第136話 シャニのために 其の三☆

「ふぅ、お腹がいっぱいです」


 とシャニはお腹を擦る。

 そりゃ20個近いパンを全部食べればねぇ。

 うちの嫁は全員よく食べるな。

 

 しかしさすがに食べきれないとシャニは俺に数個のパンを渡してきた。

 なので実は俺も満腹だったりする。


 食事中もシャニの探索班が発見したコーヒーを飲んだが、久しぶりの味をもう一度味わいたい。

 シャニからコーヒーをもらい、俺が淹れることにした。


「どうぞ」

「ありがとうございます」


 二人で敷布の上に座り、コーヒーを飲みながらのどかな風景を眺める。

 多少牛や羊のうんちの匂いは気になるが、それもまた良し。

 

「明日ですね」


 シャニはコーヒーを飲みながら呟く。

 そう。シャニの言う通り、明日彼女は単身で襲撃後の異形を追跡し巣を見つけに向かうのだ。

 これは命がけの仕事になる。


 シャニは強い。ステータスでは俺やアーニャの方が上だが、彼女は長年暗殺者として鍛え上げられてきた。  

 技術においては俺はシャニの足元にも及ばないさ。

 だがもし追跡に失敗して途中で見つかろうとでもしたら……。


「もう一度約束してくれ。絶対に無事に帰ってくるってな」

「……ライト殿、歌いませんか?」


 シャニは俺の約束には応えなかった。

 その代わりに歌を歌いたいだって?

 彼女は用意していたであろう笛を鞄から取り出し俺に渡す。


 そして彼女は歌い出す。

 もちろん曲はアメージンググレイスだ。

 俺はシャニの歌声に合わせ、笛を吹き始める。


 ――ラーラー♪ ララララー♪ ラララー♪ ラーラー♪


 この歌は恐らく大昔に転移してきた者がこの世界の住人に伝えたものだ。

 それがいつしかシャニの部隊での鎮魂歌として歌われるようになったらしい。


 シャニにはアメージンググレイスの歌詞は伝えてある。

 これは救いの歌なのだ。

 だが俺にはシャニが違う意味でこの歌を歌っているように思えた。


 ――ラララー♪ ラーラー♪


 最後の節を歌い終え、自然と俺達は向かい合う。


「…………」

「…………」


 シャニは俺に身を預け、キスをしてきた。


 やはり……。分かってしまった。

 彼女は命を捨てる覚悟をしていることを。

 もちろん危険な仕事だということは理解している。

 

 ここは夫として行かせないことを伝えるべきか?

 いや、駄目だろうな。シャニの性格は知っている。

 やると決めたら絶対にやる子なんだ。

 

 ならば……。


 俺はシャニから離れて再び彼女と向かい合う。

 立ち上がり言葉も無く、ただ彼女の手を引いて厩舎に向かう。


「ライト殿?」

「…………」


 俺は応えない。

 厩舎の横には俺が建てた休憩室がある。

 急病人が出た時のためにベッドも用意していたはずだ。

 

「ライトど……。ん……」

「…………」


 休憩室に入るや否や、俺はシャニをきつく抱きしめ深いキスをする。

 シャニは驚いたようだが、少しすると彼女からもキスをしてくる。

 

 そのままシャニをベッドに優しく寝かせ……。

 

「ライト殿、駄目です……」


 止めるのを聞かずに俺はシャニを抱きしめ続ける。

 さらにこんなことも。


(感度調整・改をアクティブに。感度は2倍に設定)

【設定完了。着床率が上がりますがよろしいですか?】


 俺がYESと念じると、シャニは自身の体に異変が起きたことを察したようだ。

 俺は構わずシャニの中に。暖かさを感じながら彼女の大きくなったものに手を伸ばす。

 

「駄目……。ん……」


 シャニの口をキスで塞ぎ、彼女を愛し続けた。



◇◆◇

 


 お互い限界になるまで求めあった。

 シャニは最初は少し抵抗していたが、途中から彼女から俺を求めてくるように。

 うぅ、今回は俺も無理し過ぎたかも。

 もう何も出んぞ。


 シャニは俺の胸を枕にして顔を見上げる。

 

「何故あのようなことを?」


 シャニは片手でお腹を撫でていた。

 俺が感度調整・改を発動したことに気付いてるんだな。

 なら今シャニの身に何が起きているか分かるはずだ。

 俺もシャニのお腹に掌を当てる。


「この子はどっちかな? シャニは男と女、どっちがいい?」

「そんなことを聞いているのでは……」


 そう、今のシャニのお腹の中には間違いなく新しい命が産まれているはずだ。

 感度調整・改を発動すれば着床率が格段に上がる。

 それでリディアは妊娠したんだ。

 

 本来異種族間では妊娠は出来るが、それでも同種族に比べると確率はかなり下がるようだ。

 

「確かに私は母になりたいと言いました。ですが今ではないと思います」


 シャニは無表情だが怒っているようだ。

 耳を伏せてるからな。

 いや、俺に言わせれば今しかないと思ったからなんだよ。


「これで一人の体じゃなくなった。シャニ、この子のためにも絶対に生きて帰ってこい」

「そういうことですか……。ライト殿は酷いです。私は死を覚悟していました。それほどに危険な任務ですから。でも……。うふふ」


 ん? シャニが笑った?

 直接彼女の笑顔を見るのは初めてかもしれない。

 ははは、こんな顔もするんだな。


「これでライト殿の言う通り、私は生きてここに戻ってこなければなりません」

「そういうことさ。シャニ、無事で戻ってこい。そしてみんなでこの子を育てていこうな」


 俺達はベッドで横になりながらお腹を撫で続けた。

 二人目の子供はシャニとの間に出来ることになったか。

 

 その後も産まれてくる我が子の性別や名前なんかを一緒になって考えたりと楽しい時間を過ごしていると……。


 ――ムクムクッ


 おぉ、シャニのが大きくなってしまった。

 元気だなぁ。


「こ、これは、その……」

「ははは、構わないよ。もう戻らないといけないけど……。最後にもう一回する?」


 もう夕方だからな。

 そろそろ自宅に戻らなければいけないが、今日の安息日はシャニのために使うって決めたからな。

 

「ちょっと待っていてください」

「ん? いいけど……」


 シャニはベッドを出て、裸で外に飛び出す。

 彼女はすぐに戻ってきた。

 その手には俺が作った異世界TE○GAを持って……。


「つ、使うの?」

「はい。激しくお願いします」


 こ、これは予想外の展開になったぞ。

 前回シャニにコンニャクを使ったことがあるが、ベッドが大変なことになったのを覚えている。

 

 しかしここでシャニの期待を裏切ることはすまい。

 それでは!

 俺のダムダム弾をシャニの格納庫に挿入!

 さらに! ローションをたっぷり塗った異世界TE○GAをシャニのあそこに!


 挿・入!


「~~~~~っ!?」


 やっぱりベッドが大変なことになるのであった。


 その後気絶したシャニをおんぶして自宅に到着。

 もうすっかり夜になっていた。


 彼女が目を覚ましてからみんなで一緒に風呂に入ったり、夜遅くまでおしゃべりをしたりと 楽しい時間を過ごす。


 そして……。


 異形の尾行作戦実行の日がとうとうやってきた。

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