第55話 未知の領域への一歩
これから地下31階の攻略なんだけど…何に注意したらいいんだろ?
「ザインさん、ここからは何に気を付ければいいんですか?」
僕が訪ねるとザインさんが少し考えて話した。
「そうだな…こっから出るのはコボルト、ゴブリン、獣系の混成になるが今まで出会ってきたやつらの上位だな。連携、スピードなど跳ね上がっている。罠は逆に少なくなっているから、討伐メインで時々罠って感じだろうな…予想としては35階からでるのは硬い奴らと死霊系の混成だろうな」
なるほど、今までの階層の魔物を合わせているのか。となると鎧をゴーストが纏っているってのもありそうだ…デュラハンっぽいな…ん-、さっきのボスで使ったボールを先行させようかな?僕達の魔力では発動しないようにしといて、接敵したら発動すればいいし。
「それなら先ほどのボールを魔力で先行させて進みますか?僕たち以外の魔力に反応して罠が発動する感じですけど。」
「そのほうが安全だな、頼んだ。」
「それ反則すぎるほど便利よねぇ…魔力登録と維持、生産職でも使える攻撃力と凄すぎるわ。」
「だが、どれも高水準でやらないといけないから流れ人じゃないと難しいと思うぞ?そもそも、流れ人は完全に戦闘職と生産職が分かれているらしいから戦闘しないしな。」
そうなんだよね。僕以外にも戦闘を行っている生産職がいると思ったんだけど、周りの住民に話を聞く分には街に籠っているらしく見かけないとのこと。僕みたいに目立ちたくない人がやっている可能性はあるけどね。素材を自分で取りに行けないとそれはそれで大変そうなんだけどなぁ…毎回冒険者に依頼を出すのかな?もしくは商店に仲介というか素材を卸してもらうように頼むかだよね?
僕としては他の環境に左右されたり、融通したんだから作れって言われるのも嫌だから出来るだけ身内もしくは一人でこなしたいかな。あと、好きなものを好きに作りたいってのもあるし…こういうことがあるからあまり流れ人と会っていないのかもって思った。
「ただ、素材が鉄なんですが傷付けられますかね…?脅威にもならなかったら無視して突っ込んできそうなんですが…」
「目の前に棘が一瞬で生まれたらだれでも隙が出来ると思うぞ?あと、魔力の籠った鉄だから大丈夫だと思うが…生産職で影響受けるかだな…戦闘職なら威力に変換されるからそこは補正されるだろうな…」
やっぱりそうなるか…まぁ、一瞬でも隙が出来れば遠距離からリディさんが攻撃できるし、その間にザインさんとアグスさんも近寄れるか。そこまで難しく考えなくて平気そう。
「あ、奥で結構魔物が固まっていますがどうします?」
「この階層から部屋というより巨大な迷路になっているのよ。今回はワタリの地図があるから楽だけど、狭い通路しかないの。だからこのまま戦ったほうがいいと思うわ。それに、通路が狭いってことは一気に襲ってこれないわ。」
あ、そっか。部屋だったら囲まれる心配があるけどすし詰めみたいになっているならそこまで多い数を一度に相手するわけじゃないもんね。倒した後に後ろから襲ってくる魔物に注意すればいいのか。
「じゃあボールを先行させますのでリディさん追撃お願いします。」
「任せて!一気にしとめるわ!」
「おいおい、俺達の分もきちんと残しとけよ?というか、誤射だけはしないでくれ!」
「失礼ね!誤射なんてしたことないでしょ!ワタリに誤解されるじゃない!」
適度な緊張を保てるようにザインさんが冗談を言っていた。この状態、結構いいよね。僕は少しボールを魔物の近くに移動させた。こちらの気配に気づいたのか魔物が距離を詰めて来るのが分かった。しかし魔物達は横からいきなり棘が出てきたのにビックリし足を止めてしまった。
僕が作ったボールは罠が発動すると辺りがほのかに光るようになっているため、足を止めた魔物に対しリディさんが的確に矢を当てていく。後詰めとしてザインさんとアグスさんが突っ込んでいくので僕は棘を消し、金属を回収した。
んー…やっぱり刺さりはしないか…これはこの先問題になる気がするけど…これ、消耗が少なくて使いやすいんだよね。
「どうしたのワタリ?快勝だしもう少し喜んでもいいのよ?」
リディさんが心配そうに僕の顔を覗き込んできた。
「えっと、棘が刺さらずあまり効いていないようだったのでなにか対策はないかなぁと…」
「あれで十分だと思うわよ?そもそも全部個体が違うんだし学習しないでしょうからずっと通用すると思うわ。ダンジョンの魔物は逃げるって手段をとらないのよ。だから逃げて情報を共有するってこともないわ。ダンジョン自体が生物だった場合はわからないけれど…」
ダンジョンマスターなるものが居たら効かなくなる可能性があるか…それは逆の発想をすると通用するなら主はいないってことだよね。主がいなくてダンジョンが生物なら分からなくなってしまうけど…
「とりあえず、この階層からでてくるのは生物なので毒や麻痺を配合して擦り傷でも出来たら効くように改造しておきますね。」
「ワタリのやることはえぐいな…だが、有効的だ。」
アグスさんからなにか微妙な評価を頂いたが気にしない。みんなが生きて帰るために出来ることをするだけだ。
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