第162話 結果発表

 制限時間を越え釣り大会は終了となる。

 ビーチにはリディア達が釣った魚を並べるのだが、もう結果は分かってるんだよなぁ。


「じゃーん! これが私達が釣った一番大きな魚でーす!」


 と両手で本マグロみたいな魚を見せつける。

 っていうか本マグロって海岸から釣れるものだっけ?

 まぁ異世界だし別にいいけどさ。


「うん、大きいね」

「あれー? ライトさん悔しいんですかー?」


 なんていたずらっぽくからかってくるけど悔しくはない。

 そんな感情は一時間前に捨てた。


「すごーい。大物部門はリディア姉達の勝ちだね! でも釣果数部門なら……」

「うわぁ、すごいたくさん。本当にシャニ達が釣ったの?」


 とアーニャは桶いっぱいに入った魚を見つめる。

 俺達が偵察から帰った後もガンガン釣ったんだろうなぁ。

 もうそのまま漁師になれるんじゃないかっていう釣果なんですけど。


 こうして釣果数部門はリリ達の勝利となった。

 まぁ言うまでもなく俺はどちらの部門でもビリでしたとも。


「ちちが釣ったおさかな、ちいさいのー」


 ミライがアジをツンツンしている。

 止めなさい。これでもちょっとは傷ついてるんだから。

 しかし今さら結果はもう変えられんしなぁ。


「……で、俺は何をすればいいんだ?」


 優勝賞品として、どうせ俺に何かさせるつもりなんだろ。

 詳しくは聞いてないがそんなことを言っていたはずだ。

 まぁリディア達のことだから無茶なことは言うまい。


 リディアとアーニャは楽しそうにヒソヒソ話してから……。


「「今度私達とデートして下さい!」」


 ん? そんなんでいいの?

 ずいぶん簡単だな。


「そんなことないですよ。私達家族になってからこうして遊びに行く時間は減っちゃいましたし」

「それにこれから私もあまり動けなくなります。なら今のうちにライト様と楽しい思い出を作っておきたくて」


 なるほど、そういうことか。

 確かにリディアはミライを産んでから俺との時間は減ってしまった。

 もちろん家族全員でミライの面倒は見るが、やはり産みの親として責任を感じているのだろう。

 たまには子育てから離れて楽しむことも必要かもな。


 そしてアーニャは俺の子供を妊娠している。

 これからどんどんお腹も大きくなってあまり無茶なことは出来なくなるのだ。 

 アーニャは寂しがり屋だからな。

 彼女のためにも素敵な思い出を作ってあげることにしよう。


 では次だ。釣果数部門の勝者であるシャニとリリの願いを聞かないと。


「二人はどんなことを……」

「…………」


 ――スッ


 シャニは無言でとある物を差し出した。

 ん? なんだろうか、これは。

 小さな楕円形の球体が掌の上に乗っているんだけど。


「なにこれ?」

「えっとね、これは私から説明するね」


 シャニではなくリリが前に出てくる。

 そして彼女は懐から鉄の棒を取り出し楕円形の球体を軽く叩いた。


 ――ビィーンッ ブブブブッ


 んん? なんかどこかで聞いたような音がするんですが。  

  

「これは共振石って言ってね、この地方にしかない珍しい石なの。振動を与えるとその力を中に蓄えて、しばらく揺れ続けるんだよ」

「へー、それでこれはなんなの?」


 ――ずいっ


 今度はシャニが前に出てきてゴニョゴニョと俺に伝えてくる。

 ふむふむ、これをあそこに当てればきっと気持ち良いと……。


「ライト殿、この子が産まれた後に試して欲しいのです。激しくお願いします」

「真顔でエロいこと言うんじゃないよ」


 分かったぞ、これはバ○ブと同じ機能を持っているんだ。

 っていうかシャニ、君はオモチャが好きだねぇ……。


「えー、なにそれー」


 と興味深そうにリディア達も寄ってくる。

 シャニはミライに聞こえないよう異世界バ○ブについての説明を始めるのだった。


「す、すごい。使ってもらいたいかも……」

「気持ち良さそうだね……」

「気持ち良かったです。リディア姉達もどうぞ」


 実践済みだったらしい。

 シャニはいつも通りのポーカーフェイスでバ○ブを手渡すのだった。

 そして俺は思う。

 大東○子工業の皆様、どうやら異世界でも貴方達の技術とアイディアは連面と受け継がれていくのでしょうと。

 

 シャニのエロい願いはお腹の中の子……ジュンが出てきてからだな。

 シャニのお腹に手を当てながら。


「ジュン、ママみたいにエッチな子になるんじゃないぞ」

「失礼ですね。私は普通だと思います」


 普通ではないと思う。

 まぁそれはいいだろう。

 さぁ、最後にリリの願いを聞かなければ。

 

「リリは何をして欲しいんだ?」

「孕みたい!」


 こら、女の子が孕みたいとか言わないの。

 しかしリリは常々俺の子供が欲しいって言ってたしな。

 アーニャも出来ちゃったことですし、そろそろ考えてもいいかもな。


「アーニャの子が産まれてからでもいい?」

「うん! やったぁ! これで私もママになれるんだ!」


 とリリは喜ぶ。

 これで全員の願いは聞いた。

 さて、後は旅行最後の楽しみとしてお魚バーベキュー大会でもするかな。



◇◆◇



 夕方になり、俺達は浜辺で焚き火を起こし魚を焼く。

 肌がツヤツヤになったセタも参加した。

 このおばちゃん、さっきまでメンズと楽しんでたんだろうなぁ。


 そんなセタはサンマみたいな魚を齧りながらミライには聞かせられないことをリディア達と話していた。


「お前達は複数人でライトとまぐわうのであろう? それも中々良いだろうが、その逆もまた然り。お前達にあの良さを知ってもらいたいのだが」

「セタ様、若いですね……」


 なんてことを話していた。

 食事中に話す内容ではないよなぁ。


「全くニャ。これだから王都の連中ときたら」

「だよなぁ。魔王ってもっと怖い人だと思ってたんだけど……? ん? ニャって何?」


 村民にそんな語尾をつけるやつなんていないぞ。

 ふと横を見るとなんか猫が焼けた魚をハフハフと齧っているではないか。

 背丈は俺の半分くらい。

 ほとんど猫みたいなやつがいる。


「ニャんだ? そんな目で見よってからに」

「い、いつの間に。もしかしてあんた猫人か?」


「ニャ」 


 ニャって。

 そういえば西にある島にはカジートが住んでるってセタは言ってたな。


「美味いニャ。もう一つ食べてもいいかニャ?」

「あ、あぁ。魚はたくさんあるからな」


 と俺はカジートに魚を手渡す。

 その様子に気づいたのかセタがこっちに寄ってきた。


「おぉ、久しいな、テオ。猫人の王よ」

「あんたも生きたのニャ。相変わらず魔族はしぶといニャ」


 ん? 俺の隣にいるのがカジートの王様なの?

 そして二人には面識があるようだ。

 突然のことに俺は言葉を失うのだった。

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