第47話 基礎が出来るからこその応用

 リディさんとの関係がはっきりしたけれど、何かするわけじゃない。そもそもダンジョン攻略中だし、みんなに紹介してから関係を進めたいからね。だからシャワーに誘われたり一緒に寝るのも断った。…まぁ今まで他の子にも朝起きたら潜りこまれていたけどね…


「さて、それじゃボス部屋行ってみるか!手順としては昨日話した通り俺達がボスを担当、ワタリが手下を担当。あとは臨機応変に!」


「細かく決めても状況次第でしょうしそのくらいがちょうど良さそうですね。きちんと役目こなしますよ!」


「遠距離で全体を見る私が援護するからワタリは自由にやって大丈夫よ。」


「そうだな。戦闘メインではないんだから出来ることをこなせばいいんだよ。事前に配られた回復ポーションなど効果高いしとても助かる。」


 流れ人に売る分を大量に作って自分の分も確保しといたから、それをPTで共有することにしたんだ。そもそもザインさん達PTがやられないように僕が動くべきなんだから。


「んじゃ部屋入るぞ!ボスは中央にいるから俺とアグスが突っ込む!リディは援護頼む。ワタリは手下が出るまで様子見で頼むな!」


 そう言って2人は突っ込んでいく。ゴブリンキングは小鬼というより筋肉隆々の人型だった。創作物ではよくオークと一緒で女性の天敵と言われているけど、この世界では繁殖法が違うらしい。そもそも魔物が生まれる条件は魔力が濃い場所なので人の身に宿せる魔力程度では無理とのこと。ジェミほどの魔力でも魔物を生むのは無理と分かって嬉しかった。といっても、食料にされるらしいから、結局は気を付けないといけないけど…

 恨み、辛み、妬みなど負の感情を魔力により増大させ魔物が生まれる。…ダンジョン内でサイクルが完了しているんだね。


 考え事している間に戦いは佳境に入っていた。キングの片腕を吹き飛ばしたところでザインさんが叫んだ。


「来るぞ!手下の討伐頼む!」


 そう言われて僕は予め準備していた鉄製の球をとりだし、手下の現れる場所を見極めるために神経を研ぎ澄まさせた。

 先ほどの魔力によって魔物が生まれるということから、魔力が集まったところに手下が沸くんだよね?それなら魔力操作に長けた僕なら把握しやすい。僕が待機している場所とキングの中間に魔力が集まっているのが確認できた!

 考えていたことがあるんだ。手下の発生する場所に金属の棒を被せたらどうなるんだろうってね。それを実践してみると…


 うん…悲しい出来事だったね…沸いた手下は実体化した瞬間に股から頭にかけて鉄球から出た棘により串刺しになった。手下自身も何が起こったのか分からず止まっていたが、数秒後に煙となって消えた。…やらかしちゃったかな?

 そう思いリディさんに視線を向けるとうわぁって顔で見られていた。


「…うん、手際が良いのは褒められることよ、ワタリ…」


「自分でもやらかしちゃったかなって思ってますから…そもそも手下が現れる前に変形させておかないと生産職では補正かかっちゃうので準備したんですが…はまりすぎましたね…」


「ワタリの魔力操作が異常なのよ。錬金術師に関しては詳しくないけれど、魔力を感知することも長けているし、操作も適格なら戦闘職だったら一流よ。多分、金属を変形させるスピードも速いんじゃないかしら?」


 他と比べるほど錬金術師がいないからそのあたりは分からないんだよな…テオはどうなのか分からないし…ただ、出来そうではあるよね。エルフで長生きだし色々と経験しているだろうから。


「ワタリの戦術、初見でいきなりだと避けれる気しないな…ボスが雑魚を呼ぶパターンなら完封出来るんじゃないか?」


 僕達が話している間にキングは倒したらしく、ザインさんが声をかけて来た。


「かなり高度な技術が必要だろうけど、他の人も出来るなら錬金術師はすごいな…」


 アグスさんもなにやら感心していた。


「いえ…これは手下のゴブリンが鉄には弱かったからだと思います。竜などでしたら大きさもありますが致命的にはならないでしょうし、貫くという結果が出ないと思います。」


「なるほど、皮膚を貫けるかどうかにかかってくるわけか。素材の質を上げればそれも改善されると思うが、鉄以上となると一般に普及されてないし高価だからな…」


「僕としては貫けない場合、出て来る座標がずれるんだと思ってます。生まれて来る瞬間の魔力が金属を滑って避けるみたいな…」


「ま、そのあたりの考察は後にしてとりあえず地下10階の初回攻略おめでとう!」


「あ、ありがとうございます…ザインさん達が手伝ってくれなかったらかなり苦労したと思いますよ…ここに来るまでの間も罠の解除や索敵などしてもらいましたから…」


「いいのよそんなことは!ちなみに初めてボスを倒しても特別なアイテムをくれるわけじゃないわよ?ただ、全く倒されたことがないボスは特殊な物がドロップするみたいだけどね。」


「最初に倒してから被ったものが出てないってことだけどな…実際はどうかは分からんが。転移装置にしても実物は直接ドロップしたが、他は設計図と部品を読み取って作ったってことだ。動力が直接ドロップなのかそれ以降に落とすのか分からんがな…」


 できればボスからドロップしてくれたほうがいいのだけど…そもそも街から街への往復するには2つは動力必要なんだよなぁ…僕達が攻略できたとしても、それ以降は慎重にドロップを確認して進んで戻ったほうがいいんだろうな…


 他の流れ人達、頑張って攻略してくれ…

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