第12話 空気が張りつめている…?

 さて、っと…今日も頑張って反復練習だ!仕事は納品したばかりで期間空くから当分ゲームに集中出来るね!


 おや?下の階から声がするんだけど、僕の他に誰か来たのかな?珍しい…どうしよ、今出て行かないほうが良いよね?

 しばらくして声が聞こえなくなった。


「テオさんおはようございます!」


 テオはこちらを振り返り不機嫌から笑顔になった。


「おはようワタリ!よく寝れたかな?今日はなにか予定あるかい?」


「予定としては図書館でこの間習ったことの肉付けと復習ですかね、その後は特にないです。もしやさっきの声となにか関係あります…?」


「あー…やっぱり聞こえちゃってたか…なんでも回復ポーションの在庫が尽きそうなんだって。大量に必要と思ってたから準備していたけれど、それすら尽きそうだなんてね…」


 それは…たしかに薬師や錬金術師が多ければ需要と供給のバランスが取れていたんだろうけど…冒険者が多いもんね…なら


「それでしたら図書館での用事が終わりましたらポーション制作しますよ。自分のスキルアップにもなりますし。」


 テオはすごく喜んで


「ほんと!?助かるー!あ、材料費を抜いて納品額との差額はアルバイト代として渡すね!」


 お世話になっているからお金は気にしなくてもいいんだけど…こういうとこきちんとしてたほうがいいんだろうね。


「それでは早めに済ませてきますね、行ってきます。」


っと、そういえばラナさんに連絡送っておかないと!また怒られちゃう…今日は図書館で勉強してますっと!



 図書館に着いたんだけど、街中結構ギスギスしてた気が…帰りとかちょっと注意しないといけないかも…

 まずは前回のおさらい、魔力操作を行いながら本を読む…この世界の金属種類、一般的な魔物の素材用途、調合素材と調味料も見ておくかな。



「こんにちは、お隣いいでしょうか?」


 …ん?あれ、ラナさんがいる。

 外で過ごさないから今日は来ないと思ってたから意外だ。机に広げた本をどけて


「はい、こちらへどうぞ。」


「失礼します、それにしてもお久しぶりですわね。」


「とは言っても、数日来れなかっただけですが…このあたりの感覚がやはり違うんでしょうね。そういえば街の様子がなにやらおかしかったのですが。」


「あー…ワタリは知らないかしら?流れ人による商品の買い占めが起きているのですわ。」


「錬金ギルドでも制作の依頼が来ていたのはそれのせいなのかな…」


「ですわね。薬草がかなり納品されているようなので素材はむしろ余っているくらいで、足りないのはポーションの生産者ですわ。ただそれも領主様から薬師、錬金術師に依頼が出ていますし、隣町にも手配していますから、数日中で収まると思いますわ。」


 なるほど…多めに準備してて足りなかったから、とりあえずは制作してもらって輸送してもらうってことかな。住民としては値段が下がるのは嬉しいけど、魔物を狩れない人達からすると薬草の価格が下がるのは死活問題だろうなぁ…

 でも、根こそぎ採取してない…よね?いくらなんでも。群生地だとしても荒れ果てると思うけど、聞いてみるか。


「すみません、ポーションに使う薬草って年中とれるのですか?それだけの量を冒険者が採取したら次が取れなくなるとか…?」


 疑問に思ったことを尋ねると、ラナさんははっとした顔になり


「そうですわね…そのあたり対処を始めなければいけませんわ。薬草は基本的に魔力が豊富な場所に生えるのです。街中で育てる場合、魔力の濃度が低めなので生育が難しいかもしれませんわ。本来であれば2~3週間ほどで育ち切りますが…」


 やはり育てるのが難しいようだ。現実世界と同じようにいくらか国有地で確保するなどはどうなんだろ…


「ここの領主様の私有地で苗を育てるのはどうでしょう?魔力が薄いのなら、僕とか魔力操作の練習で発散させるなどもできますし、水に魔力を浸透させるか水属性の魔石を等間隔で並べて、励起させ水を流したりとか。」


 ラナさんは思案顔でブツブツと口ずさんでいる…


「…うん、そうね。その中から大丈夫そうなものを領主様に意見を上げてみるわ。ありがとうワタリ、あなたのおかげで住民の生活が守れるわ。」


「いえいえ、僕は思ったことを言っただけで…それに元の原因は流れ人ですし…というか足りないのは回復ポーションだけなのですか…」


「そんなことはないわ。 あなたのおかげで救われる人がいるんだから、卑下しちゃだめよ。

 流れ人の治癒士って、魔力を使い切るのが早い上に魔力ポーションも使わないのですって。杖で魔物を殴っている治癒士をよく見るって噂になっていたわ。」


「魔力ポーションが高いからでは?」


「いえ、魔力は世界に満ちているの。それをうまく取り入れればすぐに魔力切れを起こしたりはしないわ。ただ、自分の魔力の質に変換しないといけないから、魔力の扱いを知らない流れ人には難しいのかもしれないわね。」


 そういえばそうだよね、どこから魔力が発生しているのか分からないけど、現実世界でいうオドとマナの解釈でよさそう。それなら自然から取り入れることもできるね。


「なるほど、そうだったのですね。夜寝てて回復しているのは自然体になって取り入れやすくなっているのかぁ。それなら意識していたら効率もあがりそうですね。取り入れる抵抗を低く意識する必要ありますけど…」


「そうね、それで合っているわ。っと、話し込んでいたら結構時間経っていたわね。それじゃまたね。」


「はい、こちらこそありがとうございました。街中は不穏な感じなのでお気をつけて。」


 一段落したし、僕もギルドに戻るかな。というか、流れ人ってまだ新しい街見つけてないのかなぁ…運営的にはもうとっくに人が分散して物資の負担を減らす方針だったのかも?

 まぁ、僕的にはこのスローライフ感好きだけどね。錬金慣れてきたら一軒家の工房買って畑弄りしながら過ごすのも楽しそうだし。


「おかえりーワタリ!薬草いっぱい準備しといたよ!ガラス瓶はそっちの箱、水は修行もかねて魔力を水属性に変換してね!んで、はい魔力ポーション。」


 ギルドに戻るなり作業室へ連れていかれ、目の前には草、草、草、瓶、魔力ポーション…顔がちょっとひきつっちゃってるかも…


「ちょっと多く見えるかもしれないけどワタリなら大丈夫って思っているから!一緒に頑張ろうね!二人でやればすぐだよ!魔力ポーションは遠慮せず飲んじゃって!消費期限ギリギリの割引品だから!」


 テオさん、あなた鬼ですか…でも、この素材が一人分じゃなくてよかっ…


「あ、わたしは隣の部屋でするからここの素材全部つかって大丈夫だよ!」


 そう一言付け足すとテオは部屋から出ていく。 

 うん…なんとなく知ってたさ…


 その後、僕は一心不乱にポーションを作っていった。

植物鑑定の効果なのか薬草の名前が[いやし草]だったのが印象に残った…

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