第95話 守るために出来ること
トーナメントは無事終わり今は表彰式を行っている。優勝したのは1試合目で勝っていた軽装の戦士だった。やっぱり動きやすさや体力面、攻撃力の面からバランスが良かったんだと思う。2位は3試合目にいた盾持ちの重戦士、3位が以外にも4試合目に勝っていた魔法使いであった。狩人は初戦で矢を使いすぎたらしく、試合の途中で補給が出来なかったため最後は魔法によって焼かれてしまった。
こうして試合を観戦してみて思ったことは基礎は大事なんだなぁって事と人同士の繋がり(この場合は現地人)によって差が出来たんだという事を実感した。
僕は最初から異世界に遊びに来たという感覚だったからなぁ…でも、生産職を選んでいたなら最低でも師匠となる人がいるだろうし、仲良くなっている人もいるんじゃないかな。
闘技大会が無事終了し、次は品評会とオークションだね。イベントで優秀な成績を収めた人にはポイントが付与され、自分達で選べる仕様になっている。これは最初にあった大規模防衛戦と同じシステムだね。目録を見る限り結構良いものがあるんだなぁ…生産効率の上がる道具や装備品に魔法効果を付与出来るもの、ハウジング用の家具や庭具等々…
僕は前のイベントの時も運営から与えられることは何か違うなぁってことでもらっていないけど、ゲームとしてINしているならかなり有利な物ばかりだね。
「さて、闘技大会も無事終わったし何か見たいものある人いる?」
「私は市井を見れるだけで新鮮ですから…特には。」
ジェミはあまり外に出ていなかったもんね…僕達と住むようになっても警備上の問題であまり外出できない状況だったし。もっと気軽に出歩けるようにできたらいいんだけど…グロリオーサと決着が付けば少しは安全になるかなぁ…
「はいはーい!私は服を見に行きたいです!」
「ラヴィさん落ち着いて!…私も見に行きたいですわ。特に流れ人が作った服がいいのですが。」
ラヴィとラナさんは服か。そういや裁縫に関しては現実と同じ技術が必要だからその道の人がいてもおかしくないもんね、趣味で製作する人だっているだろうから良さげな物がありそう。
「わたしは素材を買い足しくらいかなぁ。警備用のガーゴイル作るのに結構使っちゃったんだよね…」
「補充が楽そうな素材なら私が採ってくるわよ?ザインとアグスも暇でしょうから頼んでもいいわ。」
テオは素材か…門のところにあるガーゴイルはテオ製なんだよね。漫画の中の洋館にありそうなもので、あれが急に動くとびっくりするだろうな…採取が楽なものならみんなで行っても良さそう。
ザインさんとアグスさんはリディさんが僕達と行動するようになって立場がやけに低くなってるのが気になるけど…本人達曰く、金払いも問題なく時間が有効に使える今の状態は悪くないって言ってくれてるんだけど…大丈夫なのかな。あの人達、Aランクの冒険者でしょ…
「イーリスとアルルは何か欲しい物あるかな?遠慮しなくていいよ。」
僕が聞くと2人は少し悩んでから答えた。
「ワタリの作ったお菓子が食べたい。」
「お兄さんとの子供がほしい…な?」
イーリスのお菓子は問題ないんだけどアルル…それは情勢が落ち着いてからね?って魔王様と魔王妃様、なに孫はいつ抱けるのかって話さない!アリエス様までジェミになに耳打ちしているの!?顔真っ赤になってるじゃないか!
はぁはぁ…なんかどっと疲れが出たよ…とりあえずは露店で素材を見てから品評会に出ている服部門を見てみようか。女の子の買い物は時間がかかるだろうから僕も覚悟しておかなきゃ…
「あ、ワタリさん。言い忘れていましたが近々領地経営に関してノルニール卿に師事を頼んでおいたわ。領主のみ使えるスキルなど重要ですのできちんと聞いておいてね。」
「あ、はい分かりました。そういや領地がって話あったっけか…僕的にはアルファスにある家だけで十分なんだけど…」
「功績に見合った報酬を渡さなければ王家は何しているんだって言われかねないの。それに、ワタリさんは人気があるから余計に、ね。」
僕自身はそんな大勢と関わっている気がしないんだけど…人から人へ伝わったから現状があるってことなのかな?こう考えるとほんと人のつながりって大切だよね。
よく言われる、小さい村や町だとすぐ噂が広まるっていうのに似ているきがする。この世界では成人していたら掲示板を見れるみたいだし、そこから情報を拾ってくるだろうから下手な事すると一気に評価が変わると思うから怖いな…まぁそんなことしないけどさ。
「魔国がそのままワタリ君のものになる程度だから気を張る必要はないぞ?負担をかけないよう我々が今まで通り業務を行うし、跡継ぎが生まれたらその子に引き継がせればいいからな!」
領地というより国を貰うことになっているのが問題なんですよ!戦争でどれだけ被害が抑えられるかになっているのも…これは領地に関してきちんとノルニール卿から学ばないとやばい…防衛機能とかあるのかな?
「そんな気を張らなくて大丈夫ですよ。もし領土が無くなったとしても王国が受け入れてくれると話が進んでますから。」
魔王妃様はそう言ってくれるけど…やっぱり元々住んでいた場所から移るのは皆に負担をかけちゃうだろうし、出来るだけ現状を変えないようにしなきゃ!
「お兄さん…すごくかっこいい顔している…ね。」
「…ほんと。好きになってよかった。」
「普段は可愛いのにこういう時はカッコよくなるのずるいです!」
「私は色々と相談をしていた頃から知っていますけど、何度見ても素敵ですわ。」
「戦っている時とはまた違う凛々しさよねぇ…」
「わたしは新鮮かも?師匠って立場だから弱い所は見て来たけど…かっこいいね。」
「これがギャップ萌えっていうのでしょうか…?心がぽかぽかします。」
僕は皆の顔を見て急に恥ずかしくなって
「ほ、ほら!そろそろ闘技場から出る人も落ち着いてきているから露店に向かうよ!」
そうやって急ぎ足で向かう僕を、笑いながら追いかけて来る。
こういう日常を大事にしていきたいなって僕は強く思った。
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