第101話 結構危ない状況?
面会の順番はすぐに取れた。アリエス様からの連絡によると、今日来るだろうということで予定を空けてくれていたみたい。開戦間際なのに国の重鎮達との話し合いは大丈夫なのかな…?ま、まぁ前にも旦那さんが表、アリエス様が裏に回るっていう話が出てたもんね。うん、気にしないでおこう。
今回は僕とニアさんだけで王城に向かっている。時勢が緊迫しているし、スパイが入り込んでいる可能性もあるから弱みになる要素を少しでも減らすためにね。城の中に詳しくないからニアさんに付いてきてもらった。今回、待ち合わせをした場所は王族が暮らすエリアで、しかもエリアス様のお部屋らしい。
案内してもらった部屋の前にはメイドさんが一人立っていた。僕達の姿を見て室内にいると思われるアリエス様に声をかけた。
「アリエス様、御到着なさいました。」
「入ってもらってちょうだい。」
「さ、ワタリ様、ニア、お入りください。」
「ありがとう。」
僕らが入ると、そのメイドさんも部屋の中に入りドアの前に立った。…前まではここまで出入り口を警戒していなかったよね。間者が混ざらないように注意しているってことなのかな。こう緊迫していると戦争間際って意識せざるおえないね。
「いらっしゃい、ワタリさん、ニア。」
改めてアリエス様を見ると優雅に紅茶を飲んでいた。疲労もしていないのか元気そうである。
「アリエス様こんにちは。…トップの方は大変かと思ったのですが、大丈夫ですか?」
「上の立場だからこそ慌てている様子を表に出さないのです。下の者があげて来た報告をまとめるのと仕事の割り振り、リスクに対する責任をとる御輿のようなものですよ。まぁ…出兵や物資の供給調整という貴族に頼む面倒なことは旦那がやってくれていますから、私はワタリさんと打ち合わせ出来るの。それで、海戦が行われるであろう領域についてですわね。」
トップが確かにわたわたしていたら下の人は不安になっちゃうもんなぁ…向こうの世界でも白鳥とか水面下では忙しなく脚を動かしているけどそんな様子を全く見せないんだよね。
「そうですね。大まかな地理は図書館で知っているのですが…たしか王国がある大陸が南、宗教国家のグロリオーサがある大陸が北西、魔国ミンティアが北西という正三角形のような形でしたよね?」
「そうね。補足をすると3国とも最短で目指そうとすると海流に阻まれて押し戻されるわ。3国の中央には孤島が多くあるのだけど、その影響で中心に向かって引き込むような複雑な流れになっているの。中央付近から戻るルートは存在しているのだけど国防の観点から3国で共有はされていないわ。中心まで行ってしまうと脱出不可ね。大渦に飲み込まれて海の藻屑になるわ。」
なんかすっごく大変な領域があるんだね。流石に所属する陣営で脱出ルートは教えてもらえるんだろうけど…
とりあえず情報を整理しよう。
・最短で目指せない
・中央付近から各国へ向かえない(ルートを知っていれば平気)
・遠回りすれば向かえる?
「アリエス様、大回りをすれば各国は行けるんですよね?」
「行けるわね。ただ、貿易と考えると時間対効果が悪すぎるのよね…だから貿易も細々だったの。航海も天候次第だから時間をかけるほど危険性が高まるわ。」
なるほど…宣戦布告することで相手を倒す、脱出ルートを入手→相手国に攻め込むってことなのかな?っとなると…
「孤島領域で戦争ですかね。」
僕の答えに満足したのかアリエス様が微笑んだ。
「そうなるわ。しかも相手陣営を倒すことで脱出ルートの情報を確保ってことね。捕虜にされて拷問されたら情報の拡散は防げないけれど、流れ人はログ?でしたっけ、それで記録を見ることが出来るから口頭のみで陣営に教える予定よ。」
ということは出兵は国では出さないってことなのか。なるほど、代理戦争ってことだね!でも、そう考えると魔国に攻めたい宗教国家はどうするんだ?一応、魔王様に地上での防衛戦を指示したけど…そうすると宗教国家はルートを入手できないよね?まぁ、そこまで読んでくるか分からないけど大回りルートを警戒すべきか。
「そういえばアリエス様、グロリオーサは流れ人を人族と見ているのでしょうか?」
そう、これが分からない。姿は人族だけど不死身の存在でもあるからなぁ…
「難しい所ですね…死んでも復活して成長速度が速いなど化け物って思う可能性もありますし、神託に従って行動するので使徒と見なされるかもしれません。まぁ…客観的に見たらそう思うでしょうが、使い勝手の良い駒としか見ないでしょう。」
おぉ自信満々だ…
「えっと、それはなぜでしょう?」
「教義の上では人族至上主義と言っているけれど、お布施の支払いが出来ない人を問答無用で奴隷にしているのよ。自分達が贅沢出来ればそれでいいって言う国ね。祈祷にも効果があるし、詐欺ってわけでもないから教徒も増えるのよね…」
うわぁ…ほんとやばい国だった…盲信とか宗教ってホント怖いね…ということは流れ人を捨て駒扱いにするのかな?となると最初から当てにしない…あっ
「アリエス様、グロリオーサから魔国まで遠回りすると何日ほどかかります?」
「そうね…何事もなければ一か月ほどでしょうか。」
たしかこの世界は元の世界の8倍、時間の流れが速い…1か月くらいってことは現実で4日くらいか。上陸してもすぐ決着がつくわけじゃないから…やっぱり…
「なるほど、ある程度予測出来ました。まず、流れ人同士で戦わせといて、別ルートで魔国を目指すのでしょう。魔国が孤島に行ってたら侵略が楽、残っていたとしても勝算があるということは、圧倒的な力があるってことでしょう。そうなると…神託を授ける存在が来ているかもしれません。」
僕の考えを述べるとアリエス様は考え込んだ。時折、「…場合」「…そうなると」等聞こえるのだが、シミュレートしているのかな?
「その可能性が高いわ。神と呼ばれる存在を止めなければこの戦いに勝利がないのね…」
運営がバランスブレイカーとしてゲーム内に乗り込んでくるのは流石にどうなんだろうか…結果が決まった戦いになると八百長ってことでユーザーにも不満がでるだろうから突くとしたらそこか…ということは盤外の戦いを仕掛けなければいけないね。
そう考えると決め手となるのはAIを提供している企業の考え、出向者がどちら側なのかだね。なんか運に任せた戦いはしたくないのだけど…運営が力を行使するってなるとどうしようもないのがなぁ…念のため、魔族の方々を逃がせるようにもしておこうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます