテテテ! お嬢さん、ギブアップです」
「あっ、あっ、エドさんごめんなさい!」
私は腕ひしぎ十字固めを解いて、エドさんの身体を引き起こした。
「いや、面食らいましたよ。どうしたんですか、その流れるような技のコンボは?」
「そ、その、私もよく分からないのよ。身体が勝手に動くというか、次に何をしなきゃいけないのか、考える暇もなく身体が動いちゃうっていうか」
「やばいですね、それ。どれだけ強いの?」
「私どうなっちゃってんだろう」
この感覚になる理由はわからない。
でも、間違いなく私を救ってくれるに違いない。
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