第56話 仕事の割り振り

 ――ピコーンッ


【遭難者が一定時間拠点内に滞在しました。遭難者を村民にしますか?】


 ベッドでリディア達とイチャイチャしていると、いつもの天の声が。

 俺はYESと念じ、晴れて犬人達は村民になったわけだ。

 まぁまだ寝てるだろうし、無理に起こして話を聞くわけにはいかんだろ。


 まだ昼を過ぎたくらいだ。まだまだやらなくてはいけないことがある。

 

「よし、ちょっとお出かけするか」

「ふふ、デートのお誘いですか?」


 近くに美味しいカフェでもあったらいいんだけどね。

 残念ながらここは文明の滅びた世界だ。

 平原には背の丈くらいの草しか生えてないし、近くには俺達を殺そうとする異形がいるし。

 今思うと結構とんでもない世界に転移しちゃったんだな。


「違うよ。仕事さ。やることが増えたからね。俺達とデュパで相談しよう」

「はい! で、でもいつの間に私がラミア代表みたいなことになってますが、いいのでしょうか?」


 いいんじゃない? 村民の中で言葉が通じるのはリディアとアーニャだけだし。

 しかしデュパの言葉は分かるんだよなぁ。

 もしかしたら異形に襲われたことが関係しているのかも。

 

 リディア達はかつて異形に襲われ自我を失った。

 ここにいるエルフ、ラミアは全員そうだ。

 だがデュパ達は森で隠れるように住んでいて、異形に襲われることはあってもすぐに湖の中に逃げて難を逃れ続けてきた。


 他にも理由があるのかもしれんが、とりあえず俺の言葉を村民に伝えられるのはリディア、アーニャ、そしてデュパしかいない。

 だったらその三人が各種族代表になったほうが都合いいんじゃないかな?


「気にすることはないよ。アーニャはしっかりやってるし、村民もリーダーとして認めてるように見えるよ」

「そ、そうですか?」


 俺の言葉を聞いてアーニャは笑顔になる。

 彼女は自分に自信が無いところがあるからな。

 

 三人でリザードマンが住む溜め池付近の小屋に向かう。

 みんな蜥蜴顔なので見分けがつかんなぁ。

 でもデュパはリザードマンの中で一際大きな体をしている。

 だから分かるんだよね。


 小屋の中を覗くと子供のリザードマン達がコロコロと床に転がって遊んでいた。

 うーん、可愛い。蜥蜴でも子供は癒されるなぁ。


 俺の視線に気付いた子供と目が合った。


「クルルルッ。父ちゃん?」

「あぁ。デュパはいるかな?」


「あっち」


 と子供は外に出て溜め池を指差す。

 養殖の仕事はデュパ達リザードマンの担当だからな。

 子供に礼を言って溜め池に向かうとデュパは池に入って魚のチェックや無駄に増えた水草をむしっていた。


「頑張ってるな」

「グルルルッ。ライトか。どうした?」


「すまん、少し話したいことがあるんだがいいか?」

「行こう」


 デュパは溜め池から出て、自宅に招いてくれた。

 さっき遊んでいたデュパの子供は父親に遊んで欲しいのか、甘えた声でクルクルと鳴く。


「後でな。いい子にしているのだぞ」

「うん」


 息子は素直にデュパの言うことを聞いて二階に上がっていった。

 デュパは干し草と竹で編んだ座布団を用意してくれる。


「いい座布団だな」

「あぁ。エルフの職人からもらったものだ。いい仕事をしている」

 

 なるほど、リディアの次に助けたエルフのラルクのことだな。

 エルフだけではなく村民達は指示が無い時は協力して仕事をしている。

 矢を作ったり、狩りをしたり。 

 他にも空いた時間を使って王都でしていた家具作りや洋裁、調理など分担して行っている。


「そこでだな。今はざっくり仕事の分担を決めている状態だ。だがこれからもっと人が増える。ならどの仕事に、誰が、何人必要か、それぞれ決めていかないとって思ってね」


 今まで特にルールなんかは決めてなかったからな。

 あったとしてもざっくりしたものだ。

 なので仕事の割り当てと一日のスケジュールが必要になるだろう。

 ルールがあると秩序が産まれる。決まりがなく人が増えていけば余計な混乱を招くかもしれない。


「そうですね。確かに王都にも法律はありましたし」

「だよね。今はみんな仲良く暮らしてるけど、人が増えたらまとめきれないことも出てくるだろうし」

「グルルルッ。賛成だ。一族の中でも掟はあったからな」


 掟や法律ってほど仰々しいものじゃなくていいんだけどね。

 みんな俺の考えに賛成だったようで、割り振りやスケジュール管理はすぐに決まった。


☆総村民数44人。各仕事の人員配置。

・農業:二割の村民に担当してもらう。雑草の除去、作物の収穫が主な仕事。

・狩猟:一割の村民に担当してもらう。肉はまだ生産出来ないので狩りは継続。

・服飾:一割の村民に担当してもらう。狩りで得た毛皮を服、寝具に加工。

・製造:三割の村民に担当してもらう。食事作り、竹を使った生活用品や家具の生産、武器の生産も含む。

・探索:一割の村民に担当してもらう。森を探索し遭難者を見つける。他に村にとって有効な動植物がいたら取得、または報告してもらう。

・村の整備:一割の村民に担当してもらう。壁の痛み、櫓の補修を見つけ修繕、または報告してもらう。

・養殖などその種族にしか任せられない仕事は要相談。


☆一日の流れ。

・起床:7時。製造に携わる村民は1時間前に起きて朝食を作る。

・仕事開始:8時。割り当てられた仕事をこなす。

・休憩:12時。昼休みも兼ねて13時まで。

・午後の仕事:13時から15時まで。

・自由時間:15時から18時。休んでも良し。仕事をしても良し。各々自由に過ごして良い。ただし村の外には出ないこと。

・異形対策:月が昇る時間は日によって変わるが大体19時から。異形を撃退するまで続く。戦える村民は全て参加すること。

・就寝:こちらも日によって変わる。異形を撃退出来た時間次第。明日も早いのでさっさと寝ること。


「うーん、我ながらざっくりだな」

「ふふ、いいんじゃないですか。これがラベレ村の法律ですね」

 

「法律ってほどのものじゃないだろ。まぁみんながこれを守れば動きやすくなるんじゃないかな」

「ねぇライトさん。ちょっと聞いてもいいですか?」


 とリディア。どうしたのかな?


「あのですね。製造に三割も配置する理由が分からなくて」

「それね。やっぱりこの村を守るには武器が必要だろ。それに食事だって製造担当の仕事だ。一番大変な仕事だからね。だから一番多く人員を配置する必要があるのさ」


 まぁ、人がもっと増えたら製造を調理、武器製造、家具なんかに分けるのもいいかな。

 人の少ない今はこれで対応しよう。

 

「細かいところは後で変えることになるだろ。今はこれで運営してもらおう。もし村民に不満があるならすぐに教えてくれよ」

「はい!」

「かしこまりました!」

「グルルルッ! 任せておけ!」


 ははは、みんな気合いが入ってるな。

 そうそう、これは言ってなかったな。


「盛り上がってるところ悪いがもう一つだけ。あのさ、異形の襲撃は毎日ある。だが月に一回異形が来ない日があるだろ?」


 新月の夜だ。その日だけは絶対に異形の襲撃がない。


「グルルルッ。それが何だというのだ?」

「分からないか。月に一回だけだが安心して夜を迎えられるってわけだ。だから新月の一日は何もするな! 自由だ! 好き勝手にしていいぞ!」

「お休み!? 何をしてもいいんですか!?」

「楽しみです! ふふ、今から何をするか考えなくっちゃ!」


 全員で休める貴重な日だ。

 その日ぐらいぐーたらしてもいいよな?

 こうしてラベレ村のルールと安息日が決まった。



◇◆◇



総配偶者満足度:8524/100000

リディア:4319/100000

アーニャ:4205/100000


☆総村民数44人

・エルフ:13人

・ラミア:8人

・コボルト:3人

・リザードマン:20人


☆総村民満足:1069/10000


☆現在のラベレ村

・石壁

・敷地面積:5000㎡


☆設備

・家屋:10棟

・倉庫:2棟

・櫓:4基

・畑:1000㎡

・露天風呂:2つ

・水路

・養殖場:運用開始

・金剛石の矢

・金剛石の槍


☆生産品

・ナババ:パンの原料。

・ミンゴ:果物。

・ヤマイモ:生食可。ねっとりしてる。

・茶葉:薬の原料。嗜好品としても優秀。

・カエデ:樹液が貴重な甘味となる。

・豆:保存がきく。大豆に近い。

・キャ采:葉野菜。鍋にいれたい味。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



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