第19話 初めての依頼報告
ふわぁぁ…野営だから疲れが取れないと思っていたけど、何か眠れたな…近くから何かいい匂いと柔らかい感触が…あれ?前にもなかったっけ…
ああああ!?リディさんが入り込んできてる!?なんで気づかなかったの僕!
とりあえず…起こさないように抜け出さないと…意外と強く抱き着いているから大変だけど、魔力を体で覆って肥大化させてっと…よし、抜け出せる隙間できた!ちょっと色々と触れちゃったかもしれないけど…ごめんなさいリディさん。
外にでるとザインさんが見張りをしていた。
「お、ワタリ起きたか。目ぇ覚めたか?」
…もしかして
「おはようございます。ザインさん…リディさんが入り込んできたの知ってましたね?ビックリしましたよ…」
「わはは!役得だったろ?お前くらいの年齢なら多少女の扱いに慣れていたほうがいいだろうしな。それに、気づかないだけで戦闘による精神的な疲れもあるだろうからな。冒険者はそういう時は女を求めるもんだ。あ、リディと俺らはPTメンバーというだけで他に関係ないから安心しろよ?」
「なんで朝からドロドロとした話聞かされてるんですかね…まぁ今回はありがとうと言っておきますよ…確かに昨日は緊張していたと思いますし。」
「おうおう、甘えとけ!頭スッキリさせるために朝は昨日採った果物かじっとけ。」
鑑定してみるとこの黄色い果実はアプルというらしい。食べてみるとリンゴだったのでリアルと似た名前の傾向なんだなぁと思った。んー、みずみずしくて良いね。
食べていると、小屋から二人が出て来る。
「おはようザイン、ワタリ。私も食べるわ。」
「あまり寝た気はしないが普段の野営よりしっかり休めた。助かったよワタリ。」
全員が食べ終わると今日の予定を確認する。
「僕としては昨日で結構な数を採取できたので、追加の採取をしながら街に戻るのはどうでしょう?」
「そうだな、夕暮れ前に街に戻って報告でいいかもな。せっかくバックに沢山入るんだから遠慮せずにもっと採ってけ!。」
「助かりますが…次もまた採取できるようにある程度ばらけて確保する予定です。せっかくの群生地が潰れてしまってはいけないでしょうし。」
「そうね、少し歩きまわって採取しましょうか。護衛はしっかり務めるから安心してね。」
「ああ、まかせろ。このあたりは野盗はいないが、警戒はしておこう。」
…野盗っているんだね。プレイヤーはPKシステムないけれど住民とは普通に戦闘行えちゃうからなぁ…冒険者ランクが上がる条件に対人戦闘もあるらしい。怖すぎる…
時間をかけて採取させてもらい街に来た。この街は門から大通りをまっすぐ進むと教会がある広場があり、その広場に面して冒険者ギルドや薬師ギルド、ギルドと提携している雑貨屋や武具防具店が集中しているらしい。ギルド所属者は割引をしてもらえるとのことなので、普段の買い物は広場周辺がいいのかな。
ギルドと提携していない個人商店や宿屋などは、広場から四方に伸びた通りの先にある。広場周辺の店にはない掘り出し物も多く、集客競争が激しい。ただ、争いに発展すると衛兵に連れていかれるから、度を越すことはなくまだ品があるとのこと。
外壁沿いは住民が住んでいるらしい。魔物からの脅威が心配だが有事の際は中心にある教会周辺が避難場所になり、冒険者で防衛みたいだ。アグスさんが言うには、そこまで攻め込まれる前に門前で終わらせるべきと言っていた。まぁ、街に入りこまれた時点で厳しい状況だもんなぁ。
あ、錬金術ギルドの場所を聞いたら薬師ギルドと併用だって。人数少ないし、そういう扱いになるんだね…ま、状態異常の調合法を知りたかったからちょうどいいかも?鍛冶で使う金属は鉄が主流になるのと、道中の素材を使った武器や防具が安くて冒険者に人気とのこと。
今回の鍛冶は錬金で済ませるかな。新しい手法があるようなら行くけど…鉄の炭素含有量による鋼作成は興味あるし。でも合成で作れる気がする。まぁ刀は鋼を創れたとしても製法が難しいから作らないけどね。武器として使える気しないし。
3人に冒険者ギルドへ案内してもらった。やっぱ冒険者ギルドは人が多いなぁ…ちょうど報告する時間帯らしくかなり混雑していて受付嬢が慌ただしく働いているけど、優雅さがある。
列に並び順番を待っている最中に周りを観察してみると、ここでも流れ人が酒場から受付嬢を見ている。ただ、この街は酒場の給仕が人気らしく目線を送っている人が沢山いる。通報されない様に見なよ…
「依頼の報告に来た。アルファスで護衛依頼を受けて、その完了報告だ。」
ザインさんが依頼書を渡し、受付嬢が内容を確認している。
「依頼主はそちらの方ですか?(あれ、この子って住民板で噂になってた人じゃ…ほんと女の子に見える)」
なにか見つめられてる…?え、僕特に何もしてないよね?犯罪的な称号でも付いてる?
「あ、はいそうです。護衛および採取・サバイバルの教授をしっかりしてもらえました。」
「そうですか。それでは完了処理させてもらいます。アルファスにて前金手続きは終わっていますので、残りは金貨2枚なので2万ユルですね。」
僕はバックから金貨2枚を取り出し、カウンターに置いた。
「はい、それでは確認しました。こちらが完了報告の控えと報酬になります。」
「おう、ありがとよ。」
「ありがとうございます受付嬢さん。混雑していますが頑張ってください。」
そう言って僕達は列から離れた。ちょっと後ろが騒ぎになったから振り返るとなにやら受付嬢さんが悶えていた。疲れておかしくなっちゃったのかな…?心配だ。
「あとは狩った魔物の買取なんだが…流れ人が結構きて相場が下がっているな…ボスの分はワタリが全部使え。俺たちはウルフの分でいいからバックから出してくれ。」
「お、魔物の持ち込みかい?それじゃこっちの奥でだしてくれ。間違ってもカウンターに載せるなよ?血の片づけがめんどいからな。」
そう言って男が案内した場所でウルフをだした。クマは相場下がっているみたいだし、成型の練習にも使えそうだから取っておくかな。
「お?なんだ解体済みか。おまえさん流れ人みたいだからそのまま持ってきたのかと思ったぜ。」
「今回の依頼で解体方法を教えてもらったので、実践してみただけですよ?解体用のナイフを持っていなかったので歪になっちゃっていますが…」
「んや、これだけ出来ていれば金額は引かれないさ。ほれ、ちょい相場が落ちているから全部で銀貨6枚だな。」
渡されたお金をザインさんに渡し、ギルドから出た。
「今回は護衛引き受けてくれてほんとありがとうございました。おかげで色々と学ぶことが出来ました。」
「こちらこそ快適な護衛でよかったわ!またなにか依頼出したいときや聞きたいことがあったら気楽にメッセージ送ってね!」
「こちらがまた護衛させてくれって言いたくなるくらいだったよ。ただ、ちょっと気になったことがあるんだ…昨日から今日にかけて全然魔物の姿を見ていない。何かの前兆かもしれんから注意しろよ?」
「たしかにいつもだったらもっと襲ってくるんだが…ちょいと戻って情報が入っているか聞いてみるか。それじゃワタリ、気をつけてな!」
「またねワタリ!」
「3人も気をつけてくださいよ?Aランクといっても不意打ちされたら危険なんですから…」
そう言って3人と別れた。とりあえず、宿を確保してログアウトかな。
次インしたら薬師ギルドに行って調合予定かなぁ。
僕は比較的安めの宿(銀貨3枚)をとり、桶を借りて部屋で体を拭いた。
いつか家持てたらいいなぁ…転移がほんと欲しくなる…体を拭いてスッキリしたため眠気が襲ってきた…それじゃおやすみなさい。
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