第18話 野営と採取上の注意
「採取は後回しにして寝床の確保と食料の調達なんだが、食材に関しては倒した魔物の肉があるから大丈夫だな。」
ザインさんはそう言うと、テント取り出した。
「一応僕もテントは持参したのですが、試したいものもあるのでいいですか?鍛冶や彫金で作ったものや、現地での素材を使いたいので。」
「あら?ワタリなにかするの?」
期待に応えられるか分からないけど、土は十分にあって、あとは砂からガラスにしたものを木の枠にはめて、木材で扉、銅の金属で蝶番を作ってっと…窓は1か所でいいのかな?見張りは外でだろうし、あとは3人が休める広さと囲炉裏、煙が逃げるように道を壁の上方に空気穴を開けて…うん、魔力は作るだけなら大丈夫そう。強度は弱いから回復したら追加で密度あげなきゃ。それじゃドーンっと!
僕は手を地面につき魔力を浸透させ土を盛り上げ形を作った。あとは窓になる部分に窓枠、扉をはめていく。うん、初めてにしては上出来なんじゃないかな?こうなるとベットも作っておくべきだったかなぁ…寝袋でいいやって思ってたんだよね。
出来た土小屋に頷きながら、3人にこれで大丈夫か確認しようと振り向くと顎が外れるんじゃないかってくらい口をあけて驚いていた。
「あー…ワタリ、もうちょっと常識を身につけようか…確かにここまで準備すれば野営は楽なんだが、なんかこう…ずれてるんだよ。」
アグスさんがいち早く正気に戻り答えた。やっぱりこれはやりすぎだったみたい。
僕も野営っていったら普通ならテント張って外で火を起こし、食事を食べるイメージだもんね。でも、これには理由があるんだ。
「すみません…複数の素材を組み合わせたり、魔力操作の練習も兼ねてですので…きちんと満遍なく練習しないとさび付いちゃう可能性もあって。」
「そういやそうだな…確かに驚いたが快適には違いないか。錬金術師ってスキルを維持するのが大変そうだな…使ってないとレベル下がるから気を付けるようにな。」
ザインさんが頭を掻きながら言った。あ、スキルレベルって下がるんだ。リアル基準で考えていたけど、合ってたんだね。そりゃ使ってないのに維持とかできたらおかしいもんなぁ。
「魔力回復したら壁の強度を補強しておきますね。あとはもう一つ小さいですが部屋作ってお風呂設置も出来ますが…土に熱もたせて陶器っぽくすれば水は汚れないだろうし、下は
リディさんが嬉しそうに喜んだが、何やら頭を悩ませている。
「女性としてもお風呂入れるのは嬉しいんだけど…野営がこれだけ快適だとワタリがいないと辛く感じそうで怖いわ…」
「ま、これから解体作業もするから風呂あるのはありがたいな。匂いとかきつい作業だからそのまま寝たくねぇし。というわけでワタリ、ちょっと向こうで解体教えるぞ。」
「はい、わかりました!」
「じゃあ私達はその間見張りと、ついでに他にも食材になるものがないか探す感じね。」
「んじゃまずは小さい獲物、そうだなウルフを出してくれ……んで次に首を切って放血なんだが、地面に穴を開けて流す。近くに木があったら吊るしながらがいいぞ。その後は皮についた泥の洗浄だな、水の魔道具使うか自分で出すかだ。次は内臓摘出、首元から腹を通り尻まで裂く、この時中身傷つけるなよ?食べれなくなるからな。
んで腹の中を洗浄する。先の洗浄は皮をはぎ取ってからでも大丈夫だぞ、汚れ具合によるがな。あとは手足も腹からの線にそって剥ぐ。これであとは骨にそって肉を分割して完成だ。よし、一匹やってみろ」
すごく手際がいい…あと、剥いだ皮が高級なとこに飾ってあるような形になっている。見ている分には簡単そうに見えるんだけど…自分でやるとなるとこれがまた難しい…内臓は傷つけなかったんだけど刃がなかなか通らずまっすぐに裂くことができなかった。解体用のナイフっていうものがあるらしいから次は準備しておこう…
「皮は
手数料みたいなのがやっぱあるんだね。魔物の種類によって解体が異なるだろうし、図書館で調べるのもありかも?時間できたら見に行こうかな。
「よし残りもちゃっちゃとやるぞ、大物もあるし時間かけすぎると血の匂いに釣られて魔物が来ちまうからな。」
「はい!わかりました!」
僕らは集中して解体をした。熊はさすがに2人でやってもそれなりに時間がかかったが手際が良くなってきているとザインさんに褒められた。鉱石が手に入ったらナイフでも作るかなぁ…熊の爪も鋭くて使えそうだけど、金属より魔力の通りが悪くてすぐに加工は難しかった。時間があるときに成型するかな。
思ったんだけど、魔力の通りが悪いのって魔法使いの素材に向かないってことだよね。まぁ抵抗が高いって捉えると魔法に対する防御はありそうだけど…そのあたりはよくわからない…逆に金属で魔力の通りが良いものは武器に魔法運用の補助に使えるとかかな。宝石や魔石で属性を増幅させられそう。
解体現場の穴に水を流し埋める。んで周りの土と混ぜ合わせてっと。作業が終わり、まだ時間があるようだからザインさんは採取の護衛を引き受けてくれた。
やっぱり状態異常を引き起こす素材は素手で採取はしないようだ、手袋を道中で作ってよかった…あと、属性を合わせないと劣化してしまう草花があるらしい。
ちなみに、状態異常にはどう対処するのか聞いた。神官がいれば解除、いなければ装備で耐性を上げ薬で対処らしい。耐性系のスキルはあるのか聞くと、笑いながら「そんなのがあったら自ら毒や麻痺になって身に着けるわ!」と言っていた。残念ながらないらしい。
ある程度の数を確保できたところで辺りが暗くなってきた。
「それじゃそろそろ野営地に戻るか。夜は魔物どもが活発になるから油断するなよ?」
小屋に戻るとリディさんとアグスさんがスープを作りながら出迎えてくれた。
「あ、戻ってきた!おかえり、簡単なスープだけど作っているわ。」
「おうありがとよ!んじゃこっちは肉でも焼くか。」
囲炉裏の片方でスープの準備をしていて、もう片方に鉄板を敷く。
僕は魔力で肉塊を持ち上げ、風の刃を作り食べやすい大きさに裂いていく。脂分の多いものを先に焼き、鉄板に油を敷いていく。あとはある程度の肉を焼いて、乗り切らない分は買っておいた小皿に置いておく。
「おー、ワタリって料理も出来るのか?ずいぶん慣れているな。」
「向こうの世界では一人暮らしが長いですからね、このくらいなら…そういえば、向こうだと熊肉って結構臭みがあるんですがこちらではあっさりしてますね。」
「そうなの?この世界、プラネテスでは基本的に魔力が多く含まれているものは美味しいわよ。魔力が多い=強いってなっているから一般の人達はなかなか口に出来ないけれどね。それに時間が経つにつれ魔力が抜けて味も落ちるし。」
なるほど、改めて考えると流れ人のバックって優秀だよね。品物の品質保証さえできれば商人としてやっていくことができそうだし。
ご飯を食べ順番に風呂に入った後、見張りの順番を話し合った。
「僕も見張りに参加したほうがいいと思うのですが…」
「いや、たしかに野営を教えるって依頼だがこれは護衛でもある。依頼人に苦労させちゃダメだ。」
アグスさんの言い分は尤もだ。
「そうよ。見張りも3人で回せば厳しくないし、ワタリは遠慮せずに休んでいいわよ?」
「だな。んじゃ、順番はアグス、リディ、俺の順でな。小屋である程度防衛は大丈夫だがしっかり見張れよ?」
「それじゃお言葉に甘えます…ありがとうございます!」
「気にしなくていいわよ?それに見張り以外の時間はきちんと小屋で休めるし、お風呂に入ってさっぱりしたし!」
「普段の野営より快適だからな。苦労より気楽さ。」
ほんと良い人達に恵まれたなぁ…もしかしたら女神様のお導きかもしれないな。時間が出来たときに教会にでも行って、ちゃんとお祈りしておかなきゃ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます