第86話 情報を広めよう
別荘で二日ほどのんびりと過ごし、僕は現実世界で氷月みなもちゃんに衣装を送るついでに現地人からどう思われているのか話しておこうかな。
ちなみに、別荘はすごく過ごしやすい場所だったよ!木々からの木漏れ日が気持ちよかったし、近くにある湖も透き通るほど綺麗だった。朝靄が晴れていく様子は神秘的だったし。貴族の避暑地ってことで他の家もあったんだけど、それなりの距離離れているからプライベートエリアの様だった。
貴族以外にも普通に住んでいる人々がいて、朝市で採れたての山菜や野菜、湖でとれた魚などが並んでおり、屋敷に勤める使用人たちが購入していた。
また、時期外れにも関わらず僕達以外にも王都の学生達が訪れていた。学生組の顔見知りらしいので理由を聞くと、王都に流れ人が集まっており居心地が悪くなったので転移装置でこちらに避難しに来たらしい。大人がいないのは、流れ人の実力を測るために闘技場や生産品など見るために残ったんだって。
確かに店を持っていなかったりイベントに駆り出されていない現地人は流れ人が多い場所から避難してくるよね…絡まれたくないだろうし…でもなぜか僕を見ても気にしている様子はなかったんだけど…なんでだろ?
全体的にのんびりとした避暑地なので皆も休めた様子だった。僕が無理させちゃったからしっかりと労ったよ!
水島:ハロウィン用の衣装、モーション付け終わりましたのでデータを送信します。
氷月みなも:いつもありがとうございます!今月、スパチャが多かったので普段より多めに払い込みます!
水島:最初に取り決めた料金で大丈夫ですよ。僕だけの力で増えたわけじゃなく、氷月さんの力があってこそなんですから。
氷月みなも:それじゃ私だけが得をしていて申し訳ないです…なにかお返しできると良いのですが…
水島:Vtuberは人気商売で不安定なのですから貯蓄に回していいと思います。お返しも度が過ぎると炎上の理由になってしまうのでお勧めしません。
氷月みなも:それでも!デビュー前からずっとイラストや3Dモデルを手掛けてもらってますし…なにか力に慣れることがあればいいのですが…
水島:ないこともないですが…氷月さんは異世界へのすゝめをやっていますよね?鯖はどこか聞いても大丈夫ですか?
氷月みなも:あ、はい!やってます!鯖はプラネテスです!水島さんもゲーム好きですしやっているのですか?
水島:同じ鯖なんだね。のんびりと旅行気分で楽しんでいるよ。
氷月みなも:それでしたらお礼になるかわかりませんが一緒に遊びませんか!?
水島:それこそ炎上要素になるからダメだよ。異世界へのすゝめのキャラメイクはリアル遵守なんだから。
氷月みなも:あ、そうでした…私は気にしませんが迂闊でしたね…それに水島さんと遊んだことを話してしまったら炎上しちゃいそうですもんね…
水島:同じ鯖なら配信で拡散してほしいことがあるんだ。違う鯖のリスナーがいたとしてもね。
氷月みなも:そんなことで良いのですか!?そのくらいならいつでもいいのですが…
水島:僕は住民に寄り添ったゲームプレイをしているんだけど、流れ人の評判がかなり悪いんだよね。まぁ…主に男性プレイヤーのせいだと思うけど。現地人の女性に良い寄ったり少年に声かけて手を出そうとする女性プレイヤーとかいたりと。
氷月みなも:あー…確かに掲示板を見るとそういう人達がいるの分かります…
水島:話を聞くと下心満載で視線がいやらしかったりしてトラウマになった住民が結構いるんだ。女性?の氷月さんに言うのもなんだけど娼館の人たちからも「流れ人は物扱いしてくるから相手したくない」っていう意見もあるみたいなんだよ。
氷月みなも:わ、私は女性ですよ!?なぜ「?」なんですかー!ゲームの中とはいえAIもきちんとしていて人間味があるのにそれはかなりダメですね…他の鯖にいるリスナーさんは世紀末感が凄くて楽しいって言ってましたが…私はそんな鯖になって欲しくないです…
水島:プラネテスはまだ平和だと思うよ。ただ、住民の話を聞く限り運営サイドと現地サイドで溝があるから運営が火種を投下してくる可能性がある。それで、拡散してほしいのはAIだからといって人間扱いしないのはNG、異世界へのすゝめという世界に旅行に行っているって認識かな。
氷月みなも:そんなことになっているのですか…リスナーさん達に物扱いしないようにって伝えてみます!あそこまでリアルなゲームですから難しくはないはず。それにしても…水島さんってそんな情報が聞けるくらい住民に寄り添っているんですね!すごいです!
水島:リアルに疲れた人や新しい趣味を試したい人にはかなりいいゲームだと思う、生産職なんて特にね。加速空間だから疲れを癒すのにもいいし。
氷月みなも:わ、私そこまで疲れさせちゃってますか!?いつもイラストありがとうございます;;
水島:イラストは趣味みたいなものだから大丈夫。それに事前にどんなものにするか考えてあるから苦じゃないよ。それじゃ情報の拡散は任せたよ。
氷月みなも:あ、はい!任せてください!
水島さんとのチャットを終えて、私はベットに横になった。水島さん、同じ鯖だったんだ…もしかして会ったことあるのかな?住民に寄り添うプレイスタイルかぁ…確かにそれだと他の流れ人が評判落としている現状は大変だもんね…私も世紀末みたいな世界は嫌だし。
でも、普通に仲良くしているだけでこんな情報も入ってくるものなのかな?深い仲になってないと無理なんじゃ…うぅー…前までは私だけが水島さんのこと評価していたのに、今じゃイラストレーターとしてもモデラーとしても評価高いし…モヤモヤする!
私は枕に突っ伏してもやもやを落ち着かせるように深呼吸をして眠りについた。
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