第6話 転生1日目を終えて

 登録も終わったし僕は次の目標へ移る。


「テオさん、この街に図書館ってありますか?言葉は理解出来るのですが文字が分からなくて…この世界の歴史や法則など知りたいんです。」


「文字だったらわたしが教えてもいいけど、そういうことじゃないんだよね?この洋館でてからまっすぐ向かうと少し丘になっている場所に図書館があるよ!」


 頼めば文字など教えてもらえるだろうけど、調べもせずにすぐ人に頼るのは癖になって後々困るだろうからね。出来ることはまず自分で試して、それでもだめならアドバイスをもらうってした方がいいと考えている。

 違う方面からのアプローチによって見えて来ることもあるだろうし!


「うんうん、君の考えていることはなんとなく分かるよ。錬金術師は思慮深く多角的に物事を見ないといけないからね!」


「図書館を利用するにあたって注意点などありますか?資格とか閲覧禁止のものがあったりとか。」


「ん-、特になかったと思うよ。利用料は1時間ごとにかかるけど大した金額じゃないし。本を汚さなければ大丈夫!

 禁書とかはこの街じゃなくもっと大きな場所にまとめられているから問題ないよ!分からないことがあったら司書さんに聞けばいいよー!」


「何から何までありがとうございます!今日は図書館で色々と調べて明日から錬金術について触れていきたいと思います。」


「はーい!夕ご飯はこちらで用意するから楽しみにしててね!」


 そういえば夕ご飯のことも考えていなかったな…今日は用意してくれるみたいだけど今後は手伝ったほうがいいのかもしれない。一人暮らしでそれなりに作れると思うけど、この世界特有の素材が分からないから教えてもらいながらじゃないと出来ない可能性が…


 考えながら歩いていると噴水広場のほうが騒がしくなっているのが見えた。

あれ?もしやプレイヤーが合流したのかな?最初より人が多いし、僕と同じ格好している人達がいる。こう客観的に見ると流れ人って浮いてるよね。

 こうしてみると流れ人の服装って奴隷に見えなくもないし…何より髪色がカラフル!一発で流れ人って分かるね…


 何やら声を張ってPT募集しているようだけど、僕には関係ないかな。

彼らを横目に見ながら丘を登っていく。


 

 おぉ…転生してきた所からみた風景もよかったけど、街中を上から眺めるのもいいね!貴族街が整然としてるし、一番奥にあるのは領主館かな?

 一際大きな屋敷が目に入った。庭園には色とりどりに花が咲いている。

 出来れば庭園を見学したいけどさすがに無理だよね…


 後ろ髪を引かれるように図書館へ入っていく。

 一歩入っただけで、歴史を感じるような匂いがする。本の匂いっていいよね、古いものほど味わいがあるし。晴れた後に降る雨の匂いも好きだけど。


 とりあえずカウンターで司書さんに聞いてみるかな。


「すみません、僕は流れ人で今日この世界に来たのですが文字を覚えるのにいい本ってありますか?」


 あれ?司書さんが困惑しているけど…絵本とかないのかな?


「流れ人さんが図書館を利用するのにビックリしましたが…文字ですか、それなら幼児向けの絵本が右奥側にありますのでそちらをご覧ください。ちなみに1時間20ユルとなります。」


 ユルというのはこの世界の通貨単位らしい。屋台での食べ物が80ユル、宿屋1泊が4000ユルだから、元の世界での格安宿と同じくらいなのかな。流れ人にとってこの世界での食事は嗜好品みたいだからアプデで満腹度やバフ効果がくるまでは気にしなくていいかも。


 お金を払って絵本の棚に向かう。童話と英雄譚があるけど…英雄譚って一方から見たものだからあまり鵜呑みにしたくないな…流し読みするくらいにして文字覚えるのは童話にしとこっと。


 この世界の文字は母音が5で全部で52種らしい。ただ大文字小文字で分けられるようで、英語と同じ考え方で良さそうだ。あとは形を覚えればなんとかなりそう。

 単語は英語のを少し崩した感じでぱっと見で意味が分かるのは嬉しいな。これならすぐに理解出来そうだ。他に植物図鑑や生物図鑑も見て見るかな。


:::::::::::::::


「すみません、そろそろ閉館するので退去よろしいでしょうか?」


 気が付くともう外は日が落ち始めていた。


「あ、もうこんな時間ですか。すみません本を片付けたら退館します!」


 生物図鑑にはこの世界の動物や魔物が沢山載っていて、植物図鑑は食べられる野菜、基本的な製薬素材が載っていた。念のため法律に関して調べてみたが、現実と変わらなかったので割愛。

 ただ、貴族階級があるため無礼な態度をとると痛い目に合うらしい。しかし横暴な貴族にはそれ相応の処置が取られるため、今は階級にあぐらをかいている者はまずいないようだ。


「夜の街並みは一気に雰囲気変わるなぁ。」


 錬金術ギルドに戻る際に噴水広場まで足を延ばしたのだけど、冒険者達は酒場や宿に向かっている。街の南側は宿場、西が冒険者区域、北は現地人の家があるようだ。

 周りの会話に耳を傾けると、稼いだ金の使い道を話し合っているようだ。


「おうおう、今日もいい具合に稼げたしちょっと娼館に寄っていかね?」


「お前またかよ…ここんとこ毎日じゃないか?

嫁さんに貢いだほうがいいんじゃねぇの?」


「嫁さんが今身重なの分かってるだろ?命の危険で性欲高まるんだししっかり発散しないと嫁さんに心配かけちまうじゃねぇか。」


「そこは自重して生まれた子の養育費にすべきだろうが…ほら、今日はやめとけ、帰るぞ!」


 そう言って男達は住宅街に消えていく。そうだよなぁ、この世界の人達だって生きているんだからそれ関係のお店だってあるか…

 このゲームは全年齢だけあって性的なものは厳しく処罰されるが、ミラルドを買う際に年齢を確認されるので成人していればそれなりのサービスが受けられる。未成年は服も肌着とスパッツが脱げない、成人していると個人の設定で脱げるように出来、娼館も利用できる。

 ちなみに成人したものが未成年に不快な物を見せたら警告される。そのあたりはミラルドが感情を読み取るから、軽いセクハラと思っても相手によってはアウトになる。


 とりあえず夜の街を一通り観察できたしギルドに戻るかな。


「お、ワタリお帰り!ご飯もうすぐ出来るよー!」


「ただいまテオさん、本を読んでたらいつの間にか時間が過ぎてたよ…」


「あははwその集中力は重要だから良いことだと思うよ!それじゃ並べるから席について。」


 スープとサラダ、肉料理とパスタだ。おいしそうなんだけど匂いが独特だ、もしや香草料理ってやつなのかな?


「テオさん、これってもしや香草というか薬膳料理ですか?」


「そうそう!よくわかったね!そちらの世界にもあったのかな?これは薬膳料理で錬金術や薬学で使う素材を用いてるんだよ、匂いはちょっと独特だけど味は保証するし体に良いよー!」


 なるほど、一口食べて鼻へ匂いが突き抜けていくけど病みつきになるかも?かなりおいしい。それになんか体の奥から疲れが取れてく気がする。


「ほんと美味しいですね、それに疲れが取れていく気がします。これって一定時間身体能力が伸びたりするのですか?」


「本来の効果はそうなんだけど、効果が表れないようにしているよ。ドーピングみたいなものでメリットもあればデメリットもあるのがバフが付く料理になるんだよ。これも錬金術によって各素材の性能を引き上げたりかけ合わせたりしてるんだー!」


 なんかすっごい重要な情報じゃない…?バフ料理って錬金術によってつくるのか…

まぁ考えてみたら料理と薬剤をかけ合わせてるんだしおかしくないか。


「そーいうことが出来るのですね、すごく勉強になります!」


 今日あった出来事を話しながら料理を食べていくと、結構な時間が経っていた。


「ごちそうさまでした、とてもおいしかったです!」


「はいおそまつさま!あとは風呂入れてあるよー!明日からはお湯を出す練習も兼ねるからしっかりと休んでね!」


 お風呂に向かうと、旅館の温泉かなって思うほど広くヒノキっぽい木材の香りが漂っていた。設定でこのインナー脱げるように出来るけど…このままでいいか。ちょっとすっきりしないけど。


 ベットも用意されていて至れり尽くせりで申し訳なくなってくる…出来ることなら自分でするように心掛けなければ…!


 それじゃおやすみなさい。

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