第13話【職業・技能】エールンドレの住民をRPGに刷り合わせてみる。

 世間一般で「TRPG」と呼ばれるものをRPGと表記します。そもそも「TRPG」なるものこそ本家です。何でドラクエの類に遠慮して「T」付けなきゃいかんのだよ?

 「TRPG」なるもの以外が、適切な頭文字加えてRPGと区別するのが筋だと思いますw


 今まで自分が経験した主なRPGシステムは『D&D旧版』『ルンクエ』『MERP』『RM』です。それらを最大公約数化して、エーレンドレの住民をRPGのキャラシステムに当てはめてみます。

 『RM』は基本ルールでも職業クラスが多く、追加ルールを導入すると収拾がつきません。職業クラスの種別は『MERP』に毛の生えたようなレベルに留めておきます。

 戦士、神官、魔術師、泥棒、野伏、吟遊詩人など、技能や特徴を持った職業クラスに該当する者のみを取り上げます。技能や特徴の無い「無職」に該当する者は割愛します。



【シャフルダーラーン・ワースプラガーン・アーザーダーン】


 シャフルダーラーンは王族、ワースプラガーンは貴族です。両者ともに貴族です。身分や技能に殆ど差が有りません。アーザーダーンは士族です。シャフルダーラーンやワースプラガーンとは、身分に差が有り、技能にも多少違いますが、本質的には殆ど同じです。彼らの職業クラスは、戦士系に該当します。彼らは正に騎士階級であります。エールンドレの用語ではアスワーラーンです。

 アスワーターンとは騎士の複数形です。エールンドレのアスワーラーンは、畜に随いて水草を逐う遊牧民の末裔です。幼い頃から、騎乗に慣れ親しみ、騎射に長けています。

 著名なファンタジー作品を例にとれば、『指輪物語』のロヒリムの様な存在です。しかし、ロヒリムは典型的な遊牧民とは言い難く、その亜流みたいな存在ですが・・・。まぁ、エールンドレのアスワーラーンも、狭い牧草地に閉じ込められ、平和ボケして亜流化してるので、似た様な者でしょうw


 エールンドレのアスワーラーンの技能的特徴は、他の戦士系職業に比べ、乗馬の機能に長けていることです。Lv.1のキャラでも、乗馬機能に熟達しています。騎士としての嗜みを受けていれば、女性キャラでも男性キャラと遜色が有りません。

 Lv.1のキャラでも、『MERP』で換算すると技能ランク5~8くらいは有ります。『ルンクエ』なら50~80%という所です。初期装備で愛馬一頭を以てて当然です。

 馬上から矢を射たり、槍を投げたり、剣や矛を振るう際、殆どペナルティーが付きません。彼らは天性の騎士なのです。

 しかし、異界にテュルクやモンゴルの様な遊牧民が存在する場合、相対的に技能値を下げても好いでしょう。エールンドレのアスワーラーンは、実戦経験が不足しているからです。


 また王族シャフルダーラーンに属するキャラは、戦士系の中でもパラディンの様な職業でも好いでしょう。何故ならば、王は、王であり神官であるからです。


 アスワーラーン階級に準じる者として、その下に仕える下僕バンダグが存在します。馬を馴らしたり、牛や羊を飼うのは、全てバンダグたちの仕事です。彼らの乗馬技能はアスワーラーンと変わりません。中には戦士として遜色の無い者も居ます。しかし、その多くは野伏・レンジャー系の職業クラスに該当します。


 和製ファンタジーでは一人前の戦士が荷馬車に揺られるシーンが好く描かれています。エールンドレのアスワラーンは非常に誇り高いです。一人前の騎士が馬車に乗るなど、恥ずかしくて出来ないでしょう。何か訳有りで馬車に乗ったら、恥ずかしさで居た堪れないでしょう。御者をすることも嫌がります。それは騎士ではなく下僕の仕事だからです。

 尚、エールンドレには、乗合馬車とか豪華な箱型馬車などは存在しません。殆どが荷馬車や牛車です。王族や貴族の女性や子供の移動用に、辛うじて幌馬車が存在するだけです。荷馬車よりは内装を整え清潔にしています。春や秋の移動期に使われます。その時期は、母親が子供と一緒に馬に乗る光景の方が普通です。妊婦が馬に跨っていることすらあります。


 この項目の最後に、思い切って本設定集を換骨奪胎し、エールンドレのアスワーラーン階級全てを女性にするのも面白いかもしれません。その場合、彼女はアマゾンならぬ「アマルゼン」と呼ばれることでしょう。エールンドレ語で「無数の女」という意味です。



【アースローン】


 アースローンは、アースローの複数形です。要するに神官階級です。エールンドレの白魔法使いたちです。様々なRPGシステムに於ける神官職に該当します。ファンタジー世界に頻出するキリスト教もどきの僧侶よりも、ドルイドやシャーマンに近い存在です。社会に司法権を持つ点ではドルイドに、憑依や霊媒を行う点ではシャーマンに似ています。

 アースローンの特徴は抜群の記憶力にあります。無文字社会のエールンドレには、バイブルもクルアーンもグリモワールも有りません。あらゆる知識を空で覚えているのです。知識人なのに文盲ですが、地頭は頗る良好なので、やる気になれば異界語の読み書きを習得してしまうでしょう。


 RPGのキャラとして作成する場合、記憶系技能に下駄を穿かせるべきでしょう。しかし、近代以前の知識人は暗唱文化に親しんでいます。なので、エールンドレの神官も、異界の知識人に比べ、隔絶するほど記憶力が高いわけではありません。それでも、現代人に比べたら、同じ人間とは思えないほど段違いの記憶力を持っていることでしょう。


 職業分類の細かいRPGシステムでは、神官の他に専業の治療師という職業クラスも存在します。その様な職業もアースローに加えることになります。一般の神官よりも治療の技に長けた神官です。

 また吟遊詩人も、歌唱や演奏に長けた神官と言う位置づけです。

 下級の神官の中には、神官としての能力が低く、神官の下で下働きだけをする者も大勢います。彼らも神官の端くれに違いないのですが、職業クラスは無職になります。



【ウズルガーン・ハームハルザーン】


 ウズルガーンは文官系貴族ですが、村長ウィスベドを務める裕福な地主階級です。ハームハルザーンは、一般の農民ワーストリョーシュよりも裕福で、ウズルガーンには届かない役人層です。

 彼らの職業クラスは、魔法技能を持たない魔法使いの様なものです。魔法の代わりに、社会に役に立つ技能を習得しています。それは計算です。彼らは財貨を数えたり、田畑を測量して収穫量を見積もります。職業クラスとしては、商人とか無職に該当します。

 プレイヤーキャラクターとしては魅力的ではありません。NPCとしては重要な役割を果たします。無文字社会の中で、読み書きが出来る者が居るとすると彼らです。外国語で読み書きをしているので通訳もできる筈でしょう。通訳できるほど熟達して無くても、筆談くらいは出来る筈です。

 またエールンドレで悪代官や悪徳商人みたいな役回りをしそうなNPCも此の階層です。ただし、狭い社会でそんなにアコギな真似はし難いでしょう。



【セルワズ、パヤーダグ】


 セルワズは比較的よく訓練された正規の歩兵です。パヤーダグは郷村から賦役代わりに徴収された民兵です。一般庶民の中で腕に自慢のある者が就きます。

 セルワズの職業クラスは戦士です。アスワーラーンと違って騎乗系の技能は殆どありません。何しろ歩兵なのです。

 パヤーダグの中で戦士職に該当する者はセルワズ候補生です。一般のパヤーダグの殆どが無職に該当します。目端が利く者はレンジャー系の職業クラスに成ります。中には手癖の悪い者もいますが、シーフ職の様な技能の持ち主は稀でしょう。ド田舎エールンドレには、泥棒の技を磨く土壌が存在ません。腕利きの泥棒がいるとすれば異界人でしょう。



【カーリーグ】


 カーリーグは様々な職人です。殆どは無職に該当します。プレイヤーキャラクターに成っても、しょうがないでしょう。職人の中でも、アーハンガラーン家の一門の者なら、錬金術師が居るかもしれません。



【ジュワーン・マルダーン】


 ジュワーン・マルダーンとは、若い男たちと言う意味です。要するに男らしさとか義侠心と言う意味です。もし、様々な階層の人間が暮らす大都市であれば、任侠無頼の徒を意味します。

 エールンドレみたいなド田舎には、任侠無頼の徒などおりませんが、男らしさや義侠心と言う理念は有ります。これは下々の若者に於いては義侠心であり、アスワールたちにとっては騎士道の精神に該当します。

 ジュワーン・マルダーンは特定の職業クラスではありません。しかし、エールンドレで冒険者とか勇者に近い概念に近いのが、ジュワーン・マルダーンであります。

 異界からやって来た冒険者が、エールンドレの人々から勇者と認められたら、ジュワーン・マルダーンとして称えられるのです。



【ジャードーグ】


 ジャードーグはRPG世界一般における魔法使いです。しかし、エールンドレでは黒魔術師、妖術師という印象が強いです。基本的にエールンドレには居ませんが、シスの暗黒卿の様に何かを隠れ蓑にして潜んでいるかもしれません。まぁ、異界から来た設定にした方が妥当です。

 攻撃魔法、呪詛魔法を使える職業クラスのプレイヤーキャラクターが、エールンドレに入ってきたら、ジャードーグと看做されるでしょう。正体を隠し、言動を慎むのが無難でしょう。



【女性キャラクター】


 冒険者パーティの華として女性キャラは欠かせません。エールンドレ出身の女性キャラには次の様な例が挙げられるでしょう。


 まず筆頭が、前述のとおりエールザンドの女騎士でしょう。職業クラスは戦士系かレンジャー系が妥当です。

 神官層の女性は、エールザンド系なら、乗馬技能を持ち、戦士やレンジャーである可能性が有ります。アーネルザンド系なら、神官だろうが在地貴族ウズルガーンだろうが、女性は馬に乗りません。もし、馬を乗りこなす女性が居たら、常識はずれのジャジャ馬娘です。エールザンドの者なら好奇の目で見てくれるでしょう。もしかすると、騎士の家に嫁入りできるかもしれません。しかし、アーネルザンドの家では、女性が馬に乗ることは、はしたないと看做されます。親兄弟から止められることでしょう。


 エールンドレには女性の神官は居ません。理由は血の穢れを忌み嫌われているからです。初潮前の少女なら、巫女代わりに神事に関わることも有ります。しかし、女王ならば例外です。

 それはさておいて、神官の家の女性の中には祝詞を盗み聞きして完全に暗記してる者も居るかもしれません。恐らく、密かに白魔法も使えるでしょう。それでも、エールンドレでは活躍の場が有りません。異界に出て、女神官として活躍する設定も、面白いかもしれません。


 エーレンドレにも、魔女的な存在は居ます。それは、民間の治療師です。その正体は、長年の経験を積んだお婆さんです。森の中で茸や山菜、薬草を見分ける技能の延長です。生活の知恵を基に、簡単な施術をしたり、お産の手伝いをするのです。素人の魔法使いなので、職業クラスとしては無職でしょう。冒険者となり得る存在ではありません。しかし、女性レンジャーならば、同様な技能を持っていても不思議ではありません。



【種族】


 エールンドレに居るヒューマノイドは人間だけです。エールザンドとアーネルザンドにも、人種的な差は殆どありません。少なくとも、キャラクター制作時に何ら差は有りません。もしも、DNA検査をしたら、外来者と土着者の違いが出る程度です。日本人を縄文系か、弥生系かで分ける様なものです。外見的には、エールザンドは若干色白で若干長身で、アーネルザンドは若干色黒で中背中肉です。それは日焼けの度合いや食生活が原因でしょう。


 基本的にエルフやドワーフ、ハーフリングも存在しません。もし居たら、異界からの外来者です。

 勿論、獣人なども居ません。しかし、土着民アーネルザンドの村々には動物をトーテムにする風習が有ります。トーテムポールなど有りませんが、衣服の刺繍や家屋の装飾などに、さりげなくが現れています。それを単なる守護霊と看做すことも有れば、祖霊と看做すことも有ります。そこで獣人の末裔と言う民話も有るかもしれません。


 NPCやモンスター扱いですが、オークやゴブリンも存在しません。もしも存在したら、二本足の魔物フラフスタル、或いは下級の悪魔デーウと看做されます。問答無用でジェノサイドの対象です。

 尚、エールンドレの信仰では、フラフスタルと看做した者は食べません。オーク肉など有り得ません。そんなものを食べるのは禁忌です。食べたら穢れると思われています。人食い熊を狩っても食べないという、アイヌやシベリア狩猟民の風習と似たような発想でしょう。





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