第203話 娘達の憂鬱
ここは統一国家、エテメンアンキの王宮の中。
来人の娘達であるミライ達は女王としての仕事に忙殺されていた。
「んー! 疲れた! あーぁ、なんでこんなめんどくさい仕事、私達がやらなくちゃいけないのよー」
と長女であるミライが肩を叩く。
母譲りの巨乳なので肩が凝るのだろう。
「ふふ、ミライ姉はいつもそうね。駄目よ、国民の皆さんのためにもっと頑張らないと」
三女のソラは事務仕事をこなしつつ、ラミアらしく蛇の尻尾を使いコーヒーを口に運ぶ。
「こんなんじゃ体が鈍っちゃう……。あ、ドラゴンが北に出たんだって! 退治しに行こうよ!」
と次女のジュンが嬉そうに尻尾を振っていた。
「ジュン姉、それって先月の報告書だよ。もうパパが解決してるやつだね」
四女のヒカリが冷静にジュンに伝える。
「ふぅ、私の仕事は終わりです。みんなは?」
「あーん、まだだよー。ソラは真面目だよねー。手伝ってー」
「ふふ、駄目ですよ、ミライ姉。長女なんだからしっかりしないと。コーヒーを淹れますから、みんな頑張って」
「「「はーい……」」」
ミライ、ジュン、ヒカリは渋々残った事務作業を続けるのだった。
――コンコンッ
そして彼女達の部屋を訪ねてきた者がいる。
先々代の王であり、建国の母であるセタだ。
「おぉ、可愛い孫達よ。頑張っているか?」
「おばあちゃーん。助けてよー」
とヒカリは甘えるが、セタはそれは王の仕事だと一蹴した。
彼女は悠々自適な隠居生活を絶賛満喫中だからだ。
「おばあちゃん、コーヒーはいかがですか?」
「ソラは気がきくな。頂こう」
セタはソファーに座りコーヒーを飲む。
お代わりのコーヒーに口を付けたところで三人の今日のノルマは終わったようだ。
四姉妹は久しぶりに会った祖母……ではないのだが、幼い頃から可愛がってくれたセタを祖母と同じだと思っている。
セタとの世間話を楽しむことにした。
「それでおばあちゃんはどうしてここに?」
とミライが聞くとセタはこんなことを言う。
「しばらくライトに会っていないからな。あいつはどうしている? 久しぶりに会いに行こうと思うのだが」
その問いに四姉妹は苦笑いをした。
「んー、あんまり言いたくないけど、会いに行くのはお勧めしないよ」
「ほう、何故だ?」
四人は顔を赤くする。
セタはなんとなく理解した。
「ははは、ライトめ、変わっておらんようだな」
「そうなのよ! こないだと久しぶりに家に帰ったらね! もうアンアンうるさいのよ! 娘達がいるんだからちょっとは遠慮して欲しいのに!」
「まぁまぁ、ジュン姉。そんなに怒っちゃ駄目よ。パパは二百年も大変な仕事をしたんですもの。少しは休ませてあげなくちゃ」
「ソラ姉は優しいね。あーぁ、でもさ、私達もそろそろ結婚相手を見つけなきゃねー」
とヒカリは言うが、娘達の理想の男性は来人だった。
自分達でハードルを上げているとはいえ、中々譲れない一線だった。
「まぁ、お前達の器量ならばすぐに相手は見つかるだろう。どうだ? 私が紹介してやろうか?」
「んー、それはまた今度でいいよ。今は女王としての仕事が忙しいからね!」
「そうか。ならばそろそろ行くとしよう。また遊びにくる」
セタは久しぶりに訪れた王宮を出ていった。
そして彼女は思う。
(あの子達に任せておけば安心だな……)
事実、エテメンアンキはかつてない発展を遂げる。
そしてその長い歴史の中で四人は最高の王として讃えられるのだった。
その父親である来人は今どこにいるのだろうか?
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