第55話 亜種 リディアとアーニャの気持ち
「うぅ。アーニャ、動ける?」
「は、はい。何とか」
二人はベッドの上にいる。
来人に愛していると初めて言われた彼女達はテンションが上がってしまい、我を忘れて来人を求め続けた。
求めて止まなかった愛の言葉。それは甘美な響きであり、二人は夢中になってしまった。
もちろん体を重ねることは以前から毎日のようにしていた。
だがそれとこれは話が別だ。
来人の口から聞けたことで本当の恋人になれたのだと二人は思った。
しかし24時間以上抱き合っている。ちょっと長過ぎである。
来人は村で責任者のような役割があるし、なによりトイレに行きたかった。
なのでベッドから出ようとする。
行かせてなるものか。もっと私達を可愛がって欲しい。
トイレなんか行かないで。むしろ私達が飲んであげるから。
そんな想いで二人は来人を再びベッドに引き込んだ。
その時である。
来人は能力を発動し、二人の気持ち良くなっちゃう場所に手を伸ばす。
二人の体に電撃が走る。
ボクサーが顎に打撃を受けると全身に蟻が這い回るような感覚に陥ると聞く。それに似たような感覚であった。
なんか愚○独歩がそんなことを言ってた気がする。
ビリビリとした快感が!
これまでの人生で感じたことの無い快楽の波が!
今までで一番の快感が二人を襲う!
『んひぃぃぃんっ!?』
『あひぃぃぃんっ!?』
二人はこれまで出した事の無い声を出し!
他にも色々と出ちゃったようだ!
何が出たのかは秘密だ!
そしてようやく来人は二人の拘束から逃れることが出来たわけだ。
二人はのそのそと起き出し愛する来人のために昼食を作り始める。
先ほどの和合の内容について話をしながらだが。
「凄かったです……。あれがライト様の本気なのですね……」
「違うわ、アーニャ。まだ本気じゃないはずよ」
来人が発動した感度調整だが3倍に設定しただけだ。
そう、3倍であの快感だったのだ。
(確かライト様は3000倍まで気持ち良くしてくれるんですよね。でも3000倍って……)
(怖い……。でも試して欲しいかも……)
止めとけ。
まじで死ぬぞ。
だがこのエロいエルフとラミアは興味津々であった。
お互いお股が熱くなるのを感じていた。
その後も猥談を交えつつ美味しそうな料理は出来上がる。
「ふふ、アーニャもとうとうお尻に……」
「あれは衝撃的でした……」
「ライト様のって何であんなに美味しいんでしょう?」
「うん。そうだよね。ずっと口に入れてたいよね」
「リディアさんはいいですよねー。私も前を向き合ってしたいなー」
「そう? でも私はアーニャが羨ましいよ。私の時より優しくしてるように見えるもん」
昼間からする話じゃないだろ。
だが古今東西、世界が違えどみんなエロい話は大好きなようだ。
その時である。
――ズズンッ
「わっ。揺れてますね」
「地震かな? 珍しいね」
二人は地面が揺れるのを感じた。
この時来人は新しい能力であるXY軸移動を発動したのだ。
「そうだ! ライトさんが帰ってきたら地震が怖かったって甘えちゃお!」
「リディアさん、さすがです!」
あざとい! あざといぞ! リディア!
だがアーニャはリディアの提案を疑いもなく受け入れる。
(ふふ、やっぱりリディアさんはすごいですね)
なんてことをアーニャは思う。
彼女はリディアのことを尊敬しており、姉のように慕っていた。
竿姉妹だからなのかもしれない。
いやそれ以上だろう。
来人が喜ぶかもしれないと思い、たまにだが二人は来人を挑発するように自分達が絡み合う姿を見せたりもする。
百合である。特にその気はないのだが、その姿を見せると来人はいつもより深く二人を愛してくれる。
なので二人はベッドの上ではあんな百合やこんな百合を平気で出来るようになった。
「ふふ、リディアさんって本当にお姉さんみたいですね」
「そう? なら私はアーニャみたいな可愛い妹ができて嬉しいよ」
「なら私も妹が欲しいです」
「うふふ、その内増えるかもしれないわね」
「そうですね。ねえリディアさん。もしライト様がもう一人恋人を増やしたとしたらどう思いますか?」
「んー? そうね。アーニャみたいな子だったら考えてもいいかな?」
フラグかな?
「でもライト様ってなぜ私達のような者をあんなにも愛してくれるのでしょう」
この世界は独特の価値観を持つ。リディアは大きな胸を持つ。
Bでも巨乳と呼ばれてしまうエルフの間ではリディアの胸は爆乳どころか奇乳と呼ばれるものだろう。
小さな胸が美しい女性の象徴である。リディアはそのカテゴリーから真逆にいる女性であった。
アーニャも同じようなものだ。
ラミアの美の基準は背中にある。
それはラミアの生態によるものだ。ラミアは下半身が蛇であるが故に生殖行動を行う際は後背位でしか出来ない。
男性は必然的に背中を見ることになり、いつしか背中が美しい女性が最も美しく、アーニャのように背中に痣があるものは醜女とされていたのだ。
「ふふ、もしかしたらライト様はそっち専なのかもしれませんね」
そんなことはないぞアーニャ。
リディアもアーニャも地球基準ではミスユニバースクラスの美人なのだ。
「ただいまー。お? 二人とも起きてたんだな」
「お帰りなさい!」
「お帰りなさいませ! ごはんにしますか? それとも私にしますか? むしろ私にしませんか!?」
アーニャ、一回落ち着こうか。
朝は負けちゃった二人だが、愛する来人が帰ってきたことを喜ぶ。
「う、うん。アーニャは夜に食べようかな。今はごはんにしたいんだけど」
「ならデザートで私を食べてください!」
リディア、止めとけって。
暴走気味の二人を落ち着かせ、三人は遅めの昼食を摂る。
ちなみに今日のメニューはこんな感じだ。
・ナババのパン:ミンゴから作った酵母を入れたことでフックラモチモチしている。柔らかくて美味しい。
・魚料理:デュパがくれた魚。焼いた後、未熟なミンゴの汁に浸した。南蛮漬けみたいな味。美味い。
・豆のスープ:豆の他に根菜がたっぷり入っている。唐辛子のような辛い実が良いアクセントになっている。
・ミンゴのジュース:ラベレ村ではよく飲まれている。ミンゴの果汁に茶葉を刻んだものを混ぜている。甘味を抑えており、爽やかな風味。
多少痛いところがある二人だが、一般的な家事は他のものより出来ている。
それはどうせ結婚出来ないのだから、老後のために料理くらいは自分でと思っていたからだ。
もともと才能もあったのだろう。二人の料理の腕は王都の一流レストランでも通用するものだった。
「二人とも、すごく美味いよ」
「ふふ、嬉しいです」
二人は来人と美味しいごはんを食べ、幸せな時間を過ごす。
食事を終え、三人は少しだけイチャイチャしつつベッドの上でまったりと過ごすことに。
リディアは来人に抱っこされ。
アーニャは来人の膝枕で横になる。
来人はリディアの頬にキスをしたり、アーニャの髪を撫でたりしながら今日の出来事を話すことに。
「あのさ、実は今日新しい遭難者が来たんだ。犬人なんだが一人は女性で、しかも亜種みたいでね。リディア達は犬人の亜種って知ってる?」
二人は犬人の亜種と聞いて胸が痛む。
それは同情の想いからだった。
この世界の獣人は犬、猫そのままの顔に人の体がついているものを指す。
だが時々亜種が産まれるのだ。その顔はコボルトやカジートとはかけ離れたものだ。
ほとんど人族のような顔をしている。
そして亜種はその独特過ぎる容姿から同族内では毛嫌いされているのだ。
(亜種……。きっと今まで辛い想いをしてきたんだね……)
(かわいそう……。でももしかたら……)
二人は来人に甘えながらまだ見ぬ亜種の犬人について考えていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ここまで読んで頂き誠にありがとうございます!
お気に召しましたらご評価頂けると喜びます!
更新速度が上がるかも!? ☆☆☆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます