第74話 急募!庭師

 アリエス王女は用事があったらしく城へ戻ってしまったのでみんなに確認してみた。


「料理人やメイドなど専門の人を3家から雇うんだけど…まかせっきりも悪いし、いざというときに出来たほうがいいよね?この中で料理出来る人っている?居ないようだったら僕が出来るから大丈夫だけど…」


 僕が聞くと皆は顔を見合わせお互いに確認し合っていた。


「私、ロエナとニアは専門のコックには及びませんが家庭料理なら出来ます。あと、レシピがあればその通りに作ることは出来ると思いますよ。」


 ロエナさんとニアさん、料理出来るんだ!?メイドというか付き人だと分野が違うからあまり期待していなかったんだけど助かる!それに、レシピがあれば大丈夫なら向こうの世界の料理を任せちゃっても良さそうだよね。

 家事とかどこまで任せたり担当して良いのかも決めないといけないし…少数に負担がかからないようにしないとだよね。


「はいはーい!私も出来ます!」


「ちょっとラヴィさん、あなたの料理は食べられませんわ…」


「…素直に出来ないって言っとくべき。」


「そんなことないでしょ?包丁の使い方も火加減も大丈夫なのは調理実習で見てたでしょー?イーリスちゃんやラナさんは壊滅的だったじゃない!」


「…私は食べる専門。」


「私は紅茶を準備しましたわ。ラヴィさん、あなた毎回辛く作られるじゃないですか…」


 なるほど…味付けが問題なのか。この世界って料理の基本的な味付けが薄味なんだよね。それでラヴィは結構濃い味付けが好みな感じだからアクセントとして辛くしちゃっているのかもしれない。僕はお付きの2人に目配せして大丈夫か確認した。…うん、平気そうだね。


「ならラヴィは味付け以外で2人を補佐してくれると助かるかな。調理するときは1人でするのじゃなくどちらかと一緒にお願いね。それで…ラナさんは紅茶入れるのが得意でしたよね?食後やお菓子を食べるときなど任せても大丈夫でしょうか?」


「私は問題ありませんわ。皆さんに味わってほしいですから。」


「…あの、私はお菓子作りでしたらニアと一緒に練習しましたのでデザートやお茶菓子は任せてください!」


 ジェミ、料理を練習してくれたんだ。ほんと良い子だよね、僕にはもったいないって思っちゃうくらい。


「今はノルニール侯爵の使用人もいるから練習には困らないだろうし頑張ってみよう。まずは出来ることを増やすとして、自分の部屋は自分で掃除かな。

 それと…リディさんとイーリスは洗濯を任せちゃっても大丈夫?僕がすると肌着を触っちゃうし触られるの嫌かもしれないし。」


「あら?私は見ても触られても大丈夫よ?冒険で洗濯は重要だったからどんな汚れでも綺麗にしてみせるわ!」


「…見られてるって思うと嬉しい。」


「えっと…返答に困るんだけど…僕としては寝室とかの特別な時に見れたら嬉しいかな?どんな物を持っているのか知られていないほうがいざというときに良いでしょ?」


 僕が答えると女性達はなるほどと納得していた。ふぅ…流石に使用したばかりのは意識しちゃうから納得してくれてよかった。…っとこれは言っておかなきゃ。


「イーリス、僕の下着で悪戯しないようにね?前科があるから心配なんだけど。」


「…ぷぃ。」


「イーリスちゃん…まさか、嗅ぐつもりだったの!?お布団に潜り込むのはまだしも下着の匂い嗅ぐのはさすがに…」


「…ラヴィも一度嗅げば病みつきになる。」


「こらこら、ラヴィを巻き込まない!まったく…悪戯しないようにね?」


ちょっと心配だけど…大丈夫だよね?これでとりあえずは引っ越した後の割り振り大丈夫だと思うけど。


「そういえば、学生の3人は卒業まで王都で過ごすのかな?あと…庭園を管理してくれる人がいるといいのだけど…庭師って基本男性だよね?」


 庭師って体力必要だから男性が多いイメージなんだよね。細々とした調整だったら女性のが良いのかもしれないけれど…


「引っ越す頃には自由登校になりますので一緒について行きますわ。ラヴィーネさん、課題間に合わせてくださいね?庭師はそうですわね…でも女性ばかりの所に男性は問題があると思いますので出来れば女性で探してみますわ。ワタリさんが奴隷に忌諱がなければそちらも当たってみますが…」


 あー…そういえば侯爵様に見に行ってみたらどうかって言われていたね。屋敷自体は小さいけれど一人で作業するには大変だろうから2名ほどいたほうがいいだろうし。


「奴隷って言っても契約による労働者ってことだよね?それなら問題ないよ?この中に奴隷に対して何かしら思うことがあるなら考えるけど…」


 僕が皆を見渡すと特に問題なさそうにしていた。貴族になると使用人関係で常識なのかもしれない。


「問題ないみたいだから僕が今度一人で見てこようかな。あまり女性を連れて行かないほうがいい場所だろうし。」


「あ、ワタリ。あまりこの世界に詳しくないだろうし私もついて行くよ。色んな地域を旅したこともあるから参考になる意見を言えると思うし。」


 リディさんが付いてきてくれるみたいだ。確かに見聞が広いリディさんが付いてきてくれるなら助かる!後はっと…


「園芸や庭園維持のできる子を2名で女性って感じで大丈夫かな?」


「せっかくなんだし可愛い子で!」


「仲良くなれそうな方だと嬉しいです…」


ラヴィは可愛いもの好きだもんな…ジェミは…うん、性格重視で頑張って選んでみよう!


「それじゃ皆に気に入ってもらえるように選んでくるね!」


「責任重大ね、ワタリ。」


 面接って苦手なんだよね…練習のときはいいけれどいざというときにしゃべれなくなるだろうし、ほんとは良い子なんだけど実力が発揮できないってこともあるだろうから気を付けないと!

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