第76話 状態異常完全耐性
「ぐおおおおおおぉぉぉぉ!!」
暗闇の中、ヴラドの苦しむ雄叫びが響き渡る。
今の奴は本来の姿。
老人の姿に戻り、その全身から煙のを上げ藻掻き苦しんでいる。
「貴様!貴様一体私に何をしたぁ!!」
ヴラドが俺に吠える。
顔を押さえる手から覗く目は、憎しみに澱んでいた。
「融合しただけだ。但し、今の俺には彩音の力が宿ってるけどな」
「彩堂……彩音の力だと…ぅぅ……」
そう、俺が彩音から受け継いだ力だ。
状態異常完全耐性。
全ての状態異常を無効化するスキル。
リンの体を眷属に変え、それを乗っ取ったヴラド。
それは外部から侵入してきた、いわば呪いの様な物。
俺はそう考え、リンと融合したのだ。
そしてその予想は見事に的中する。
「彩音の状態異常完全耐性は、呪いをも無効化する。お前は彩音の力で消えるんだよ」
邪悪には通用しなかったこのスキルだが。
ヴラド程度に、これを突破する力はないだろう。
「あの女……あの女がぁぁあぁぁぁぁ!!!」
ヴラドは最後の力を振り絞り俺に襲い掛かろうとするが、伸ばした手が砕け散り塵となる。
やがて奴の全身に亀裂が走り、灰となって消えていった。
残ったのは、奴の中から現れたリンだけ。
だがその体はボロボロで、今にも崩れ去ってしまいそうだ。
「たかしさん……私……」
俺は彼女をゆっくりと引き寄せ、強く抱きしめた。
そして自らの命のを彼女へと注ぎ込む。
「たかしさん!?」
リンが驚いた様に顔を上げる。
「いっただろ、絶対助けるって」
リンの命は消えかかっていた。
いや、正確にはもうとっくの昔に終わっていたのだ。
ヴラドの呪いで無理やり維持していたに過ぎない。
そしてヴラドが消滅した今、リンもまた消滅する運命にあった。
「止めてください!そんな事をしたらたかしさんが!」
俺の体は消滅しかっている。
だからヴラドに腹を貫かれても痛みを感じなかった。
要は人形へと戻りかかっているという事だ。
所詮は元人形。
大きすぎる力を得た反動に喰らい過ぎたダメージ。
俺の肉体は限界を迎えていた。
だがまだ命の炎は残っている。
これを使えば、リンの命を繋ぎ止める事が出来る筈だ。
どうせ消える命、有効活用するさ。
「気にするなリン。どうせ俺は長くない。それなら、お前の為に俺は命を使いたい。受け取ってくれ」
「そんな……たかしさん……私……」
「リン、今までありがとう」
思えば、出会ってからずっとリンとは一緒だった。
リンがいてくれたから――
お馬鹿で、天真爛漫な彼女がいつでも傍にいてくれたから――
俺はここまで来れた気がする。
「生きろよ――」
彩音のパクリみたいで嫌だが。
彼女には生きて幸せになって欲しい。
これが今の俺の正直な気持ちだ。
「たかしさん!!」
抱きしめていたリンの体がすり抜ける。
いや、すり抜けているのは俺の方か。
俺の
やがて全ての感覚は消え去り、俺は本来の
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