第58話 シャニ☆

「き、君! 俺の言葉が分かるのか! 良かったー! 君で三人目だ! 君、名前は!?」

「え? シ、シャニです」


 俺は今遭難者を保護してる小屋に来ている。 

 なんでも犬人の女の子が目覚めたって聞いてね。

 シャニっていうのか。可愛い名前だな。

 それにしてもまさか言葉が分かるとは思わなかった。

 っていうか本当にリディア達と言葉が通じない村民の差って何なんだろうな。

 しかし俺の言葉が分かる村民が増えたことは嬉しいぞ。


「あ、あの……。ちょっと手が痛くて。離してくれると助かります……」

「ご、ごめん」


 つい興奮してシャニの手を握っていた。

 犬耳をペタンと伏せている。

 警戒してる時の仕草だな。


 それにしてもシャニは俺が想像してた獣人そのものだ。

 大きな犬耳がついているが、顔は人間と変わらない。 

 もしかして尻尾もあるのかな?

 機会があったら見せてもらおう。

 あ、そうだ。長年疑問に思っていたことがある。

 せっかくなので聞いてみよう。


「ねぇシャニ?」

「何でしょうか」


「君は獣じ……いやコボルトだよね」

「そうですが」


「俺の耳がある位置ってどうなってるの?」

「ぷっ……。うふふ」


 笑われてしまった。

 

「ふふ。おかしなことを聞くんですね。見ますか?」

「是非!」


 ほら、獣人って頭の天辺に耳があるじゃん?

 人間の耳がある位置がどうなっているのか気になっていたんだ。

 俺が想像するのは人間のような耳が無くて髪の毛が生えてる感じなのだが。


 なんてことを思っているとシャニは長い髪をかきあげる。

 ん? 普通の耳がついてるぞ。

 

「貴方と変わりませんよ」

「だねぇ。それじゃ耳が4つあるってこと?」


「上の耳は音が聞こえません。飾りみたいなものです」

「へぇー。そうだったのか。他のコボルトもそうなの?」


「いいえ。私だけ……いえ、亜種だけの特徴ですね」


 しまった。そういえばシャニは亜種といってかなり珍しい存在だったな。

 この世界の獣人のほとんどが直立歩行の犬や猫のことを指す。

 しかし希にだがシャニのように獣の特徴が薄い獣人が産まれてくるそうだ。


 まぁ日本人の俺にとってはシャニのような獣人に親しみがあるな。

 まず可愛いし。


「ライト様。鼻の下が伸びてますよ」

「そうですよ。エッチな顔してます」

「そ、そんなことはないぞ」


 見抜かれてしまったか。

 仕方ないじゃない。シャニはかなりの美人だ。

 少しカールしてる茶色い長い髪。ブチのような斑点があるのがキュートだ。

 胸はアーニャより少し小さいかな? 

 しかし綺麗な形をしている。

 犬の獣人なのだろうが、その体は猫のようにしなやかだ。


「シャニっていうんだね。私はリディア。よろしくね」

「アーニャです。困ったことがあったらいつでも尋ねてくださいね」


 と二人は自己紹介をする。

 どうやらシャニはあまり感情を出さないタイプだな。

 同年代に見えるが、三人の中で一番年上に見えなくもない。


「シャニも疲れてるだろ。今日はゆっくりしてな。村のことは明日説明するよ」

「はい」   


 シャニを置いて小屋を出る。

 三人で自宅に戻ることにした。 

 その道中で話題になったのはやはりシャニのことだ。


 気になるのはやはり言葉が通じること。

 そして彼女のステータスだ。


「シャニなんだがかなり強いぞ」

「え? ステータスを見たんですか?」

「もう、ライトさんのエッチ」


 ステータスを見るのがエッチなことなのだろうか? 

 なんか納得いかんぞ。

 まぁいい。自分がエッチなのは理解してるからな。


 自宅に戻りシャニのステータスを二人に見せる。

 プライバシーの侵害とかは言わないで欲しい。

 比較対象としてリディアのステータスも書いておいた。



名前:シャニ

年齢:???

種族:コボルト(亜種)

力:80 魔力:25

能力:隠密

村民満足度:1/10000



名前:リディア

年齢:???

種族:エルフ

力:70(+20) 魔力:110(+30)

能力:弓術 精霊魔法(敷地内限定)

配偶者満足度:2480/100000



「強いですねぇ」

「だろ? 素のステータスでここまで高い人は初めてだよ」


 ここにいる村民の平均的なステータスだが力という項目は種族によって差はあるが20から40の間といったところだ。

 しかしシャニはその倍以上の力を持っている。

 一体どんな仕事をしていたのだろうか?

 

 まぁ、深く詮索するつもりはないさ。

 そのうち自分の口から話してくれるだろ。

 

「もしかしたら格闘家だったりして」

「格闘家ってなんですか?」


 とアーニャは聞いてくる。

 俺は日本で有名な格闘家について二人に話すことにした。

 二人は興味深そうに俺の話を聞いてくれた。

 つい熱が入ってしまい、こんなことも言ってしまう。


「とある格闘家はな。ゴキブリの動きを真似て初速270キロのタックルをかましてだな」

「その父親は山のように大きい動物を体一つで倒してだな」

「究極の打撃はリラックスから産まれるんだ。良い筋肉ってのは柔らかいんだぞ。リディアのおっぱいみたいに」

「ライトさんのエッチ」

「ぷっ」


 あれ? 今リディア達じゃない笑い声が聞こえたんだけど。まあいいか。

 なんてことを話していると、いつの間にか【シャニ、グラップラー説】が産まれてしまった。

 風評被害も甚だしいな。


「でも強い人が味方になってくれるのは嬉しいですね」

「だね。大規模な襲撃は半年先までないけどさ。今のうちに戦力を整えておくべきだろうし」


 二つの月が同時に満月になると異形は格段に強くなる。

 前回は煮え湯を飲まされたが、もうあんな失態を犯すつもりはない。


 ――ガタッ


 突然アーニャが席を立つ。


「時間ですね。夕食の準備に行ってきます」

「そうだったね。ライトさん、後で一緒に食べましょうね」

「あれ? 二人共仕事は探索じゃなかったっけ?」


 先日決めた割り当てでは二人共、俺と一緒に森を探索するのが仕事だった。

 調理は製造の仕事だけど。


「大変な仕事ですから。時間がある時は手伝おうって決めたんです」


 いい子達だなぁ。彼氏として鼻が高いぞ。

 確かに自由時間には何をしてもいいって決めたしな。 

 遊んでも良し、仕事をしても良しってね。


 二人が出掛けてしまったので、俺も自分にしか出来ないことをするか。

 俺にしか出来ないこと。それは風呂を沸かすことだ。

 水の中で石壁を擦り合わせ、その摩擦熱を利用して湯を沸かす。

 慣れたもので今では10分で水がお湯に変わるのだ。


 ――チラッ


 ん? 視線を感じるな。

 後ろを振り向くとこっちを見ている者がいる。

 誰だか分からんが物陰に隠れた誰かさんに声をかけた。

 

「風呂なら沸いたよ。好きな時に入ってなー」


 村民は言葉が通じないが声のトーンや表情で理解してくれる。

 きっと伝わっただろ。


 特に誰が覗いているかは気にせずに自宅に戻ることにした。



◇◆◇



 そして夕食を食べてからいつものように異形が現れる。


 リディアは櫓の上から矢を放つ!


「はっ!」


 ――ドシュッ!


『ウルルォォイッ……』


 ビュリホー!

 的確に異形の額を撃ち抜いていく!


「せいっ!」

『ウバァァッ……』


 ――ザクッ!


 アーニャも見事なものだ。

 敷地内からとはいえ見事な槍さばきで異形を貫く。

 満月が終わり新月に向かっているので異形の数は少なかった。

 今夜の襲撃はあっさり終わったな。


 ――チラッ


 むむ? また視線か。

 全く誰なんだか。

 俺みたいなおっさんを覗いても面白くもないだろうに。


「よし、今日の仕事は終わったな。それじゃそろそろ寝るかね」

「ふふ、まだ仕事は終わってませんよ」

「そうです。むしろ今からが本番ですから」


 とエロい二人に捕まってしまった。

 自宅に戻るや否や、二人にベッドに引き込まれてしまう。


「今夜は絶対に負けませんから!」

「ライト様! お覚悟を!」


 戦いじゃないんだから。

 しかし挑まれた勝負には全力で立ち向かう!

 それが大和男子なのだ!

 むしろ好きだから負かしてやるぅ!


 攻勢に出た二人。リディアとアーニャの巧みなCQCを前に俺のネイキッド・ス◯ークは涙を流しつつある。

 くっ!? いつの間にそんなテクを!?


 しかし俺は諦めない。優勢だった二人だが、次第と戦況は変わっていく。


「ま、負けちゃうぅ……」

「リ、リディアさん。私も駄目ぇ……」


 すまんな、二人とも。やはり勝つのは俺だ。

 この力を使うまでもないのだが、止めの一撃として発動する。


(感動調整をアクティブに。2倍に設定)

【受付完了】


 そして聞こえてくるリディア達の啼き声。


「はひぃぃぃんっ……」

「んひぃぃぃっ……」


 勝った……。

 そして今日も毛布が濡れることになった。 

 俺の体もびっしょりだ。

 うーん、その気はないのだが、最近よく出すな、この子達。

 何を出したのかは秘密だ!


「動ける? 風呂に行かないか?」

「無理ですぅ……」

「きゅうっ……」


 アーニャに至っては返事も無い。 

 気絶するように眠ってしまった。


 仕方ないので一人で風呂に向かう。

 しかし気になるな。

 イチャイチャしてる最中も誰かの視線を感じた。

 別に見ても減るもんじゃないけど、さすがにねぇ。

 次覗いてたら注意しなくちゃな。


 なんてことを考えていたら風呂に着く。

 この時間だし誰もいないだろ。

 月明かりの下、脱衣場に向かう。


 ――バタンッ


「き、きゃあ!」


 んん!? 誰かいたの!?

 そこにいたのは女だった。

 大きな獣耳、引き締まった体。

 形の良い胸。ブチがついている髪。

 シャニだ。だがその股間にはなんか見慣れたものがついている。

 それが元気良く上を向いているではないか。


「ご、ごめん!」


 俺は急ぎ扉を閉める!

 しまった、ここは女性専用の脱衣場だったか。

 いや違うぞ。♂マークが壁に書いてあるし。

 しかしシャニにはまだルールを話してなかったか。

 知らずに男性用の脱衣場に入ってしまったのだろう。

 異世界人のシャニが♂マークを知るはずもないしな。


 仕方ないので外で服を脱いでから風呂に入る。

 そして先ほど見た光景を思い出した。


「やっぱりついてたよなぁ」

 

 そう、シャニの股間には俺と同じものがついていた。

 しかも勃ってたし。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



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