第二話 別れ

 蓮と一緒に住んで2年が経った。最近は喧嘩が多い。原因も、ほんの些細なことだ。デートの約束を疲れたとからといって無しにしたり、会社の同僚と遅くまでお酒を飲んで帰りが遅かったり。それでも私は何も言わなかった。そんなことで喧嘩をしたくなかったから。それなのに蓮は、私の帰りが遅かった時や、約束を守れなかった時は必ず怒ったり、不機嫌になる。

 そして今日、蓮との会話で私は限界を迎えた。

 「葵、昨日ファミレスだ一緒にいた人だれ?」

 「昨日?ああ、あれは会社の先輩だよ。仕事で納期が近くて残業になったんだけど、うちの会社19時には強制的に帰らされるから、近くのファミレスで手伝ってもらってただけで…」

 蓮は私の話を遮るように切り込んでくる。

 「先輩って、あの男しかいないのかよ」

 「いや、女の人もいるけど、みんな帰っちゃってて頼めるのあの人しかいなかったから」

 「ほんとかよ。ほんとは最初からあの人に頼むつもりだったんじゃないの?お前昔からイケメン好きだし」

 なにそれ。そんなこと思ってたの?

 蓮に信用されてないことや、今まで我慢してきた感情、言いたかったことが溢れ出た。

 「どうしてそんなに疑うの?ていうか、蓮だって友達と飲んで帰り遅い日多いじゃん。それも本当は女と飲んでるんだじゃないの?デートの約束しても疲れたからって行かなかったり、友達を優先したり、私だって我慢してきたし、蓮を信用してるから疑わなかったし。なのに蓮は私のこと信用してないの?自分勝手すぎるよ。自分ばっか言いたいこと言って…」

 言いすぎてるかもしれないと思ったけど、止まらなかった。

 「私たち、合わないのかもね。もう蓮のために我慢するのも疲れた…。もう、終わりにしよう」



 今日は仕事が早く終わった。葵も遅くなるって言ってたし、外で食べて帰るか。

 ファミレスが近づくと、ガラス越しに葵が知らない男と2人でいるのが見えた。

 「誰だおの男、最近帰りが遅いのは会社で残業だって言ってたじゃないいか」

 次の日も、その次の日もあの男とファミレスにいるところを見た。こんなに毎日会ってるなんておかしい。


 葵が帰ってきたら問い詰めた。あの男は会社の先輩らい。残業で会社にいられないからファミレスで手伝ってもらっていた。

 しょうがないことだとわかっていた。その場で、ああそうかと終わらせていればよかったのに、つい喧嘩腰で言い返してしまった。

 そして、葵は今まで我慢してきた、いや、俺が我慢させてきたことを。今までに聞いたことがない程の声量で言い返してきた。

 「もう、終わりにしよう」

 一瞬驚いた。が、しかし、

 「ああわかったよ、終わりたいなら終わらせてやる。出ていく」

 葵から別れを告げられた俺は怒りに任せてそう言い返し、すぐに荷物をまとめて家を出た。


  

 別れを告げ、とっさに家を出た。

 数時間後、家に戻るともう蓮の姿はなかった。本当に終わったんだ。クローゼットや収納からは蓮の物だけが無造作にとられていた。もうこの部屋には誰も帰って来ない、これからは私1人の家。そう思うと、一気に部屋が広くなった気がして、孤独になった気分だった。

 「いいんだよあんなやつ。もう悩まなくてすむ、蓮のことで泣かなくてすむ。よかったじゃん。きっといつかは忘れるよ」

 そう自分に言い聞かせた。





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