第64話 寝室での語らい

 今僕はジェミと一緒にベットに入っている。その前にお風呂入らせてもらったんだけど…ニアさんまで一緒に入ろうとしてくるとは思わなかった…なんでか聞いたんだけど、ジェミの旦那になるのだから私の主様になるからってさ。ジェミだけじゃなく僕も対象になるんだね…ニアさんはそれでもいいのだろうか?お風呂の時はとりあえず服を着てもらって背中だけ洗ってもらった。付き人として確固たる意志を持ってるっぽいから断り切れないと思ったからね。それなら大丈夫な条件を出すほうが重要だったし。


 僕としてもしっかりと洗う必要あったからなぁ…一応、ダンジョン中もセーフティエリアではお風呂に入っていたけどしっかりとは入れなかったからね。女性のように華奢な体ですねってニアさんに言われたり、冗談交じりで前を洗おうとしてきたので流石に恥ずかしいので止めてもらった…冗談だよね?



「ニアったら…ワタリさんに迷惑かけたらダメですよ?」


「…本心では喜んでいたかもしれませんよ?」


「ニア!まったく…私も一緒に入りたいのにずるいです。」


 あれ、そっち!?まぁ僕としても入ってみたいから湯着を身に着けてくれると助かるかなぁ。裸は流石にね、恥ずかしいし。


「とりあえず、ベッドで横になりながらでも大丈夫?体が温まってすぐ寝ちゃいそうなんだけど…」


「あ、気が利かなくてすみません…それでしたらこちらに。」


 僕はジェミに促されてベッドに入り、横向きになると見つめ合う形となった。


「これってかなり恥ずかしいですね…」


「僕もちょっと緊張してます…治療の時より近いですし、お互い風呂に入った後なのでその…良い匂いがします。」


「はぅぅ…意識したらすごいことしてますね私達…」


 意識すると余計に緊張してやばい…ダンジョンの話をしよっと!


「じゃあダンジョンでどんなことがあったのか話していきますね。」


 僕は初めてダンジョンに入ったときの印象や道中に苦労した部分、敵の弱点を上手くつけるように立ちまわったりしたことを話していく。40階層のボスで腕を取られたことは流石にショックがでかいだろうから言わないけれど…


「ダンジョンってそんな難しい場所なんですね…冒険について行くとなると色々と出来ないと厳しそうです…」


「パーティーで挑むものだから各自出来ることをすれば大丈夫だよ。僕なんて戦闘に直接参加することが出来ないからまかせっきりだったし…だからサポート出来るようにずっと考えを巡らせていたよ…」


「助け合いが重要なんですね…ほんと仲がいいパーティーじゃないと喧嘩になっちゃいそうです…」


 確かに、ずっとダンジョンに籠っているわけだし段々卑屈になったりイライラする部分が出てきてもおかしくないからね…それに関してはほんと最初の出会いに感謝しなきゃ…そうだ…屋敷の維持に必要な人材聞かないと…



「あれ?ワタリさん?…寝ちゃってます…ほんとこんな女の子に見えるのにやっている実績はすごいです…国としても助かっちゃいましたし…私の病気も…ワタリさんに会えてほんと嬉しいです。…まだ起きている時にする勇気はありませんが…」


 そう言い私はワタリさんの頬に軽く口づけをした。うぅ…これだけでもすっごく恥ずかしいです…起きている時なんて無理です…


「ジェミニ様、私は席を外しますので頑張ってください。」


「ニア!?居たのですか!?何もしませんよ!?」


 去っていくニアを見ながら私は静かに叫んだ。うぅ…改めて二人っきりだと色々と意識しちゃいます。私、寝れるんでしょうか…




一方、他の流れ人達はというと…


「それにしても、宝箱を取らないだけでどんどん下に降りれるな。」


 治癒士の男が歩いている最中に声を投げた。

 

「そうなんだけど…今って地下9階でしょ?情報によると10階層はボス部屋で、倒せば地上へ戻るゲートも出るらしいじゃない。そうしたらアイテムも持って帰れるんだし、宝箱の探索はある程度すべきじゃないかしら。でないとこのままじゃダンジョン探索は赤字よ?地上で依頼を受けて金策する必要が出てくるわ。」


「この9階で探せばいいんじゃね?ほら、ちょうど宝箱があるじゃねえか。」


 剣士の男が見つけた宝箱を弓使いの男に罠がないか調べさせた。


「罠解除スキルは使ったからもう罠はないと思うぞ。ただ、罠解除を使って何か起こった感じはしなかったな。レベルが低いのか?」


「開けるぞー!お、これって噂の帰還スクロールじゃね?これでいつでも帰れるとか助かるな。」


「敵からのドロップしか取ってないから二束三文でしょうけど、売れば少しは足しに出来るわねぇ。」


「あ、ここの壁に罠解除が見える!えっと…これがこうなって…これでどうだ!?」


「お、宝箱が出て来たじゃねえか!これって罠解除しないと出てこない宝箱だろ?もしかしたらいいものが入ってそうだな!」


「なかなかやるじゃない!ちなみにこれに罠なんてないわよね?」


「さすがに2重でなんてないだろ?開けるぞー!」


 そう言って剣士の男が宝箱を開けるが中には何も入っていなかった。


「ちょっと、解除で出てきたのに中身が入ってないなんて!」


「ダンジョンってパーティー単位で作られるんだろ?ってことは元から空ってことだが…」


「なぁ…この部屋ってこんな狭かったっけ?」


「あ?元から小部屋だったじゃねえか。」


「違うわよ!明らかに狭くなってるわ!というか壁が迫ってきてる。」


「ちょ!?俺達が気づいたらスピード上がりやがった!早く脱出を!」


「お、おう!ちょい待て!バッグの中に入れたが見つからないんだ!」


 剣士の男が慌ててバッグを確認しているがどうやら見つからないらしい。


「だから日頃から整理しときなさいって言っているでしょ!早くして!潰されちゃう!」


「あった!これだ!って腕がバッグから抜け出せねぇ!壁がぁぁぁぁ…」


 こうして4人は迫ってくる壁に潰されたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る