第96話 オリハルコンの壁

「あん……。うう……」


 朝を迎えたというのにシャニはベッドの中でビクビクと痙攣している。アヘ顔で。

 昨夜村民満足度が上がった原因として村民にコンニャク◯◯ホをプレゼントしたことを伝えたのだ。

 そしたらシャニも使いたいと言い始めてしまった。

 彼女には俺と同じものが付いているので、後ろから可愛がりつつ、シャニのデリンジャーをコンニャクに入れてみた。

 なんかシャニから聞いたことがない声がして今に至るということだ。


 まさか二日間で村民満足度が上がるとは。

 まあ一回は防御力皆無のコンニャクの壁だからな。実質一回のレベルアップということだろう。


 そして俺は大規模襲撃スタンピード一週間前にオリハルコンの壁なるものを手に入れた。

 ギリギリセーフだった……。

 っていうか村民満足度を上げるのにめっちゃ苦労したのに、まさかコンニャクオ◯◯でレベルアップするとは。

 なんなんだ、うちの村民達は。


 とりあえずシャニを起こさないと。


「だ、大丈夫か?」

「はっ? おはようございます」


 昨日は乱れに乱れたが、起きたらいつもの無表情に戻る。

 これがシャニのデフォだからか。少し安心したよ。

 ベッドを出る前にシャニはもう一度コンニャクを使いたいと言ってきたが、多分気絶するので止めておいた。


「残念です。ならば4日後を楽しみにしてます」

「気に入ったのね……。ほら、そろそろ起きてくれ。新しい壁を建ててみないとな」


「新しい壁ですか? いつの間に?」

「まぁいいじゃない。それに俺自身も新しい力を手に入れたみたいだからな。試して……いや、やっぱりそれは止めとく」


 確か感度調整・改だったよな。

 悪い予感しかしないので今は使う必要は無いだろ。


 寝室を出るとリディア達が心配そうな目をしていた。


「シャニ、大丈夫だったの?」

「悲鳴が聞こえてきましたけど」

「問題ありません。むしろ新しい扉を開いてしまったようです」


 シャニはみんなに昨日のプレイについて事細かく話す。朝からエロいことを言うんじゃないよ。


「シャニには伝えたんだが昨夜新しい壁を手に入れた。今日はその壁をテストしよう。みんな、悪いけど手伝ってくれ」


 多分鉄壁よりは硬いだろうけどね。

 でも大規模襲撃スタンピードは一週間後に迫っている。

 新しい壁とはいえ楽観は出来ないからな。


 外に出ると相変わらずの雨だ。地面もかなりぬかるんでいる。

 これでは壁の防御力はかなり落ちることになるだろう。


「ねぇライト。新しい壁ってどんな素材なの?」

「んー。オリハルコンって言ってたかな。リリは知ってるか?」


「ううん、聞いたことがないわね。ライトの世界の素材なの?」


 博識なリリですら知らないとは。

 オリハルコンってのはファンタジーでは良く聞く名前だよな。

 地球ではアトランティス大陸で作られた金属とかだったような気がする。

 

「俺も詳しくは知らないけどさ。とりあえず鉄よりは硬い金属のはずだ。これからオリハルコンの防御力を確かめる」


 家から槍を持ってきた。もちろん穂先の素材はダマスカス鋼だ。

 実験にはアーニャに付き合ってもらう。

 彼女の力は村民の中でも一番強いからな。


 雨に打たれながら外壁の一部に向かって……。


【壁っ】


 ――ズゴゴゴッ


 鉄壁の一部がオリハルコンに変わる。

 一先ずはこれで試してみよう。


「アーニャ、槍で壁を突いてみてくれ」

「は、はい」

 

 ダマスカス鋼ならば鉄すらバターのように斬れるからな。

 オリハルコンの壁が鉄壁並みの防御力ならば異形の襲撃に耐えられないかもしれない。

 だとしたら次の手を考えなければならない。

 

「いきます!」


 アーニャは槍を構えてから鋭い一撃を放つ!


 ――ガッ! パキィンッ


「わわっ!?」

「アーニャ! 大丈夫か!?」


 しりもちをついたアーニャを抱き起こす。

 彼女の手には穂先を失った槍が握られていた。

 おぉ、オリハルコンの壁は槍を弾いただけではなく穂先が砕けるとは。

 すごい防御力だな。これで異形の襲撃に備えられるな。

 

 よし、村を覆う壁をオリハルコンに置き換えよう。

 そうすれば一週間後の大規模襲撃スタンピードに耐えられるはずだ。


「みんなありがとな。俺は今から壁を……」

「ちょっと待って! そのオリハルコンってもしかして!?」


 ん? リリが焦った顔で新しい壁に駆け寄ってくる。

 真剣な様子で壁を調べ始めたぞ。


「や、やっぱりこれってアウリカルクムだよ……」

「アウリカルクム? オリハルコンじゃないの?」


「それはライトの世界の名前でしょ? 私達の世界では金の性質を持ちながらダマスカス鋼より硬く魔力を高める性質をも持ち合わせている伝説の金属……。私が探してたものだよ! これがマナブレイカーの最後の材料になるの!」


 マナブレイカー? そういえば対異形の最終兵器だっけ?

 たしか未完成だって言ってたよな。

 聞いた話だと異形が動くための魔力だかを破壊して動けなくするとかなんとか。

 その最後の材料がオリハルコンだっていうの?


「ライト! 私はマナブレイカーを作るから! オリハルコンをちょうだい!」

「あ、あぁ」


 すごい剣幕だな。

 シャニは無表情だが尻尾を激しく動かしている。

 二人は異形を仇にしてたからな。特に嬉しいんだろう。

 とりあえず小さめな壁を建て根元を消しておく。

 そうするだけでオリハルコンの板が完成ってわけだ。

 

「ライト殿、私もそれなりではありますがマナブレイカーについての知識があります。しばらくリリと一緒に作成に取りかかります」

「シャニねえ、ありがと! それじゃ楽しみにしててね!」


 シャニはオリハルコンの板を担いで兵器廠に向かっていった。


「まさかオリハルコンが材料になるなんてな」

「ふふ、でもこれで異形を倒せるかもしれませんね」

「異形がいない世界……。ぐすん、やっと平和が訪れるんですね」


 アーニャは感極まったのか涙を流す。

 こら、まだ早いって。

 泣くのは全てが終わってからだぞ。


「ほら、今から壁を建て替えないと。大規模襲撃スタンピードは一週間後だぞ! 今から気合い入れていこうぜ!」

「はい!」「はーい!」


 雨は冷たいが、リディアとアーニャの熱い声援を受け、ラベレ村の壁を建て替える。

 夕方にまでかかったが全ての壁がオリハルコンに替わった。


 異形め、いつでもかかってこい。

 最強の壁でお前らを歓迎してやるよ。



◇◆◇



☆次のスタンピード大規模襲撃まで残り7日。


☆総配偶者満足度:49853/1000000

リディア:12050/1000000

アーニャ:11596/1000000

シャニ:13209/1000000

リリ:12998/1000000


☆総村民満足:25908/10000000

・総村民数:1032人


☆現在のラベレ村

・オリハルコンの壁

・敷地面積:60000㎡

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