第57話 攻略は風を読むこと

 そういえば…ダンジョンの階層って異空間で区切られているわけじゃないよね?なら道を調べるだけならもっと手っ取り早い方法がある…魔力を含ませた風を送ることによって障害物を把握できるという方法だ。ただ、これの欠点は魔物に気づかれるということかな…正確な位置はバレないだろうけど、方向は知られる感じ。そもそも、ダンジョンは風吹いてないもんね。地形が変わるダンジョンだったらこんな手法とれないし…


「ダンジョンの大まかな構造を知れる方法を試してもいいですか?魔物が来る可能性もありますが…」


「大丈夫だろ、この階層の魔物は慣れたしそれなりの数来ても対処できるだろうからな。」


「ワタリ、今度は何をするの?」


「えっと、風に魔力を乗せて迷路を調べようかと。ただ、僕の操作技術で何処まで離れた場所まで把握できるかが不安ですが…」


 僕が言うと、リディさんはその手があったかという顔をした。


「確かにそれなら有効ね!ワタリくらい操作技術がないとそんな広範囲まで把握できないでしょうけど…」


「直近の行き止まりなどは調べなくてもよくなりそうだな。ワタリ、負担が増えるだろうが頼む。」


 僕は頷いて了承した。せっかくなんだし鍛えないともったいないからね。貢献することができて鍛えられる、いい方法だと思う。

 改めて風を送って分かったことなんだけど、すごく広大なフロアだよね…これ全部を歩いて調べるとなるとどれだけ時間かかるんだか。案の定、しばらくすると前から魔物が襲ってきたがこちらでは感知することが出来る人が僕とリディさんの2人いるし後手に回ることはなかった。

 魔物より厄介なのは罠の存在だ。相互に干渉しあっている罠や同時に解除しないといけないものなどがあり、そちらに時間が取られる。僕とリディさんが罠を解除している間はザインさんとアグスさんが周囲を警戒してくれている。


 一応、通路全体に罠がはられていない場合でも解除しているんだよね。宝箱があるから傾向をつかむためにも必要らしい。現地人でここまで来るのは初だしちゃんとチェックしないといけないってことだね。これからも現地人が潜ってくるなら情報をきちんと持ち帰って危険度を表さないと無謀に挑戦する者が多く出るだろうし…


「結構いい装備出てくるのねぇ…一応国に預ける必要があるけど、魔法が付与された武器とかかなり使えるわよね。」


「だなぁ。しっかし燃費が悪そうだぞ…かなり魔力を食うから生粋の前衛には厳しそうだ。」


「俺は使わなくてよさそうだな…継続戦闘時間で考えると常時使用は無理だろう。出来たとして奥の手として…か?」


「私としてはさっき手に入った少量だけ魔力の回復量があがるイヤリングのがいいわ。」


「あれはどの職にも便利そうだな。複数でたら全員もたせたいくらいだいし、売るとしてもかなり高額になるだろう。」


 アグスさんが冷静に判断している。僕には審美眼や装備に関する鑑定能力がないからまったく価値が分からないんだよね…商人なら必須なんだろうけど…自分で作ったものを売る場合もか。僕は全部商会に頼んじゃってるから損をしている可能性もあるけど…侯爵様から紹介された僕に不利な契約した場合は知られたらやばいだろうから大丈夫だとは思う…


「それにしても…迷わない迷路なんて一本道と変わらないわねぇ…」


「魔物にきちんと対処でき、罠も解除でき、道も分かるとかワタリはすごすぎだな。」


「いえ…補助しているだけですよ。直接戦闘はまかせっきりですし…」


 僕は後ろの安全な位置から支援しているくらいだし。魔力操作の訓練をしながら進んでいるって感じなんだよね、罠解除は神経使うけど…


「その補助が的確だから私達は楽できているんだけどね。あ、次の階層へ行く階段が見えたわよ。」


「かなり早く着いたな、これもワタリのおかげだ。」


「しっかり休憩をとったほうがいいだろうな…今までの傾向からすると敵が変わるだろう。俺の予想としては出てきていない硬い魔物と死霊系なんだが…つまり、ここまでで拾ってきた魔法武器が必要になるってことだ。」


 必要があるからこその宝物だったってことか。前回と同じ攻略法が効くか分からないけど、最初は試すべきだよね。肉体がない死霊系には冷気は効かないだろうから網を投げてみて…肉体持ちで冷気が効かない死霊の場合が問題だろうなぁ…


「一応冷気や網を試してみますが効果があるかはわかりませんので気を付けてください。ゴーレムやゾンビ、ネクロマンサー、ゴーストの上位種ってどんなのがいるのかもわかりませんし…」


「冒険者でも上位種と戦闘経験あるのはA級のひと握りでしょうね…S級っていうのは名誉職みたいなもので現役の方はいないのよ。私達は地下31階から相手にしてきているけど、ワタリが援護してくれてなかったら厳しい戦いだったと思うわよ?」


「常に先制が取れて状態異常が付与された魔物なら相手にするのも難しくないからな。それなら上位種になったとしても問題はなかったということだ。」


 そう言う事なのか…まさかS級って名誉職で退役した人がなるものなんだね…万全な状態で不意打ちを食らうと危ないなら次の階層からはもっと気を付けて行かないと!

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