第100話 情報を擦り合わせよう

 僕は公式HPを見ながら、奥さん達にこちらの世界を見せるためにはどうするべきかを考えていた。うーん…やっぱり運営サイドとの交渉が必須だよね。関連企業から何かないかなって今探しているんだけど…あ、ここなら良いんじゃない?


 ゲームサイドにAIを提供している会社から出向している人がいるのを見つけた。この人に連絡を入れたらいいんだろうけど、問題なのが運営サイドに染まっていた場合なんだよね…そうなるとこちら側が不利になるし。そもそもがデータだとしても著作権やら技術料やらかかってくるだろうからなぁ…特定のAIを買い取り出来るかどうかになってくる。

 

 素体は汎用のからモデリングして作り終わったし、あとは微調整や小物作りで一段落だし、とりあえず連絡取ってみるかな…行動しなきゃ何も進まないもんね。返事はログアウトしてから確認でいいかな。アポがあるわけじゃないし怪しいって思われても仕方ないもんね…一応プレイヤーでゲーム内の情報を少し開示はしたから、もしかしたら特定されて審査するかもしれない。あとは出向している人の考え次第だね。




 ログインを済ませると僕は一人でベッドに寝ていた。結婚した当初は皆で寝ていたんだけど、流石に少し経つと皆も落ち着いて日常へ戻った。仲が悪くなったとかではなく、気持ちが移ろうことがないと安心したため、慌てる必要が無くなったのが大きいかな。いくら結婚しても最初は不安だもんね。まぁ僕達はいきなり同棲じゃなく、段階を踏んだためお互い擦り合わせも出来ていたからだけど。


 身支度を済ませ話し声のするリビングへ向かうとリディさんを除く皆が揃っていた。


「あ、ワタリさん戻って来たんですね!」


 ラヴィがこぼれそうな笑顔で迎えてくれた。


「みんな元気そうでよかった。何か変わったことはあるかな?向こうの世界で分かったのは戦争に備えて物資を集めるっていうのとどの陣営で参加するかってことなんだけど…」


「ワタリさんの世界からこちらの世界に来れない状況をアップデート?でしたか。世界に強制的に干渉してくる神の行い…今思うと恐ろしいですわね…」


「神託を授ける方の気分次第になるのは怖いです…」


 ラナさんとジェミは運営の都合で変動することに恐怖していた。


「…リディさんが冒険者ギルド見に行ってる。」


「アルファスはあまり影響…ないよ?」


 イーリスとアルルは現状を教えてくれた。


「それじゃあこちらの世界と向こうの世界のすり合わせはリディさんが戻ってきてからがいいかな?」


 僕がそう言うとリビングの扉が開いた。


「戻ってきたから大丈夫よワタリ。ワタリが戻ってくる前に終わらせておくはずだったんだけど、王都にいるザインやアグスとも確認してて遅くなったわ。」


 ザインさん達にも確認取ってくれてたんだ!?ここまで入ってこない情報もあるかなって思ってたんだけど、先手を打ってくれているとは…リディさん凄い。


「それじゃ皆揃ったことだし始めようか。向こうの世界で変化がもたらされた項目は流れ人の渡航条件が緩和、ハウジング用品の追加だね。緩和に関してはグロリオーサ側で戦争に参加する人を増やす目的だと思う。それでもクランに入っていない生産職は条件満たせないだろうから王国に残るはず。冒険者の動き次第で戦力が決まりそうだけど…まぁ前哨戦として物資集めになっているのかな。」


「冒険者ギルドの受付嬢に聞いたんだけど、物資集めの依頼を緊急で貼り出したそうよ。糧食と木材、鉄鉱石などね。木材に関しては専門家がついて行き、切っても良い木を選別するみたいよ。これは王都でもそうね。王都の冒険者は定期船に乗る人、物資集めに向かう人が半々らしいわ。」


 え、半々?たしか今の流れ人は王都が拠点になっているからもっとグロリオーサに向かう人がいてもおかしく無いんだけど…王都まで行ってたら渡航緩和もされているし…ま、まぁどちら側で参加するかは3日ほど期日があるから貢献が足らなくて物資集めに向かった人もいるだろうね…といっても王国側で物資を集めても参戦する側にグロリオーサを選んだ場合、ポイントはなくなっちゃうけどね。


「僕としては闘技場でもチケットも配っていたからもっと渡航するんじゃないかって思っていたんだけど半々なんだね…戦闘職で闘技大会に出る人が向こうに集まるんじゃないかって思っていたし。」


「そうなのよね。ザインが言うには胡散臭そうにチケットを貰っている流れ人もいたから保留にしている可能性があるわ。アグスに言わせれば初動が遅い時点で人数は変わらないだろうって意見ね。」


 あー…アグスさんの意見は確かにありそう。イベントでポイントも付与されるんだから初動で遅れた場合、致命的になるもんね。途中で渡航してポイントが無くなるってなると移動をしないっていう選択肢を取る…か。


「アリィお姉さまが言っていたのですが造船は順調らしいですよ。大きさもある程度分けたり追加で装備を付けれるようにしているみたいです。職人さん達凄いですよね…私達は指示するだけですがそれを形として造るんですもの。」


「お父様は無事に転移装置を設置した…みたいだよ?連絡すれば迎えに来てくれる…よ?」


 造船も順調なんだ。ポイントによって貸し出し、装備品の追加が可能とカスタマイズが出来るから流れ人にとってやりがいはあるんじゃないかな。

 魔王様も無事に設置出来たって事はいつでも向こうに行けるね。僕達は船を使った戦争には参加しない予定だし。


「ジェミ、アルルも情報集めありがとね。アリエス様には海戦が行われる領域がどのあたりになるのか相談したいから謁見の予約をお願いしてもいいかな?」


「はい!お姉さまに連絡入れておきますね!」


「魔王様には飛竜の準備や堤防を築くのがどのくらい進んでいるか確認しないとだね。アルル、謁見後に迎えに来てもらえるように出来るかな?」


「大丈夫…だよ?」


 こう、皆で何かを成し遂げようと目標に向かうのって良いよね。愛おしい人達との未来のために僕も頑張らなきゃ!

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