心の壁の章
第167話 人間の国アーネンエルベ
北の大陸にて。
ここは人族が支配する軍事国家アーネンエルベ。
国を治めるのは地球から転移してきたというヨーゼフなる男。
彼は大きな城の中に住んでいる。
その中の執務室で一人南の大陸の侵攻について考えていた。
(異形がいなくなった今、我が野望を叶える時が来た。求めて止まなかった統一された世界。世界は優れた人種によって統治されるべきなのだ)
北の大陸は人間の世界ではあるが、長い時を経て、そしてヨーゼフの力を以て、その姿……いや人種というべきか、ヨーゼフと同じ人種に変わっていた。
それだけではない。北の大陸に住む人々は大いなる力を持っている。
一人一人が異形並みに強いのだ。
もちろんヨーゼフの力によって魔法であったり、怪力であったりと様々な能力を与えられたのだ。
機は整いつつある。
ヨーゼフは侵攻への準備が終わるのを心待ちにしていた。
――コンコンッ
ドアをノックする音。
ヨーゼフは一言、入るよう伝える。
「失礼します」
「ヴィルヘルムか。どうした?」
ヴィルヘルム。彼はアーネンエルベの国防大臣であり、彼もまた転移者である。
彼も転移者として大いなる力を持ち、ヨーゼフと共に人として逸脱した寿命を持ち、長年アーネンエルベを支配してきた。
そして彼はアーネンエルベの軍事の責任者でもあり、南の大陸への侵攻作戦の実行部隊を率いる予定でもあった。
「先発隊の準備が整いました」
「そうか。作戦は?」
「直接南に向かうより、西の海岸に基地を作ります。しかしそのためには猫人が住む群島が障害となります」
「群島……。テオがいる島だな」
ヨーゼフは猫人の王、テオと面識がある。
いや、かつては友であった。少なくともテオはそう思っていたはずだが、ヨーゼフは違った。
この世界に住む下等な先住民族程度の認識だったが、野望を達成するため、仮の友好関係を構築したに過ぎない。
「潰せ」
「はっ。その後は西、北の両面から一気に南下して大陸を全て支配します。もし他種族が生きているようならどうしますか?」
「殺せ。もうこの世界には必要の無い者達だ」
「かしこまりました。では本作戦はアシカ作戦と命名させて頂きます」
ヴィルヘルムの言葉を聞いてヨーゼフは笑う。
「ははは、お前も昔を忘れられないのだな」
「そういうことです。それでは……」
ヴィルヘルムは部屋を出ていった。
間も無く最後の戦いが始まる。
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