第106話 やる事決まったらあとは動くだけ

 一夜明けて連絡が来ていないか確認するとジェミから送られてきていた。何々…とりあえずは話がまとまってノルニール侯爵様の領地で決まったと。一時的に転移装置を設置して、移動するための登録をイーリスがしてくれるので時間が出来たら合流してください…か。指輪に付与した能力で合流すれば大丈夫かな。イーリスが登録できたら一度そちらに向かう旨を連絡した。


 魔族の人達を転移させるのは代表者の方に登録してもらって各部族へみたいにすればそこまで苦じゃないかな?向こうへ着いたら簡易的に家を作ったほうがいいのかな?僕が野営で使った家みたいなのを複数作ればいいか。素材の材木はまだあるし、何とかなるはず…


 寝る前にはアルルは部屋にいなかったが起きたら隣で寝ていて、僕が連絡を送っていると目を擦りながら起き上がってきた。昨日は久しぶりに家族と過ごせたようで楽し気に教えてくれた。ただ、魔王様の話題になると眉間にちょっと皺が寄っていたけれど…あれかな?父親には冷たく当たる年齢ってやつなのかな…将来、僕も子供たちにそんな当たり方されると辛いかもしれない。


 しばらくすると扉をノックする音が聞こえた。


「ワタリ様、魔王様が会議の続きを行うとの事ですのでお集まりくださいと…」


「あ、分かりました。昨日と同じ場所でしたら自分達で向かいますので大丈夫です。」


「それではよろしくお願いします…」


 扉の近くから人の気配が去って行った。今日で大体の事が決まって実行に移せそうだね。僕達は準備を整えて会議室に向かった。


「お、ワタリ君達も来たか。それでは昨日の続きといこうか。」


 魔王様が話を促した。


「まず、マーメイド族に海路の確認をしてもらった。ルートは正規のもののみで他には見つからなかった。そして、そのルートを岩礁地帯にするのも難しくなさそうだ。元々そこまで深さはないようだからな。」


 ほうほう…それなら岩を設置するだけで座礁させることはできそうだね。まぁ…島に近い所で座礁させちゃったら泳がれる可能性もあるけれど…海中から警戒してもらえればそれも大丈夫かな…?


「それでしたら棘のような岩を生成するのもありですね。グロリオーサと貿易をしたことがなければ座礁したとしても不自然ではないでしょうし。こちらからの報告としては王国は魔族の受け入れ場所が決まりました。今、僕の妻達が転移登録をしてくれているのでもう少ししたら転移の準備が出来ます。その際、代表者の方達にも同行してもらって各部族に登録してもらうという形を取りたいと思います。」


「そうねぇ、ワタリさんにだけ最初付いてきてもらう感じかしら。私達魔族の姿に慣れていないかもしれないから驚かせないためにもね。交流は落ち着いてからのがいいわよね。」


 悪魔のお姉さんに言われてはっとしたけれど、確かにそうだね。ってことは僕が指輪の力で往復すれば問題ないかな?僕は怖いというより不思議だなぁとか種族ごと色々特徴あるんだなぁって印象になるけれど…ただ、フランス人形っぽい子だけは向こうの世界にもあるものだからちょっと不気味に見えちゃうんだよね…知らないからこそ怖くないってのもあるけど、その逆もあるし…未知への恐怖という。


「配慮ありがとうございます。そのように転移させてもらいますね。あとは龍族の方と連携に関してはどうなったのでしょうか?」


 昨日、龍族の方に乗せてもらって強襲するっていう案もあったから聞いておかないとだよね。


「問題なく協力は仰げたぞ。流石に姿が大きいから会議室にはこれないがな。」


 え…それって向こうについてから手狭になってしまうんじゃ?大丈夫かな…?


「あぁ…向こうについてからは人化してくれるぞ。まぁ今回は会議に参加しなくても問題ないから人化してまでこないだけだ。」


「そうでしたか…転移先で窮屈な思いをさせてしまうかもしれませんが…」


「ま、たまに息抜き出来れば大丈夫だ。山の山頂付近に集まる種族であるから無闇に人族を驚かせることはないだろう。よし、決めることも決まったし会議は終わるか!

 まずはワタリ君が準備する薬を使い軍の水や食料にダメージを与える。悪魔族、不死者は龍族と連携して船の強襲。その際に豪華な船や重役がいそうな船には極力手を出さないようにな。岩礁地帯を島から離れたところに作り、敵の船にダメージを与える。そこまで近寄ってきていたら転移で移動し避難する。

 追い詰めすぎると神託を授ける存在が動くぞ。」


 そう言い、魔王様は場を締めた。重々しい雰囲気はなくなり、皆の意志の方向性が決まって希望に溢れているようだ。


「ワタリ君も各方面に連絡、助かった。」


「いえいえ、僕としてもせっかく美しいこの島が無くなってしまったら悲しいので…といっても、神託を行う存在次第ですが…一応、外側から対処できるか打診しています。あちらが強権を使って島を消しに来ても元に戻せるかもしれませんし。」


「ふむ…それを聞けて安心した。万が一にも備えてくれて助かる。」


 出向しているAI開発者の人が横暴をさらけ出せる材料が揃えられるようにこちらの世界でも頑張らないとな…あとは理不尽なイベントになってきたら配信で情報を流してもらえるように連携もして…なにか手土産とか準備したほうが良いのかな…さすがに重要な案件だからゲーム内だけでも直接会ったほうが誠意が伝わるよね?


 やる事が意外と多いけれど、こちらの準備は進んでいるぞ運営!

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