第11話 悠馬からのアドバイス
「どういうことか、ちゃんと言ってくれないと私わからないよ。悠馬君、君は何を知っているの?」
「わかりました。まず車に乗ってください。話はそれからです」
私は悠馬君が運転してきたGMC
このアメリカ車は大きなプロレスラーでも6人は悠に乗れるほどの大きさがあって、そのいかついフロントマスクと車体の大きさで威圧感は半端なかった。
「悠馬君は源田さんと知り合いなの?」
「いいえ、面識はありません」
「じゃあ、源田さんの何を知っているの?」
「今回のこのオーディションは、帝国プロレスへの復讐の一環だと聞いています」
「それはアシュラさんから聞いているわ。でも何が何だかわからないの。アシュラさんも確信はないって言ってたし」
「今年のNGPの事務的なやり取りを、僕がやっているのはご存じですよね?」
「ええ。
「
「どういうこと? 自分たちで作るんではなく?」
「はい。
「もちろんよ。子供のころからの憧れ、ジュリー杉崎様の団体よ? えっ、もしかして……帝プロが買収するってことなのかしら?」
「ええ、ジュリーさん、あまり経営手腕は良くないって評判です」
「ウチのお父さんだって……お母さんがいなかったら、プロ東だってどうなっていたか」
「借金を肩代わりする代償としてAJGPWの実質的な経営権を握るんだとか」
「それは由々しきことね。でも、今回のオーディションと、どんな関係があるの?」
「源田さんは、ジャッキーさんに恨みを抱いています。今回集めたタレントたちを即席に育成して、AJGPWとの対抗戦に持ち込むつもりです。あくまでも相手を潰すのが目的ですから、お嬢さんたちがどうなろうと関係ないって話でして……」
源田さんがそんなことを考えているなんて、ちょっと信じられなかった。
「悠馬君、私はこのまま二次試験も受けるわ。受かるって約束されたものじゃないし、それに源田さんの話だって噂話よね?」
「そ、そうですが……仮にでもお嬢様がそんなことに巻き込まれるなんて、俺、見過ごせないっすよ!」
「ありがとう。でも、今の話を聞いたら余計に私、やる気が出てきたわ。いずれにしてもお父様の仇討ちができるかもしれないってことじゃない?」
「ですが、ジュリーさんは憧れだったのでは?」
「ええ、憧れの存在は乗り越えるべき存在でもあるのよ。私は源田さんを今は信じてみたいと思う」
悠馬君は私がこんなにもはっきり自分の気持ちを口に出していったので、気圧されたみたいで黙ってしまった。
自宅のあるジムまでの間の20分、私たちは二度と言葉を交わさなかったんだ。
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