第45話 歓迎会と命名式

 夕方になり、ようやく皆が快適に住める家の建築が終わる。

 壁を発動しただけだが、さすがに10棟の家を作るのには時間がかかった。

 

「ふぅ、終わったな。それじゃデュパ達を呼んでこようか」

「うふふ、素敵なお家ですよね。きっと気に入ってくれますね」


 とリディアは笑う。

 そうだな。自分で作って何だが、結構いい家が出来たように思う。

 ん? そうだ、いいこと思い付いたぞ。


「悪いけどさ、デュパ達のことは頼んでもいいかな?」

「ん? いいですよ。何かやることでもあるんですか?」


 むふふ、それは秘密なのだ。

 適当な理由を言って、俺は一人自宅になるであろう小屋に向かう。

 他の住民達と同じ造りではあるが、ちょっと手を加えたくなったのだ。


 まずは収納だ。あまり服は無いがきっとこれから増えるだろう。

 壁を利用してタンスを作っておく。

 他にも壁に棚なんかを取り付けた。


 ふふ、なんか楽しいな。

 日本にいた時はDIYなんか興味が無かったが、自分の手で生活が改善していくのはとても楽しい。

 あまり時間が無いので家具は最低限のものを用意した。

 ここからが本番だ。

 一階には少し大きめのベッドを用意する。

 これも壁を利用し凹型の箱を作りひっくり返せばいい。

 簡単にベッドの枠が完成した。

 だがただのベッドではないぞ。

 基本的な骨組みは竹で出来ているのだ!


 竹はしなやかなだけではなく、丈夫で弾力性もある。

 多少激しいエッチをしても充分に耐えてくれることだろう!

 だってさ、たまにだが三人で盛り上がっちゃうこともあるしさ。

 

 そして二階は仕切りをつけ、リディアとアーニャの部屋にする。

 一人になりたい時だってあるかもしれないしな。

 プライベートな空間として活用してもらおう。


 こんな感じで自宅の改修を終える。

 ふふ、きっと二人は喜んでくれるだろうな。


 さてと、そろそろデュパのところに行かなくちゃ。

 みんながいるのは食堂付近だったな。

 食堂の前は大きめの広場として使っている。

 異形と戦う前、住民に指示を出す時などに利用しているのだ。

 

 広場に向かうと何やらいい香りがしてくる。

 アーニャとリディアがせっせと食堂から出たり入ったりしていた。


「忙しそうだね」

「ライトさん! 手伝って下さい~」

「ふふ、皆さんを歓迎しようと頑張っちゃいました!」


 どうやらリザードマンのために歓迎会を開くようだ。

 アーニャを筆頭に住民達も総出で調理、配膳なんかをしている。


「グルルルルッ。我らのために申し訳ない」

「ははは、気にすんなって。でもお客さんとして扱うのは今日が最後だ。明日からしっかり働いてもらうからな!」


 デュパは謝ってきたが、今日くらい盛り上がってもいいだろ。


 夕日が完全に沈み、辺りが暗闇に包まれる。

 だが広場の中央では大きな焚き火が赤々と燃え盛り、俺達は焚き火を囲んで座る。

 目の前には今までに比べ一番豪勢な料理が並んだ。

 みんな早く食べたいんだろうな。

 料理から目が離せないようだ。


「美味そうだね」

「はい! デュパさん達の口にあえば良いのですが」

「ふふ、大丈夫よ。私とアーニャが愛情を込めて作ったんだから!」


 と両隣に座る二人が言う。

 そうだな、それじゃ冷める前に頂くとしようか!

 俺は立ち上がり、住民達に声をかける!  


「これから新しい住民の歓迎会を行う! 幸い今夜は新月だ! 異形は襲ってこないだろう! だから今日は大いに楽しんでくれ! だが忘れるなよ! 明日からもっと頑張って働いてもらうからな!」


 言葉が通じない者もいるので、俺の言葉をリディアから伝えてもらう。

 すると住民から大きな歓声があがった。


 ははは、別にリーダーみたいなつもりはなかったんだけどな。

 いつの間にか俺がこの拠点を取り仕切っていた。

 まあこのままでもいいか。別に居心地は悪くないしな。


「それじゃしっかり食ってくれ!」


 俺の声を聞いて住民達は笑顔で食べ始める。

 横に座るリディア達が今夜の献立の説明をしてくれた。


・芋と野草のサラダ:ヤマイモに近い芋を生のまま細切りにしたもの。未熟なミンゴをドレッシングとして使っている。酸味があり食欲をそそる。


・具だくさんのスープ:根菜と猪肉が入っている。根菜は人参に近い味がする。ゴボウのような根菜も入っていた。猪肉は茶葉を揉みこんであるのか臭みがない。


・肉料理:ハンバーグに近い見た目をしている。猪肉とウサギ肉の合挽でナババの粉から作ったパンを練り込んであるそうだ。それを竹串に刺して焼いてある。


・焼き魚:デュパが手土産として持ってきたもの。イワナのような魚だが、地球のものより大きい。


・エビ:これもデュパからの差し入れだ。滝の湖に生息しているらしい。


・デザート:ナババから作ったパンをカエデの樹液、ミンゴの汁で作ったシロップに浸けたもの。



「へー、すごいね。二人は料理上手なんだな」

「ふふ、食べることは大好きですから!」

「私も嗜みとしてかつての主人から料理を習うよう言われていました。ここでライト様のお役に立てて嬉しいです」


 なんて会話をしつつ、楽しい時間は進んでいく。

 ふとデュパが席を立ち、俺達の前に座った。


「ライトよ。感謝するぞ。この地に産まれ落ちて200年以上が経つ。だが今日ほど楽しい日を過ごしたことはない」

「ははは、そう言ってくれて嬉しいよ」


 蜥蜴顔なので表示は読めないが、デュパも心から楽しんでくれたようだ。

 

「グルルルルッ。一つ聞いてもいいか?」

「あぁ。何だ?」


「この里についてだ。お前は拠点と呼んでいるが、名前はないのか?」


 ん? 名前だって?

 そういえば拠点としか呼んでなかったな。

 昔はまったタワーディフェンスゲームよろしく拠点と呼んでいたが、言われてみれば味気ないかもしれない。


「名前かー。特に考えてなかったな」

「グルルルルッ。それはもったいないぞ。恐らくだがこの里はもっと発展するだろう。ならば相応な名が必要なのでは?」

「ライトさん! 賛成です!」

「わ、私も名前は必要だと思います!」


 どうやら住民達も同じことを考えていたようで、急遽歓迎会から拠点の命名式もすることになった。

 住民からは色んな案が出る。

 でもパッとするものがないんだよなー。


「ライト村、ライトの里、ライトタウン……。みんな一回俺の名前から離れてくれないか?」

「えー、かっこいいじゃないですか?」


 リディアさん、それ本気ですか?

 俺は嫌だぞ。拠点に自分の名前がついてなんてさ。

 次々に候補が出るが、やはり俺に関係がある名前ばかりでさ。

 もう【飛び出せ! 異世界の村!】とか付けてやろうか。

 止めておこう。任○堂に怒られそうだし。


 なんて下らないことを考えていたら、横に座るリディアがこんなことを言った。


「ラベレ……。ラベレ村なんてどうでしょうか?」


 ラベレ? どういう意味だろうか?

 でもなんか語呂もいいな。


「ラベレって?」

「は、はい。聖書に書いてある一説なんですが、古代語で自由という意味なんです」


 自由か……。

 それでいいんじゃないか? 襲いかかる異形を退け、自由を手にしようと戦う住民達。

 デュパ達リザードマンも自由を求めてこの地に移りすんだようだし。

 それにかつての王都はエルフやラミア、色んな種族が仲良く暮らしていたそうだし。

 かつての自由を取り戻すために集まった仲間達。

 彼らが集う村、自由ラベレ

 これでいいんじゃないか!?


「よし! 決めた! 今日からこの拠点の名をラベレとする!」

「グルルルルッ! 良い名だ!」

「かっこいいです!」

「ラベレ村! 私達の村ですね!」


 こうして拠点はラベレ村と名前が決まった。

 住民……いやこれからは村民になるんだろうな。

 皆から大きな拍手が沸き上がる。

 だがそれだけではなかった。


 ――ピコーンッ


【村民満足度が上限に達しました。成長ボーナスとして石壁がアンロックされます】


 レベルアップしたみたいだ。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ここまで読んで頂き誠にありがとうございます!

 何とかここまで追い付きました(^-^;

 以前同じタイトルの小説を書いていましたが、悲しいかな公開停止になってしまったのです。

 どうもエロ過ぎたらしい……。


 しかし! きちんと書き直して再びの公開に至りました!

 カクヨムコンが終わる頃に完結させるよう頑張ります!(一応下書きでは完結しておりますが、ちょこちょこ見直したり、挿話を書いたりしています。)

 お気に召しましたらご評価頂けると喜びます!

 更新速度が上がるかも!? ☆☆☆

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