第73話 3人寄れば姦しい、では5人だと?

 久しぶりの王都は前にいた時より活気づいていた。街の人に話を聞いてみると闘技大会や制作品のコンテストとオークションの準備で忙しいらしい。流れ人にはまだ知らされていないけれど、雰囲気で何かあるなって思っている様子だった。


 知らせるタイミング的には40階層攻略でなのかな?転移実装でイベントを開くって前にアリエス様が言っていた気がするし…僕はこういうお祭りの準備期間って結構好きだな、当日の事を考えながらって良いよね。

 それと、お試しで置いてきた臭い消しについての評判を聞きに行ったんだけど、商品化はまだなのか!とか、匂いを逆に付けれるの?って意見が多かったらしい。なので商品化は錬金術ギルドが安定して供給できるようになったらってことを伝えといた。ちなみにオーダーメイドも出来るけれどワンオフだから初回は高くなるってこともね。


 とりあえず用事は済ませたのでノルニール邸へ向かった。このあたりの貴族街までくると人通りは少なく、流れ人は一切見かけなくなるので閑散としているが整然とした家並みは見ていて飽きない。


 屋敷に着くと応接間に案内されたんだけど…この扉の奥、何か盛り上がっているんだけど入って良いのかな…?まぁ…入らないと始まらないし行くか。


「メイドさんに案内されたんだけど…って!?みんな勢ぞろい!?久しぶりだね!」


 部屋の中には大勢の人がいた。ラナさん&お付きのロエナさん、ラヴィ&イーリス、アリエス王女、ジェミ&お付きのニアさん、そしてリディさん。


「えっと…もしかして前に言ってた顔合わせ…なのかな?」


「ええそうよ。こういう機会じゃないと一同に集まることなんてできないでしょうし。」


 アリエス様が代表で答えてくれた。確かに…全員偉い立場の人達だもんね…というかよく都合つけたね?


「それと、今日からこの屋敷にジェミもお世話になるからワタリ、頼んだわよ?」


「あ、私もお世話になりますわ。ここからラヴィさんとイーリスさんと一緒に学校へ通いますわ。」


 僕がいない間に色々と決まってそうだ…ってリディさん、そんな端っこで小さくならなくていいと思うよ?


「そう言うけど私だけすっごく場違いな感じがするじゃない…ワタリ、好かれる相手狙ってないわよね…?」


 いや…僕もなんでこうなったか分からないんだけど…大体は助けて好かれたってことだと思うけど…一緒に過ごして徐々に好かれたってことならリディさんやラナさんくらいだと思うよ?


「それなら気にしなくてもいいわよね?ワタリありがと、おかげで少し楽になったわ。」


「あー!ちょっと、そこ2人で何良い雰囲気だしているのですか!私達もいるんですよー!」


「…ラヴィ、落ち着いて。」


 イーリスがラヴィをたしなめている。


「偉い立場の人ばかりだからリディさんが不安になっていたんだよ。過ごしてきた環境が違うから肩身が狭くなっちゃうもんね。」


 僕がそう言うとジェミが頷いて話を続けた。


「えっと、ワタリさんが来る前に言いましたけれど立場は気にしないで欲しいです。その…同じ人を好きになったのですし仲良くしたいので…」


「さすがにいきなりは難しいとは思うけれど、少しずつ改善していきましょう?ジェミニの言う通り立場を気にしていたら共同生活が息苦しくなっちゃうわ。」


 ラナさんがジェミに敬称を付けないことで立場は皆同じというのを示した。僕は目線でラナさんにお礼を言ってラヴィに向き直った。


「ラヴィ、僕も皆に順位を付けるような真似はしないように気を付けるけど今まで恋人がいたことないから至らないことが多々あると思うけど…それでも大丈夫?」


「…私こそ視野狭くなってごめんなさい…ワタリさんは素敵な男性ですし共有できるのは嬉しいのですが、構ってほしくなっちゃいました…」


「誰だって自分を見て欲しいって思うのが自然だから大丈夫だよ。それに、ラヴィはダメだったところをきちんと治せる子だって一緒に過ごしてきた中で分かっているよ?」


 そう言って僕はラヴィの頭を撫でた。段々と落ち着いてきたのかラヴィは撫でていた手を頬に持っていき擦りつけていた。


「…ん、ラヴィ交代。」


 横からイーリスが割り込んできて手を頭に持って行った。


「むふぅ…落ち着く。」


「まったく、イーリスちゃんったら!」


 皆は微笑ましい雰囲気になって撫でられているイーリスを見ていた。


「それではワタリさん、流れ人が地下30階を攻略したので魔族の方々にワタリさんとジェミの婚姻式の招待状を送らせてもらいました。30階以降は迷路に躓くとの話でしたので…40階をクリアするまでに約1か月といったところでしょうか。屋敷の完成もそのあたりになるでしょうし共同生活も含めて練習してみてください。私は各種調整や品評会、闘技大会などで忙しくなるので何かあったらメッセージを送っといてくだされば見ておきます。」


「アリィお姉さま、お体に気を付けてくださいね?」


「あら?私は無理しないわよ。的確に仕事を振るのがトップの仕事なんだから!打ち合わせがほとんどよ。」


 確かにトップが余裕なかったら目が届かない部分が出来て問題が発生する可能性があるもんね…


「女の子ばかりだからって節操なく廃れた生活はしないようにね?屋敷の中には入れないけれど、護衛として屋敷の周りに警備を配置しておくわ。」


 それは心強い。リディさんはいるけれど女性だし警備に神経使っていたら休めないだろうからね。とりあえず、話すべきことは終わり、残りの時間でお互いの交流を深め合った。

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