第13話 引きこもりからの脱却
ギルドに戻ってきてから生産を始めて3日目、こちらでの夜をログアウトして制限に引っかからない様に注意しながら作業を続けた。
途中でおかわりもってくるテオには絶望したけれど…でも、そのおかげか街中の雰囲気も改善に向かっていると聞いた。テオから聞いた話によると、流れ人が次の街に流れ始めたらしく、この街の負担が減ったらしい。隣の街、大丈夫かな…?
作業にも慣れ、最大魔力が増えてきたのを実感する。属性変換も最初は上手くいかなかった…魔力を維持しながら属性を変えるというのが意外とできなく、床を何度も水浸しにしてしまった。魔法使いって属性をどうやって変えてるんだろ…杖の補助でなのかな?杖で属性変換か維持を補助してもらってって気がする。
体内で変換は影響が出そうだから、僕的には手を増やす感覚で成功したかな。手といっても概念的なもので意識を伸ばすってイメージだけどね。
「ワタリ、お疲れ様!ポーションの制作はとりあえず一段落で大丈夫だよ!
それと…これが報酬の金額ね!」
わぉ…2か月くらい働かず宿に泊まれるほどのお金なんだけど…材料費抜いてこれって多い気がする!その分大変だったけどさ…
「ありがとうございます!また手伝うことがあったら言ってください。」
「うんうん、手つきや魔力操作がスムーズになっているし…今回の成果としてランクをF→Dに変えるね、ほんとはもっと早くEにしていてもよかったんだけどタイミングが悪くてね…」
たしかに、間が空いてログインしてからずっと制作というか不足分を補っていたもんね…
「ちなみに、ランクアップの条件はEがポーション制作を安定して行える、Dが属性変換と一定以上の魔力操作。Dからは一人前ということで暴走せずに制作が行えることを示すよ!」
「ありがとうございます!これからも精進しますね。あ、Cランクへの昇級の条件って教えてくれるのでしょうか…?」
「大丈夫だよ!Cランクへは状態異常を回復する薬と逆に状態異常にする薬、魔力を回復する薬を一定数作ることだよ!」
…あれ?植物図鑑を見た限りこの街の周辺にないものばかりじゃないかな…?次の街に行くってことなのか、それとも…
「テオさん、これって自分で採取しないといけないって縛りありますか?冒険者に依頼して取ってきてもらうとか…」
「よく気が付いたね!ちゃんと群生地の分布も把握できているみたいだし。
そうだね、依頼の仕方も覚えて欲しいけど今回は自分での採取が目的かな、自生しているものをちゃんと採取できるかの方が重要!」
なるほど…でも流れ人も次の街に行くのに苦労したみたいだから、戦闘を行ったことない自分が行っても大丈夫かな…?
「護衛を頼むのは良いでしょうか?僕一人だと戦闘行ったことがないし、野営など知識はあるけれど実践したことがないので…」
「もちろんそうしてもらいたいかな!護衛は冒険者ギルドで依頼なんだけど、相場などはそっちで確認してね。とりあえず、今日中に護衛依頼するのと準備だけはしといてね!」
今までテオにおんぶに抱っこ状態だったからこれからはちゃんと自分でしなきゃ!
でも、寂しくなるなぁ。この街で一番仲が良い人と思っているし…フレンドから連絡出来るけど顔合わせて話せれば一番いいからね…
街ごとの転移システムは今のところないみたいだから戻ってくるのに護衛とそれなりの日数もかかるだろうし。
あとでダメ元で転移の魔道具について聞いてみるかな?
とりあえず僕は日課である図書館前までの散歩に行った。
いつ見てもここからの眺めは素敵だなぁ、しいていうなら領主館の庭園は間近で見たかったけどね。
「こんにちは、ワタリ。近々街を出るんですって?」
忙しい合間だったけれど、ラナさんとの散歩はずっと続けていたんだよね。根を詰めすぎると作業が雑になったりするから、適度な休憩挟まないとね!
「そうですね…ランクはそこまで気にしてはいないのですが、まだこの世界を知らないので…知識じゃなく実践で学ぶことも多いと思いますし。
…一度でもいいから領主館の庭園見たかったな…」
なにやらくすっとラナさんが笑っている。
「あら?ワタリ、庭園に興味がありますの?それなら今から行きませんこと?もちろん、他に先約がなければですが。」
「今日は冒険者ギルドに護衛依頼するくらいなので時間はありますよ。って行き成り行っても大丈夫なのでしょうか!?」
「大丈夫だと思いますわ、来客予定とか入っていなかったと思いますし。それに、庭に入るだけなのですから。」
僕達は連れ立って領主館に向かっている。メイドさんみたいに一歩引いて歩いたほうがいいのか不安で後ろを振り返ると、大丈夫ですよお嬢様のお客様なのですから堂々として、っとこっそり教えてくれた。というか、メイドさん見えているのに存在感がないんだけど!?主人を立てるってこんな技術まで必要なのかな!?
近くで領主館を見るとほんと大きいなぁ…貴族街に入るのも初めてだったからすっごくビクビクしてたよ…って、ラナさん入ってっちゃった!?これって付いて行っていいのかな?
「どうしたのワタリ?ほらこちらへ来なさい?」
「えっと…勝手に入っていっていいのでしょうか…何か罪に問われたりしません…?」
ラナさんはくすりと笑い
「あなたが罪に問われるなら誘った私も同罪になりますわよ。ほら、こちらが庭園ですわ。」
付いていこうとした時、領主館から執事らしき人が出てきた!
「この方は私の客人です、庭園でお茶会をしますので準備なさい。」
ラナさん!?何かすっごく貴族らしいんだけど!いや、元々貴族なんだけど…何言ってるんだ僕は…
「畏まりましたお嬢様、この方がいつも話に出て来る流れ人ですね?それでは失礼致します。」
え、領主館の執事がラナさんをお嬢様って?え…?まさか
「なに百面相しているのワタリ。あ、そういえばあなたには言ってなかったわよね、それでは改めて。
私がこの街の領主の娘、ラナ・アルファスよ。よろしくね?」
ラナさんは悪戯が成功した小悪魔のような笑みを浮かべていた。
まさか普段から一緒に風景眺めていた貴族の子が領主の娘さんだったとは!
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