第94話 新しい壁?

 今日は久しぶりに森に来ている。

 もちろん一人歩きは許されずボディーガードとしてアーニャが同伴してくれてるけど。


「うふふ、こうして二人で出歩くのは久しぶりですね」

「だな。デートみたいで楽しいけどこの雨じゃなぁ」


 雨は止むことはなく、昨日よりも強く降り続けている。

 大規模襲撃スタンピードが来るまで後10日も無い。

 それまでに村民満足度を上げ、新しい壁をゲットせねば。

 

 でも次の壁ってどんな素材なんだろうな。

 木から始まり竹、石と続き鉄となった。

 

「アーニャは次の壁って何だと思う?」

「んー、分かりません。でもライト様の壁ですから。きっと鉄より何倍も硬い壁になりますよ」


 だといいんけど。とりあえず壁はグレードアップする度に硬度は増しているみたいだし、期待してもいいだろうな。

 もしかしてファンタジーの金属の壁とか出てきたりして。

 アダマンタイトの壁とかさ。


 そんな話をしながら森を進む。今日の目的は米を見つけることだ。

 より遠くに探しに行くため、アーニャの背中に乗せてもらうことにした。


「いつも悪いね」

「ふふ、いいんですよ。この足ですから悪路には強いんです」


 アーニャの背中に乗るのは久しぶりだ。

 初めて彼女に乗せてもらった時は気持ちいいところに当たっちゃってさ。

 懐かしい思い出だ。


「もう、言わないで下さい。恥ずかしいです」


 アーニャは顔を赤くしつつ、シュルシュルと蛇の尾を這わせ森を進む。

 うわっ、やっぱり速いな。顔に当たる雨粒が痛く感じるよ。

 

「あれ? ライト様、あそこに……」


 突然アーニャは立ち止まる。

 そして彼女が指し示す先には森が開けた場所があり、泉が湧いていた。

 その畔には見慣れた植物が青々と繁っているではないか!

 もしかして米かもしれん!

 

 やはり俺も日本人なんだな。

 思いっきりテンションが上がってしまう。

 先ほど見つけた植物は稲穂らしき実がなっている。


「これって米だと思う?」

「多分……。でも穀物には違いありません! 持って帰りましょう!」


 そうだな。もし米じゃなくても新しい食べ物を村で栽培出来ることになるし。

 俺達は一房だけ根っ子ごと持って帰ることにした。

 結構あっさり目的を達成出来たな。

 

「そうでもありませんよ。ずっと探して見つかりませんでしたし。やっぱり私達がかなり森の奥まで探索出来るようになったおかげです」


 なるほど。アーニャの言う通りかも。

 多分森の入り口からここまで50㎞はあるだろうし。

 湖の畔に村を移動させたことで行動半径も広がったってことだよな。

 それに遭難者も見つけやすくなったし。


「それじゃ一度戻ろうか」

「はい! では乗って下さい!」


 俺は再びアーニャの背に乗って村に戻る。

 時間があったので、そのまま畑に稲らしき植物を植えてみることにした。

 

「米でありますように……」


 祈りつつ稲っぽい植物を植える。

 俺の力である敷地内成長促進があれば明日には収穫出来る。

 

 ――チラッ


 ん? 視線を感じるな。

 畑仕事をしていた村民が期待を込めた目で俺達を見ていた。

 きっと米を見つけてきたって思ってるんだろうな。

 これが米じゃなくて粟と稗でもがっかりしないでくれよ。

 村民満足度ってストレスを感じたりするとあっさり下がるからな。

 過度な期待はしないで欲しい。


 アーニャと二人で家に戻るが、みんなまだ戻っていないようだ。

 この後、特にやることはないのでアーニャとごはんを作ることにした。


 調理をしながら他愛も無い話をする。

 そういえばシャニは卵かけごはんが好きだって言ってたな。


「ねえアーニャさん?」

「なんでしょうか?」


「夜はいつも米を食べてたんだろ。アーニャはどんな米料理が好きなの?」

「ふふ、私は混ぜごはんが大好きなんです。季節の山菜とかキノコをごはんと一緒に炊くとすごく美味しいんですよ!」


 ほうほう、アーニャは混ぜごはんが好きなのか。

 納豆とかキムチなどごはんに合うおかずの話をしたらテンションが上がってしまった。

 アーニャも興味深そうに聞いてたな。

 そのうち作ってみることにするか。



◇◆◇


 翌日、俺達が手に入れた植物の様子を見に行くため畑に向かう。

 そして今日も相変わらず雨が降っていた。

 これはしばらく止みそうにないな。

 

 畑に向かうにつれ、村民達の数が増えてきた。

 俺達が米らしき植物を入手したことが広まったのだろう。

 みんな嬉しそうな顔をしていた。きっとみんな米が好きなんだろうな。


「ごめんなー。通るよー」

「わわっ、押さないで下さい」


 野次馬を押し退け、なんとか畑に到着。

 すると目の前には重たそうに頭を垂れる稲穂がわんさかと繁っていた。

 やはり昨日植えたのは米で間違いなかったか。


「アーニャ、みんなに伝えてくれ。もうすぐ米が食べられるってな」

「はい!」


 アーニャは元気良く村民達に米をゲットしたことを伝えてくれた。

 そして次の瞬間!


「「「Arrrrray !」」」


 ――パチパチパチパチッ!


 謎の雄叫びと共に割れんばかりの拍手が!

 ははは、みんな待ちわびてたもんな。

 これからは腹一杯白いごはんが食べられるからな。

 

 しかし1000人以上の村民がいるからなぁ。

 全員に行き渡るためには村を広くしなければ。

 とりあえず今は種籾を増やすことにしよう。


 ――ピコーンッ


 おぉ、いつもの音が響く。これはとうとう来たか!?


【村民満足度が上限に達しました。成長ボーナスとしてコンニャクの壁がアンロックされます】


 よし! 新しい壁だ……けど、あれ?

 もしかして聞き間違えかな?

 ねぇ、天の声さん。悪いけどもう一回言ってもらえないかな?


【コンニャクの壁がアンロックされました】


 んん? コンニャク?

 コンニャクってあのコンニャク?


【田楽にすると美味しいです】


 だよね。俺もおでんのコンニャクは大好きだよ。

 って違うだろ! なんでコンニャクなんだよ!

 なんで鉄壁の次がコンニャクなの!? グレード下がってんじゃん!


 い、いかん。狼狽えてしまったぜ。

 例えコンニャクと言えど鉄壁より強い防御力を持っているかもしれん。

 一度試してみるか!


 俺は地面を指差して!


【壁!】


 ――プルルンッ


 何この柔らかそうな音は。

 地面からは幅1メートル、厚さ30センチ位のコンニャクが現れた。


「Urrrry!」

「そ、それが新しい壁なんですね!」


 村民とアーニャは俺の壁を見て喜んでるんだけど……。

 

「う、うん。一応だけど新しい壁が出来たみたい」

「硬いんですか!?」


「いや……。美味しいとは思うが……」

「えぇ……? 美味しいって……」


 仕方ないので適当に切り分けてから味噌を付けて食べることにした。

 美味しかった。



◇◆◇



☆次のスタンピード大規模襲撃まで残り8日。


☆総配偶者満足度:419694/1000000

リディア:108525/1000000

アーニャ:110052/1000000

シャニ:98521/1000000

リリ:102596/1000000


☆総村民満足:0/1000000

・総村民数:1008人


☆現在のラベレ村

・鉄壁

・敷地面積:60000㎡

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