第160話 海水浴 其の二

 ミライと手を繋いで海から上がり、ビーチで待つシャニのもとに向かう。

 しかしそこには……。


「あー、ママ達がいるのー」


 ミライはリディア達に駆け寄っていった。

 リディア達は着替えたのであろう水着に身を包んでいる……んだけど、まぁエロい水着を着ているわけだよ。

 アーニャは変化の薬を飲んできたらしく、蛇の下半身ではなく二本のスラッと長い足をしていた。


「あー、ライトさーん。どうですか? 似合いますか?」


 とリディアは俺に手を振るんだけど、手を振る度に胸がタユンタユンと揺れるので目に毒だ。

 ちなみにリディアが着ているのはビキニ……なのだがただのビキニではない。

 使っている布が極端に少ないブラジリアンビキニというやつだ。

 これを考案してくれたブラジルの人、本当にありがとうございます。

 地面に向かって「ブラジルの人、聞こえますかー。ありがとうございましたー!」と叫びたくなるほどだ。

 水着の色はリディアが好きな緑だ。

 とても良く似合っている。むしろエロい。


「わ、私はどうでしょうか?」


 アーニャが顔を赤くして聞いてくる。

 彼女が着ているのはモノキニというタイプの水着だ。

 ワンピースの水着なのだが脇の部分は布が無く、後ろから見るとビキニのように見える。

 しかもハイレグタイプなので足がより長く見える。色はアーニャが好きな紫色だ。

 すごくセクシーだ。っていうかエロい。


「えへへ、似合うかなー?」


 とリリはその場でクルクルと回ってみせる。

 リリが着ているのもビキニだが、片方の肩だけが露出している。 

 ワンショルダービキニだな。

 首回りをほっそり見せることが出来つつ、貧にゅ……胸の小ささをカバー出来るデザインだ。

 フリフリも付いていてとても可愛いデザインとなっている。

 可愛い……っていうかエロい。


「でもさー。みんなの水着ってライトが考えたんでしょ? ライトってそんなに服に詳しかったっけ?」


 とリリは尋ねてきた。

 いやー、ファッションにはあまり興味は無いんだけど、着エロが好きでねぇ。

 昔は下着とか水着なんかを付き合ってた子と買いに行って覚えてしまったのだ。

 美しい妻達を見ているだけで、もう宿に戻って彼女達を押し倒した気分になるが……。


「ママー。一緒に泳ぐのー」

「ふふ、はいはい。それじゃ行きましょうか」

「やっほー! 私も泳ぐよー!」


 リディア達は笑顔を海に駆けていった。

 俺はシャニがいる敷布の上に座る。


「泳がないのですか?」

「うん、ちょっと休憩をね」


 実は下半身に血がたまってしまい、前屈みになっちゃうからな。

 少し気分が収まるまで待たなくては。


 遠目から楽しそうに遊ぶリディア達を見る。

 平和だな……。

 

 ――コトッ


 シャニが俺の肩に頭を乗せてきた。


「シャニ?」

「ライト殿が考えていることは分かります。しかし私達の幸せを脅かすものが存在します」


 だな。まだ攻めてきてはいないが、北の大陸にはここを支配しようとする者がいるらしい。

 人間の国アーネンエルベだ。

 そこの支配者ってのは俺と同じ異邦人……転移者なわけだ。

 

「分かってるよ。俺だってむざむざこの土地を明け渡すつもりはない。まぁ相手が平和的解決を望んでいるなら別だが……」

「それは無いでしょう。私の部隊は多くの斥候を送ってきましたが、生きて帰って来た者は極僅かです。知られてはいけない情報があるということですから」


 今度は化物じゃなくて人と戦うことになるのか。

 まだ時間はあるだろうが、うかうかはしていられないだろうな。


「申し訳ありません。せっかくの旅行なのに無粋なことを言ってしまいました」

「いや、気にしないでくれ。今の俺には守るものがある。それに……」


 ――スッ


 シャニのお腹に手を当てた。


「この子のためにも今よりも平和な世の中を作ってあげないとな」

「はい」

 

 ちょっと良い雰囲気になったのでシャニの肩に手を回してキスをする。

 するとお腹の内側から蹴られてしまった。

 なんだよ、イチャイチャするなってか?


「こら、蹴ってはいけませんよ」

「ははは、ジュンも早く外に出て遊びたいのかもな」


 なんてことを話していると、海からリディア達が上がってきた。

 

「あれ? なんか楽しそうですね」

「シャニ、ごめんなさいね。あなたは泳げないのに私達だけ……」

「いえ、気にしないで下さい。その代わりライト殿に甘えていましたから」

「ねぇー、お腹空いたよー。ごはん食べに行こうよー」

「なのー」


 そういえばもう昼くらいだな。

 一旦ラカン村の宿に戻り昼食を摂ることにした。

 宿は食堂も付いており、中々美味いと評判の宿なのだ。


 食堂は宿の一階にあり、そこには多くのお客さんが料理を食べている……んだけど。

 

「セタ様、僕が食べさせてあげます!」

「いいや、ここは俺が!」

「魔王様、食事が終わりましたら僕を食べて下さい!」


 んん!? なんかセタの周りに目がハートになっている男達がいるんですけど!?


「これこれ、がっつくでない。順番に可愛がってやるから……? おぉ、ライトではないか」

「あんた、何してんの?」


「まぁ、夏は人を狂わせる季節だということだ」


 なんてことを言う。

 っていうか割りと自由に楽しんでるのね、この人。

 セタはおばあちゃんという歳らしいが、正直美人の類いだ。

 美しく歳を重ねていると言うべきか。

 この世界にもそっち専の者は多いらしくその界隈ではセタはモテモテだったようだ。


 イチャイチャしながら昼食を食べているセタは放っておくことに。

 俺達も空いているテーブルを見つけ、思い思いの料理を注文することにした。

 ふむふむ、やはり海の幸がメインだな。

 

「わぁー、どれも美味しそうです!」

「そうだね、アーニャは何にするの?」


 刺身定食に海鮮丼に焼き貝、海草サラダに潮汁なんかをオーダーする。

 どれも俺考案の料理なのだが、テーブルに並べられた料理はここって日本だっけ?と思わせてくれるほどの完成度であった。


 いやー、どれも美味かった! 

 やはりラカン村を観光メインの村にして正解だったな!


 食べ終わった食器を片付けに来た店主が声をかけてきた。


「ははは、綺麗に食べてくれましたな。ありがとうございます」

「あぁ、ごちそうさん。美味かったよ」


「村長にそう言ってもらい光栄ですよ。でももっと美味い魚があるのですが、本日は品切れでして……」

「へえ、興味あるな。その魚ってのは?」


「ははは、それはもちろん自分で釣った魚です。近くに良く釣れる穴場があるんですよ。良かったらどうですか?」


 釣りかー。実はあんまり得意じゃない……っていうかめっちゃ苦手なのだ。

 リリ達と初めて釣りをした時は俺だけボウズで終わったしな。


「ちちー、おさかな釣ってみたいのー」

「釣りですか! ライトさん、私もやってみたいです!」

「釣りならばこの体でも楽しめますね」


 なんてことを家族は言うのだが……。

 むむむ、仕方ないか。

 せっかく海に来たんだもんな。

 

 午後は釣りを楽しむことに決めたのだった。


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