第107話 あの時の英雄達は今…

 一方その頃…


 コーン…コーン…と森には斧を振り木を切る音が響いている。そこには…


「…なぁ、なんで俺達はここで木を切っているんだ?」


 アーチャーの男がPTメンバーに問いかけた。


「そりゃイベントの為に木材取ってこないといけないからでしょ?」


 アークメイジの女が答えた。


「いや…そう言う事じゃなく…俺達っていわゆる攻略組だっただろ?ダンジョンも一番最初に攻略したんだし…なんで王国側にいるんだ…?」


「そこのリーダーに聞きなさいよ!まったく!私だって納得しているわけじゃないんだからね!」


「だってさ…闘技大会でチケット渡されるの怪しいじゃんか…入賞したらもらえるなら分かるけど…俺らってPT戦でて周りに狙われてすぐ負けたのにさ…」


 聖騎士の男がどもりながら答えた。


「そりゃそうだけど!あーもう!徒党を組んでこられたら身体補正がほぼないこのゲームじゃ厳しいでしょうが!!」


「戦いは数だって思い知らされるよなぁ…回復職から狙ってくる基本的な戦略だけど逃げきれん…」


 ビショップの男が思い出しながら言った。


「確かに怪しかったわ!というか、視線がやらしすぎて鳥肌がずっと立っていたわ…そういう意味じゃ向こうに行かなくって良かったけども!」


「ま、まぁとりあえず貢献ポイント稼ごうぜ?というか王国側のが人数いるんだから勝てるだろうさ!」


 さきほどビショップの男が言っていたので、聖騎士の男は自信をもって答えた。しかしアークメイジの女は不安げな顔をしていた。


「人数で見ればそう思うけど、向こうには対人が好きな人が向かったって考えたほうが良いわよ?それと、リアルでの知り合いが向こうに渡ったのだけど待遇が凄く良いみたい。教会に招待されて女の子達に歓待を受けているって。」


「なにそれ!?羨ましいぞ!やっぱ向こうに行けばよかったかなぁ…」


 アーチャーの男が叫ぶと女は冷めた目で眺めた。


「そうね、向こうでは奴隷の購入が出来るみたいよ?だからこそ私も怪しいと思っているんだけどね。それと、その知り合いは勝ち確だって言ってたわ。詳しいことは教えてもらえなかったけれど。」


「なんだそれ?戦争に確実性なんてないだろ?戦略次第でどうにかなるだろ?ま、この世界に核なんてあったら無理かもしれんが…」


 聖騎士の男がそれはありえないだろうと小声で呟いた。


「ま、とりあえず俺達は王国で参加するんだから出来ることをしていこうぜ!」


 そう言い4人は次の伐採する木に向かっていった。





『こんみなー!また新しいイベント来たね!』


【コメント】

:こんみなー!

:イベント終わったら何が来る?知らんのか?イベントが始まる

:みなもちゃんの鯖だと大規模戦は新鮮なんだっけ?

:他鯖だと常に住民との軋みで戦っているからな…

:まともな鯖はみなもちゃんのとこだけだった!?


『私の所だと魔物が攻めて来るイベントが一番最初にあったみたいだけど、私は第二陣だから初めてかな?生産職だから戦わないけれど裏方として頑張ってくよ!』


【コメント】

:ガンバレ!!

:住民と軋みのない鯖うらやま!

:今回のって住民関係ないの?

:生産職って今回どうやってイベントに貢献するの?

;ふんす!って気合入れてるの可愛い


『住民は関係ないって言われているけど…今回のイベントは変な感じがするんだよね』


【コメント】

:え?どゆこと?

:掲示板とかで怪しい話でてたけどみなもちゃんのとこの鯖なのか

:えー!?みなもちゃん大丈夫!

:詳細が知りたいやつは掲示板見るといいぞ


『あくまで噂だと思うけどね。ただ、私達生産職のイベントでの貢献方法は住民と戦い準備なんだけど…そこで色々と話が聞けるんだよね。』


【コメント】

:住民と仲がいいとそんな話も聞けるのか!

:NPCって言うよりほんとにそこに住んでるって感じだよね

:あれをNPCって思うほうがおかしいレベル

:他のゲームと違うとこだよね。没入感が一線を隔ててる

:ゲーム内でNPCって言うなよ!好感度一気に下がるぞ!


『これは住民にとっては当たり前の事だから言っちゃって大丈夫かな?今回の戦いってプレイヤーだけの戦いっていうよりは海の向こうの国…グロリオーサと王国との代理戦争なんだって。』


【コメント】

:そんなことになってるの!?

:知らんかった…

:みなもちゃんのとこって住民とかなり仲良くやってきたのに戦争になるの!?

:あー…だから掲示板での話が出て来るって事ね

:え、なになに?


『私も全然知らなかったんだけど…私のママに教わってね、あの世界の神と神託を行う存在って別なんだって!神様はキャラクター作成の際に案内してくれる声、神託は運営なんだよ!』


【コメント】

:ママー!

:ママ、優秀過ぎる!

:ママ、そんな話をどこから!?

:え、それってグロリオーサやばくない?

:戦争理由ってたしか神託を受けてってやつったよね?

:なにそれ!運営が遊びのために戦争起こさせたって事!?

:そりゃ荒れるわな…

:でもイベントの為に外部から手を加えるのは普通だけどな

:それは他ゲーの場合。異世界へのすゝめはリアルさを追求だからそーいうのが見えた時点でダメ


『そうなんだよ!今回は運営が神託という形で魔族の住む国を滅ぼせって啓示したんだって!魔族といっても世界を滅ぼすわけじゃなく単なる種族だし、王国と同盟組んでいるんだよ。だから私、魔族の人達の為に頑張っちゃう!』


【コメント】

:異世界へのすゝめの魔族はそういう立ち位置なのか!

:魔族だからって悪いとは限らないってことだな

:向こうの国に付いた人は知ってるのかねぇ

:知らんだろ?勧善懲悪ってことで丸め込まれてる説

:俺、図書館見つけて歴史の本見たけど人と魔獣が交わったことが魔族の始まりだったぞ

:なんだ、ルーツは一緒なんじゃないか!

:まぁグロリオーサって人族至上主義だから混じり物は嫌なんだろうなー


『同じ人なのに見た目だけで争うのは違うよね?だからこの配信を見て同じ鯖の子には頑張ってもらいたいなぁ?』


【コメント】

:ぐはっ!!

:やめて!その視線俺に効く!

:上目遣いでのお願い、効果は抜群だ

:なぜ俺は違う鯖なんだ…

:私も生産仲間に助力頼んでみるね!

:姉御、俺達の分まで頑張れ!


『あはは!皆ありがとね!暗い話ばかりになっちゃったけどほんと没入感が凄いしあの世界に旅行に行っている気持ちが強いから運営には不具合や住民達の自主的イベントの賞品だけ用意してもらいたいね!』


【コメント】

:わかる

:コミュ障だけどあの世界に行って改善してきた実感ある

:俺、第一陣だけど最初の大規模戦も不自然って思ったかな

:確かに…魔物のスタンピードって兆候があって発生するもんだよな

:討伐依頼受けててもあんなに数いなかった

:どっから沸いたんですかねぇ…


 私はコメントを拾ってそれを自分なりに返事して今回の配信を終えた。ふぅ…これで肩の荷が下りたかな…ここからさらに話が広まってくれれば運営が直接戦争に手を下しに来る可能性が上がるかな?


 この前、水島さんにゲーム内で会った事を思い出しながらつぶやいた。

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