第14話 人は視線に敏感

「ほら、ワタリこちらへ座って。」


 と、ラナさんは席を進めて来る。


「ラナさんも人が悪い…教えてくれても良かったじゃないですか…驚かせようと企んでいました?」


「大丈夫とは思っていても自衛のためにってことよ?それに、庭に来たいと思われてなかったら正体明かしてたか分からないもの。」


 まぁ…身の安全のためにあまり地位が高くない様に振る舞う必要もあるんだろうね…ビックリはしたけど、正体明かしてもいいって思われたのは嬉しいかな。

 あたりを窺う余裕が出来て、改めて庭園を拝見させてもらう。色とりどりの花が咲き誇っている。季節的に春らしいので、地には芝桜、壁沿いに雪柳、門の近くにあったのはハナミヅキかな?たしか花言葉で永続性っていう…貴族的に合っている気がする。他にもいろいろ咲いているけど分からないや…


 いつのまにかメイドさんがお茶の準備をしていたらしい。


「堪能しているみたいでこちらも嬉しいわ。あとで庭師を褒めてあげなきゃ。」


「ほんと、こんな間近で見せてくれてありがとうございます。お茶もとてもおいしいです。」


「旅立つ大事な友人の頼みですもの。それに、前に薬草に関しての案件が功を奏してますし。」


「あ、そのことで聞いてみたいことがあるのですが…この世界って転移の魔道具とかあるんでしょうか…?」


 ラナさんは少し考えるような顔をした。


「一応、遺跡などから出土されることがありますよ?ただ、国が管理し研究しているようです。小型化や一般普及にはまだかかりそうですが…そのあたり流れ人達の探索次第と思っております。」


 冒険者はそういう意味で現地人から期待されているのかぁ。確かに復活する人が遺跡やダンジョンなどに挑戦を続ければ新しい発見とか見つかりそうだもんね。


「なるほど、そのことがあるから流れ人を無下に出来ないという部分もあるのですね…難しそうだ…気軽に戻ってこれるなら今お世話になっている錬金術ギルドやラナさんに会いに来やすいと思ったので。」


「ふふ、それは嬉しいわね。フレンドから気軽にメッセージ送って大丈夫よ?

公務とかまだ年齢的に携われないので時間の余裕ありますし、父の補助的なものしかないので。」


 普段顔合わせるのがテオとラナさん、メイドさんくらいだからなぁ…いきなり親しい人達と交流がなくなるのは寂しいし。早く転移が実現してほしいな。


「それじゃそろそろお暇しますね、お茶ありがとうございました!これから冒険者ギルドに寄って護衛依頼出してきます。」


「ええ、気を付けて行ってくるのよ?それに、この街に戻ってきたら土産話楽しみにしているわ。」


「そこは普通にメッセージでやり取りしている可能性もありますよ?

 それではまた!」


 気軽に送っていいって言ってたもんね。お言葉に甘えちゃおう!


 

 -冒険者ギルド-


  うわー…錬金術ギルドと違い混んでるなぁ…とりあえず、向こうが素材の買取と雑貨品が売ってて、あっちが窓口かな?なんか受付片寄ってるんだけどなんでだろ…?それになんか流れ人が併設された酒場から受付眺めている気がするんだけど…

 うん、とりあえず空いてるほうに並ぶかな、少ないなら多少質問をしても咎められないだろうし。


「こんにちは、依頼を出したいのですがこちらの窓口で大丈夫ですか?」


「ええ、大丈夫ですよ?どんなご用件でしょうか?」


「隣街…ええっとベスタ周辺の採取を行いたいのですが道中と現地での護衛、野営のアドバイスを頼みたいのです。」


「分かりました。馬車と歩き、現地での護衛日数などはどうしますか?」


 んー…たしか歩きでも順調にいけば半日だっけ、滞在はどうしよう?向こうにも錬金術ギルドあるから作業は出来るだろうし、いざとなったら向こうでも護衛頼んで戻ってくればいいかな?


「でしたら徒歩、採取時の護衛日数は1日半でお願いします。」


「承りました。前金で1万ユル、成功報酬で2万ユルになります。

 ベスタのギルドで報告おねがいします。それと、今日から依頼を貼り出しておきますので、明日またギルドへいらして下さい。その後、護衛と予定を調整お願いします。」


「分かりました。それではまた明日来ます。

 そういえば気になったのですが、なぜこちらの窓口は空いているのでしょうか…?」(コソコソ


「逆にこっちが聞きたいですよ!?流れ人はなぜか隣の子のとこに並ぶんですよ!! しかも併設されている酒場から仕事もせず眺めている人も多いですし!」


 そう言われて隣の受付の子を見た。…あぁ、なるほど…確かに流れ人というか一部の人が好きそうな属性を二つも持っているのね…というか、絶対これ苦情入るよね…


「僕としてはすぐ受付できて良かったし、丁寧に解説してくれて助かりましたが…あからさまな視線と列はやばいですね…」


「粗暴な人や不躾な視線を送る人は何回も衛兵呼んで捕まえてもらいましたよ…今残っているのは盗み見ている人ばかりですね…あれで気づいてないと思っているの?あの子かなり我慢してるのよ?あなたも気を付けてね?」


「わ、わかりました!まぁ…当分この街離れるので僕にはどうしようもないですが…戻ってきたときも酷いようでしたら何か考えますね?それでは失礼します。」


 そう言い僕はギルドから出た。

 さて、これで用事は済んだけど護衛の人がどうなるかだなぁ…良い人にあたるといいけど、指名依頼じゃないからなぁ。っと、あれ?あの人達ってもしや?


「お?もしかしてワタリか?久しぶりだなぁ元気だったか?」


「お久しぶりですザインさん。冒険者って街から街へすぐ移動しているイメージなのでまだこの街にいるとは思っていませんでしたよ?」


「あー、確かにそのイメージで合ってるぞ?これまで残っていたのは流れ人の動向を確認していたからだな。この街は結構落ち着いてきたみたいだからそろそろ離れるが。」


「そうだったのですね。僕もギルドからベスタ周辺で素材を採取し、錬金の練習をするよう言われたので近々移動になりますねぇ…」


 ザインは何やら思案し、頷いている。


「あぁ、だから冒険者ギルドから出てきたのか。大方護衛依頼ってとこだろ?もしよかったら俺達が引き受けるぞ?時期的にちょうどいいしな。」


 そう言ってくれるのはありがたいが…この人のPTって結構な実力者じゃないかな?指名依頼受けられるランクみたいだし、今回の護衛依頼は拘束時間もそれなりだし…


「申し出はありがたいのですが…依頼内容が野営のアドバイス、ベスタまでの護衛と周辺での採取護衛で期間1日半も拘束ですよ?それに、ランク高いPTだと金額が相場より上がると思いますし…」


 そこまで言うと、ザインは豪快に笑った。


「わはは!金なんて気にしなくていいぞ、今は困ってないしな。それよりお前について行ったほうが面白い気がするからな。動向チェックもしているってことでちょうどいいだろ!」


「それなら僕としても助かりますが…ありがとうございます!受けてくださるなら、今日を準備時間にして明日、ギルド前で待ち合わせて出発でも大丈夫でしょうか?」


「それで大丈夫だぞ。それじゃ俺は依頼受けて来るわ!」


 ザインさん達が護衛してくれるのはほんと助かる、まったく知らない人じゃないし話しやすく、実力のあるPTだからね。この機会に冒険者の旅の仕方を教わるのもいいね。


 食料と回復ポーション、旅がしやすいような靴と着替え、水…は魔力で出せばいいか。インベントリにかなり入るし寝袋とテント準備しておこうか。生産練習したものもいっぱいあるし、なにか役立つかな。


 明日からの旅が楽しみになってきたよ!

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