第9話 HPについて聞きました
HPが回復した。
なんとなく意味がわからなくもないが、ふたりのあいだに認識のズレがあると怖いので、賢人はこれを機にいくつか確認しておくことにした。
「ひとつ聞きたいんだけど、HPってなに?」
「えっと、それなら見てもらったほうが早いわね」
そう言ったあと、ルーシーは手に持っていたカードを見せた。
**********
【名前】ルーシー
【レベル】24
【HP】82/126
【MP】32/63
【冒険者】F
【魔術士】G
【治療士】G
**********
スマートフォン大の半透明な板に、文字が浮かび上がっていた。
「これは
(……なんで読めるんだ?)
ルーシーの説明を聞きながら、賢人はそんなことを考えていた。
加護板とやらに表示された文字は、日本語ではなく、アルファベットですらなかった。
少なくとも賢人が見たことのない文字だったが、なぜが当たり前のように読めた。
ただ、そうなるとさらにおかしなことがあったのだが、それはあとで聞くことにして、ルーシーの話に耳を傾けた。
「このHPっていうのは、冒険者を守ってくれる加護の値ね。ダメージを受けると減るのよ」
「0になったら死ぬ、とか?」
「怖いこと言わないでよ。0になったら加護がなくなるのよ」
「加護がなくなるとどうなる?」
「HPが0の状態でダメージを受けると、怪我をしたり、最悪死んじゃったりするわね」
つまりHPが残っていれば、いくらダメージを受けても身体に怪我を負うことがないようだ。
オークとの戦いでルーシーが派手に殴り飛ばされたにもかかわらず、ケロッとしていたのにはこういう事情があったわけだ。
「でね、さっきまでHPはひと桁だったんだけど、いま確認したら6割以上回復してたからびっくりしたのよ!」
HPは時間経過で回復するが、動いたり戦ったりと体力を消耗するような状況下ではかなり回復速度は遅くなる。
「ここまでの行動と時間を考えても、せいぜい2割に届くかどうかってところのはずよ」
「つまり、ようかんを食べたから回復したってこと? 食事なんかで回復することはないのか?」
「回復効果のある食べ物なら少しはね。でも普通は
ルーシーはなにかを思い出したような声を上げると、ペットボトルを手に取り水を一口飲んだ。
そして、再び加護板に視線を落とす。
「やっぱり! ほら!」
再び向けられた加護板を見ると、HPが10近く回復していた。
「ただのお水じゃないと思ったのよ! っていうか、これってポーションじゃないわよね?」
「普通の水だけどな」
「普通のお水にHPの回復効果はないんだけど……」
とりあえずHPについてはなんとなく理解できた。
水やようかんでHPが回復したことについては、ルーシーも答えを知らないだろうと思ったので、賢人はもうひとつ気になっていることを聞くことにした。
「なぁ、もうひとつ聞きたいんだが、HPってのはヒットポイントの略なのか?」
「ひっと……なに?」
「
「えっと、うーん……どうなのかしら? あたしたちは神代文字をそのまま読んでるだけだから……。偉い学者さんならもっと詳しくわかるかもしれないけど」
加護板に浮かび上がる未知の文字のなかで、【HP】と【MP】はアルファベットで記載されていたのだ。
「それじゃあ【冒険者】とか【魔術士】のところに書かれてるのも神代文字?」
ほかにも、いくつかアルファベットが見て取れた。
「そうね。これはランクを表すものよ」
「なるほど、神代文字ねぇ……」
また新しい謎が生まれてしまったが、それについてここで答えを出すのはいったん諦めることにした。
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