第91話 1試合目は戦士同士?
それにしても…職が装備で判断し辛いっていうのは大変かもしれないね。対応が難しくなるし、なにより戦い方のテンプレートみたいなものが現地人と流れ人で違うからリディさんやザインさん、アグスさんに聞いても参考にならないよね…
「リディさん、流れ人ってどんな戦い方をするのか聞いたことあります?」
僕が聞くとリディさんは困ったような顔をした後に苦笑いで答えてくれた。
「見ていたら分かるわ…私も嘘としか思えない噂しか聞いたことないし…よくあのダンジョンを攻略できたわねって思ったわ。」
なんだろ…その残念な感じの噂は…そもそもあのダンジョンは基礎を固めるためにある修行場みたいな物だったから攻略をしていくことで自力が上がると思うんだけど。
改めて舞台にいる流れ人を見てみる。武器は二人とも槌、片方は軽装で動きやすい感じ、もう片方は鎧を着込んで盾を持っているから二人とも剣を持っていない事から戦士で軽装だと狂戦士で攻撃重視ってとこかな?剣士は武器縛りになっちゃうもんね。
試合が始まった。狂戦士と思われる側が開幕と同時に盾持ちに走り寄り、横回転をしながら槌を振るう。1度、2度、3度と振るうが全て盾によりガードされてしまっている。回転が止まり、隙が出来たところを盾持ちが槌を振ったが狂戦士はすでに離れていた。
なるほど、ヒットアンドウェイでチクチク攻撃するってことなのか。確かに盾持ちに対しては持久戦になっちゃうよね。盾持ちもただ攻撃されるだけではなく、上手くパリィして攻撃やガードと思わせて突進するなど多彩な攻め方をしていた。
うーん…ここまで見た感じ残念な要素はないんだけど…しっかり魔物を倒せる実力があるからダンジョンに潜れるんだし、依頼も達成できるんだから普通な気がする。
そう思った直後、狂戦士がジャンプをしながら大きく槌を振りかぶり攻撃をしかけると盾持ちは耐えきれず盾を落としてしまいあっけなく倒されてしまった。
え…盾を落としても敵から距離を取ったり攻撃して隙を見て拾えばよかったんじゃ…というか、なんで初期位置からずっと動かなかったんだろ…
「リディさん、なんで盾持ちの人は動かなかったのか分かる?」
「ワタリ、今回のルールを思い出して?」
えっと、闘技大会のルール…制限時間あり、場外あり、降参もしくは死に戻りで勝敗の決定、事前に使用する装備のチェック…
「分かった?開会式前に装備のチェックをしてそのまま着とくわよね?不正を防ぐために。」
「たしかそうだったね。え、ということは動かなかったんじゃなく動けなかったって事?自分の普段使っている装備を着てて!?」
「そういうこと。装備と身体能力が合わないものを好むのよ、流れ人って。」
「でも、普段から着ていたらある程度筋力とか満たせそうな気がするんだけど…そういえば盾を落とすのも速かったね…いくら攻められたからといって実践じゃ厳しい気が…」
「私は実際に見ていないから噂でしか知らないんだけど、流れ人はギルドで依頼を受けて目標の獲物が見える所にいくまで装備はずっと軽装よ?移動中、予定外に襲われて死に戻りをしているらしいの。」
…武器や防具は装備をしなきゃ意味ないぞ。特に移動中とか警戒する人がいるならまだしも、いつ襲われるか分からないんだからきちんと準備しなきゃ。僕だって警戒するし、リディさんが常に周りを気にしてくれているからすごく頼もしい。
つまり、先ほどの試合は身体能力に合わない装備をずっと着込んでいたため、試合中にバテてしまいやられたと…軽装の人は両手で槌を使っていたこともあり、相手の体力を削りきるのに十分だったってことか。
「なんとまぁ…ダンジョンでもそうだったけど、継続戦闘時間が長くても大丈夫にするのが大事だと思うんだ…兵士とか特にそうだよね?」
僕の呟いた声が聞こえたのかアリエス様とラナさんが反応した。
「王国の兵は常に装備を着込んで訓練をこなして、使い終わった後も自分達で整備させていますよ。遠征では自陣の建設なども訓練に入れています。」
「アルファスも同じですわね。王国の兵ほど訓練は厳しくないと思いますが…それでも常に装備を身に着けさせていますわ。」
現地人からするとそれが当然ってことなんだろうね…流れ人の意識としてはアイテムメニューからショートカットで素早く着替えられればって思っていそうだけど。リアル志向だから無理なのにね…アイテムの収納容量が多いだけでも嬉しいのに、それ以上を求めるのはなぁ…
次の対戦相手が出てきた。えーっと…杖を持っているから片方は魔法使い系、もう片方は弓使いだね。どっちも遠距離だからどういう立ち回りをするのか楽しみだ。僕もどちらかというと遠距離に属するし。
ただ、嫌な予感がするんだよなぁ…軽装なのは職的にそうかもしれないんだけど、魔法使いがなぜジャージっぽい服を着ているんだ…え、普通に考えて魔法使いって固定砲台とか運動苦手だよね!?
僕は他の流れ人と決定的なずれが生じているのを感じ始めた。
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