第12話【自然地理】エールンドレはカルデラか? クレーターか?

 エールンドレの設定をしていながら、肝心な自然条件が未定でした。

 険峻な山脈に囲まれた盆地の形成原因は、次の二つが考えらるでしょう。第一の原因として考えられるのが、火山活動によって形成されたカルデラ地形です。第二の原因は、巨大隕石衝突によって形成されたクレーター地形です。

 このエールンドレの世界設定を使用される方が、第三の原因を考えてみてもいいでしょう。自分は二つまでしか、思い浮かびませんでした。以下では、カルデラとクレーターの両設定について考察してみます。



【カルデラの場合?】


 エールンドレは円形の山脈に囲まれた盆地です。その直径は約24㎞に及びます。南北25km、東西18kmの阿蘇カルデラよりも若干大きいのです。もし、エールンドレ・カルデラが大爆発を起こせば、エールンドレの住民や動植物は全滅するでしょう。その上、膨大な噴煙が地球上空を覆い、日光を遮り、深刻な冷害を起こすことになるでしょう。


 エールンドレが火山活動によって形成されたカルデラ地形なら、たびたび地震が発生するでしょう。住民たちは地震慣れしていても、時折、大地震や小規模の噴火の所為で深刻な被害をこうむるでしょう。

 そうなると影響は物質生活に留まらないでしょう。精神生活に於いても、エールンドレの住民に大きな影響を与える筈です。

 まず、宗教信仰面で大きな影響が現れます。恙無い天候の巡りを祈るばかりでなく、神事によって地震を調伏することが、王と神官の重要な役割になるでしょう。神官も天文ばかりでなく、地震の兆候も観察し、何か重要な経験則を得ているかもしれません。

 エールンドレの建国神話では、悪しき龍を倒して洪水を収める筋書きでした。そこでアジ・ダハーカ或いはザッハークの故事に倣い、以下の様な話が付け加わるでしょう。


 大蛇の悪魔を倒すことは出来ても、殺すことは出来なかった。大賢者ウズルグパランの智慧により、大蛇の悪魔を地下深く封じ込めることにした。そして何時か、封じ込められた大蛇の悪魔を完全に滅ぼせる日が来るであろう。

 エールンドレの大地が屡々揺れるのは、大蛇の悪魔が身動きするからである。これが地震の起源に関する神話である。

 また、大蛇の悪魔を封じ込める力は、善き神々の霊験に由来する。人々が善行を積むことは、善き神々の霊験を増すことになる。善き神々の霊験が衰えれば、何時か大蛇の悪魔の封印が解け、再び大惨事が起こる。これは破局的な大噴火を示唆している。


 因みに、アジ・ダハーカ(ザッハーク)を封じ込めた山はダマーバンドと言います。イランに実在します。恐らくデーウバンド(悪魔を縛る)という語が訛ったのかもしれません。エールンドレに其の様な地名があっても不思議ではないでしょう。

 また、悪魔崇拝者が大蛇の悪魔復活を目論めば、エールザンドに潜入する動機に成ります。


 活発な火山活動は悪ことばかりではありません。温泉などは好い例です。エールンドレのあちこちに良質な温泉が湧き、人々の憩いの場になることでしょう。温泉目当てに訪れる異界人も居るかもしれません。その他にも硫黄を採掘できることでしょう。



【クレーターの場合?】


 エールンドレ盆地が巨大クレーターであった場合、カルデラ地形と違って活発な火山活動も無く、地震も起こらないでしょう。この場合、深刻なデメリットが思いつきません。そして次の様なメリットを想定できます。

 それは豊かな天然資源です。巨大隕石の衝突の膨大なエネルギーによって、様々な珍しい鉱石が発生した可能性が有ります。エールンドレに珍しい資源を使い切る技術水準が無かったとしても、隕鉄とか宝石なら、異界に売れる輸出資源に成るかもしれません。豊富な隕鉄によって、鍛冶産業も発展してるかもしれません。

 またアダマンタイトやオルハリコンの様な伝説級の金属の鉱石、賢者の石の原料となる様な岩石がエールンドレに転がっていても、面白いかもしれません。これは異界の人間が、辺鄙なド田舎エールンドレに惹き付けられる動機に成ります。

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